2シリーズグランクーペのホットモデル「M235i xDrive」に対するは、8世代目という長い歴史を誇る”元祖ホットハッチ”のゴルフGTIである。最新Mモデルにはどんなアドバンテージがあるのか?
座った瞬間にスポーティな走りを予感させる
ご存じのとおり、BMWの2シリーズにはFRベースのクーペと、FFベースのアクティブツアラー、グランツアラー、そして今回試乗するグランクーペがある。アーチ状のルーフが実にエレガントなこのクルマはいわゆる4ドアクーペであり、BMWのなかでは最もコンパクトなグランクーペという位置づけだ。そのトップグレードであるM235i xDriveは306psを誇るパワフルな2L直4ターボを手に入れたMパフォーマンスモデルで、モデル名からもわかるとおり、FFベースの4WDという成り立ちだ。
対するは、FFコンパクトスポーツの定番であるゴルフGTI。8代目に進化した最新モデルでは、245psを発揮する2L直4ターボを搭載し、さらに旧型の一部グレードに採用されていた電子制御油圧式フロントディファレンシャルロックを標準装着することで、ハンドリングマシンとしての性格を強めている。
まずはM235iへ。ヘッドレスト一体型のMスポーツシートはタイトな印象で、座った瞬間にスポーティな走りを予感させてくれる。そして、M235iはその期待を裏切らなかった。1750rpmから最大トルクを発揮する2Lターボは発進から力強く、アクセルペダルを踏み込めば2500rpmあたりから活発さを増し、約1.6トンのボディを軽々と加速させる。さらに右足に力を込めると、4000rpm手前で勢いづき、勇ましいサウンドを響かせながら、6500rpmのレブリミットまで一気に吹け上がる。
エンジンの気持ちよさとともに感銘を受けるのがそのハンドリング。ステアリングを切ると即座に向きを変える回頭性の良さはFFベースのクルマであることを忘れさせるほどだ。コーナーの途中でアクセルペダルを踏み込んでいっても、アンダーステアが顔を出す気配は一向になく、狙いどおりのラインをトレースできる。それでいて、十分に普段使いに足りる快適さがうれしい。
M235iから乗り換えると、ゴルフGTIは明らかに分が悪い。低中回転域では活発な2Lエンジンも、高回転ではここ一発のパンチが足りず物足りないし、自慢の軽快なハンドリングも、M235iの優れた回頭性の前では霞んでしまう。コーナリング中にアクセルペダルを踏めば、件のフロントディファレンシャルロックのおかげでインに切れ込んでいくが、M235iの前ではその人工的な味付けが鼻につくほどだ。
これがゴルフGTIではなくゴルフRだったら……という想像はさておき、パワーも走りもライバルを大きく上回るM235iは、コンパクトスポーツの勢力図を書き換える実力の持ち主といえる。
【Specification】フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
■全長×全幅×全高=4295×1790×1465mm
■ホイールベース=2620mm
■車両重量=1430kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1984㏄
■最高出力=245ps(180kW)/5000-6500rpm
■最大トルク=370Nm(37.7kg-m)/1600-4300rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:4リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/40R18:225/40R18
■車両本体価格(税込)=4,660,000円
【Specification】BMW M235i xDriveグランクーペ
■全長×全幅×全高=4540×1800×1430mm
■ホイールベース=2670mm
■車両重量=1590kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=306ps(225kW)/5000rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1750-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/40R18:225/40R18