時代を先取りした小型FFセダン
スバル360で四輪自動車の市販化に成功した富士重工(当時)が、次に小型乗用車市場への参入を果たしたのがスバル1000である。その前史としては、1954年に完成を見た試作車P-1(スバル1500)があった。これは駆動方式やサスペンションの機構的には当時の常識的な内容にとどまっていたが、フルモノコック・ボディを実現していた点に先進性を有していた。
さらにこの後も小型乗用車の開発は続いたが、トランスアクスル式FRのA-4(ポンティアック・テンペストと同様に、プロペラシャフトを下方へたわませたものだったという)などの試作車を経て、開発陣の興味はFF方式へと移っていったようだ。もちろんそれは“新しもの好き”というような意味ではなく、スペース効率の点で、これからの主流はFFになる、という確信に基づいたものであっただろう。2つの試作車を経て、ついにそれが実を結び市販化が実現したのが、1966年に発売となったスバル1000であった。
スバル1000にはFF方式だけでなく、水平対向エンジン、インボード式フロントブレーキなど、数々の技術的な特徴がみられたが、そのいずれもが技術者の自己満足ではなく、前述の通りのスペース効率や、安全性・快適性の向上に不可欠なものだった。また、当時はFF車には不快な振動(ユニバーサル・ジョイントの不等速性がその原因)がつきものとされ、その克服は困難と思われていたのだが、スバル1000ではダブル・オフセット・ジョイント(東洋ベアリングとの共同開発)という新技術の導入で見事これを解決。以後、世界中のFF車がこぞってこのジョイントを採用したという。
さらに、水平対向エンジンを搭載したFF車という同様の特徴を持つアルファロメオのアルフェッタでは、その開発にあたってスバル1000を参考にしたとされるなど、その完成度の高さを示す逸話は少なくない。1969年には排気量を100ccアップして車名をff-1へと変更、翌’70年にはさらに1300ccへとエンジンを拡大しff-1 1300Gとなり、合計6年の長きに渡り販売されたのである。
ここでご覧頂いているのは、このスバル1000の4ドア・セダン、スーパーデラックスを再現した1/24スケールの模型だが、その自然な仕上がりから想像されるように、「よく出来たプラモデルをそのまま制作したもの」という訳では、実はない。ベースにしているのはいにしえのヤマダ製プラモデルであるが、これは2ドアで、しかもグレードはスポーツセダンである。細部の造形も、当時なりのものでしかない。この作品はそのヤマダ製キットをベースに、レジンで複製したうえで様々な改修を施して作り上げたものなのである。
ヤマダの名作キットをベースに大改修!
まず、ヤマダ製キットをご紹介しておこう。前述の通り2ドアのスポーツセダンで、ボディの基本プロポーションは非常に良い。レジンで複製したボディをもとに制作を進めるが、2ドアも4ドアもボディの輪郭は同じである。窓枠はレインモールも含めまるごと作り直すので、実車写真とよく見比べながらサイドウィンドウ開口部を削り拡げた。ここにハマるよう、透明プラ板の上にプラ棒を貼って窓枠を作り、接着したら透明プラ板部分は切り抜く。
ドアラインを筋彫りし、サイドモールやドアノブもプラ材で追加。ホイールアーチは形を直した上でリップ部分をプラ材で作り直した。フロントはヤマダの常でアゴの薄い造形となっているので、パネルをホットナイフで切除し、プラ帯を貼り渡して新造。単純な平面ではなく、張りのある形に削り出した。ボンネットのヘッドライトの切り欠きは瞬間接着剤+硬化剤で埋めたうえで削り直し、フロントパネルの開口部も切り開ける。グリルはプラ棒で自作、コーナーのウィンカーはプラ材から削り出したものを透明レジンで複製した。
インテリアは全てプラ材から自作している。フロントシートはフジミ製ポルシェ356のパーツを芯に利用、シートパターンは筋彫りではなく、プラ帯を敷き詰めることで再現している。単純な形であればこの方がきれいに仕上がりそうだ。リアシート後ろのパッケージトレイも、スバル1000らしく深い形に自作した。
こうして出来上がったスバル1000、実に素晴らしい出来であるが、日本車の歴史に残る名車であることを思えば、新規キット化されてほしいと思う気持ちも込み上がってくるというものである。
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