ボルボが日本国内で販売する初の電気自動車となるC40リチャージ。クーペとSUVが融合したスタイリッシュなクロスオーバーデザインや、完全なレザーフリーインテリア、リサイクル素材の積極的な採用など、次世代のボルボを象徴するモデルに仕上がっている。
ボルボ初のピュア・エレクトリック・クロスオーバー
2021年3月、ボルボは2030年までにすべてのボルボ車をEVにすると宣言した。それを訝しむ声もあるようだが、グローバルでの状況を鑑みれば当然の決断といえるだろう。その理由にはまずテスラの台頭が挙げられる。2003年に創業したばかりの電動車専業メーカーの2021年の世界販売台数は約93万台で、今年は100万台超が予想される。一方でボルボは約70万台。すでに追い越されているのだ。経営判断として早期の選択と集中が求められたことは想像に難くない。
そして北欧の化石燃料に頼らない電源構成もある。例えばスウェーデンは9割以上を原子力と水力や風力発電でまかなっており、今後は自然エネルギーの割合を拡大し、最終的には原子力の代替とする施策を推し進めている。またノルウェーでは9割以上を水力発電が占めている。政府のEV優遇政策もあって、新車販売における電動車の割合はPHEVなども含めるといまや9割を超えるという。
というわけで、ボルボ初のピュアEV誕生である。正確にはXC40ベースが第1弾となるが、日本へは新しさを打ち出すためにC40リチャージが先に導入された。
今回の試乗車は、バッテリー容量78kWhで、フロントとリアアクスルそれぞれに計2基のモーターを搭載。最高出力408psで最大トルクは660Nm、一充電走行可能距離は485kmの「ツイン」というモデルだった。ちなみに3月にシングルモーターでフロント駆動のエントリーグレード「プラスシングルモーター」が追加されており、それを機にツインモーター仕様は「アルティメットツインモーター」へと名称変更された。
エクステリアでは、グリルレスのフロントマスクが電気自動車であることを主張する。いわゆるクーペSUVのシルエットで、ルーフとテールゲートの2箇所にスポイラーが備わっており、これで航続距離が最大4%のびるという。
インテリアのデザインは基本的にはXC40をベースとしたもの。ただし、大きな違いがあって、それは本革を使用しない最初のボルボ車になるという。まるで本革に見える手縫いのステアリングにも合成素材を用いている。実際に手で握ってみても言われなければそうとは気づかない。その他、リサイクル素材なども使用されており、またスウェーデンのアビスコ国立公園の山々の地形図にインスパイアされた加飾パネルを用いるなど、しっかりとスカンジナビアンデザインが取り込まれている。
スタート/ストップボタンはない。ドライバーがキーをもっていれば、ドアを開け、運転席に座り、ブレーキを踏んでギアをシフトすれば走りだす。停止して、パーキングに入れてクルマを離れればシステムは自動的にシャットダウン。内燃エンジンに慣れた身としては、儀式的な火入れの動作がなくなることに一抹の寂しさを感じなくもないけれど、すぐに馴染んだ。使い込めば便利なルーティンになること間違いない。
足元には電動車用タイヤ、ピレリPゼロエレクトを装着していたが、20インチサイズをしっかりと履きこなしており、乗り心地もフラットなもの。ボルボ車としては異例の前後異サイズを採用し、前後重量バランス50:50ということもあってハンドリングもいい。回生ブレーキはワンペダルのオンオフ切り替えが可能。市街地ではオンにしておいたほうが走りやすい。アクセルペダルに力を込めると、加速力に驚いた。競合はメルセデスのEQAやアウディQ4、レクサスUXなどが想定されるが、他を圧倒するのはその速さ。0→100km/h加速4.7秒は、実にフェラーリF40と同タイム(CG誌データ)というから、さもありなん。こちらのフォーティも侮れない。
【Specification】ボルボ C40リチャージ・アルティメイトツインモーター
■全長×全幅×全高=4440×1875×1595mm
■ホイールベース=2700mm
■トレッド(F:R)=1600/1610mm
■車両重量=2160kg
■バッテリー容量=78kWh
■最高出力=408ps(300kW)/4350-13900rpm
■最大トルク=660Nm(67.3kg-m)/0-4350rpm
■最大航続距離=485km(WLTC)
■トランスミッション=1速固定式
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=ディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F&R)=235/45R20
■車両本体価格(税込)=6,990,000円
■問い合わせ=ボルボ・カー・ジャパン ☎0120-55-8500