リアルスポーツ的Iペイス、驚きに満ちたモデルX
イギリス車で、いち早くBEVを投入したのはジャガーだ。2018年、既存モデルのPHEV化をスキップしてゼロスタートで開発したIペイスをいきなり投入してきたのだ。
プラットフォームはBEV専用であり、ボディは94%をアルミニウム製とすることで軽量化を実現している。さらに、パッケージングの自由度が高いBEVの特長が最大限に発揮できる。ボディ全長は4695mmとコンパクトながら、ホイールベースが2990mmと極めて長いのだ。
そのため、後席の足下スペースはDセグメントとしても広い。しかも、ホイールベースが長く全幅も1895mmと広いので床下に大容量バッテリーの搭載スペースが確保できる。その結果、航続距離は最大で438kmに到達する。
なおかつ、バッテリー搭載位置により低重心化が実現でき前後重量配分が50:50となる。つまり、走りの基本性能がポテンシャルとして生まれながらに高いわけだ。そればかりかボディ剛性はジャガーのラインナップで最も高く、体感としてもドイツ車よりもドイツ車的なガッシリ感がある。
したがって、リアルスポーツのようにダイレクトな操縦性が楽しめる。素早いステアリング操作に対してもズバッと向きが変わり、切り増せばその通りにグイグイ曲がる。コーナリング中のロール感はゼロレベルであり、それでいてサスペンションが突っ張っているかのような印象がない。
前後に積むモーターは、計696Nmを発揮する。そのため、アクセルを踏み込んだときは性能を持て余さないギリギリの範囲まで瞬発力を鋭くしている。最高出力は計400psに達し、パワフルな加速の伸びが持続する。走行モードがダイナミックなら、アクティブサウンドデザインによりエンジンでは実現できない未来感がある快音が重なってくる。
アメリカ車では、2010年からテスラが日本市場を開拓してきた。現在は、モデルS、X、3、Yをラインナップ。SUV的なフォルムを備えるXは、Sとともに2021年2月にアップデートを発表。ただ、まだ未上陸なので今回は現行型に試乗した。モデルXは、BEVというよりもクルマとしての驚きに満ちている。リアにファルコンウイングと呼ぶ跳ね上げ式ドアを採用し、インテリアはセンターに配置された17インチの超巨大モニターが目につく。大人が乗車可能な3列目シートも用意されている。
もちろん、BEVとしても衝撃的だ。試乗車のロングレンジは、前後に積むモーターで最大トルク計660Nmを発揮。アクセルを踏み込むと一気にフル加速体制に入り、2533kgに達する車重を力任せに押し進める。走行モードがコンフォートなら瞬発力が抑制されるが、それでも際限なく溢れ出すような力強さを実感できる。
航続距離は、最大で507kmと長い。しかも、テスラは専用の急速充電器のスーパーチャージャーを全国26カ所に設置。最新の設備は250kWと公共設備の5倍に値する高出力なので、まさに実用性が高い急速充電が可能となる。
ジャガーは、2025年以降にBEVだけを扱うプレミアムブランドになることを発表。今後も、ドイツ車を含めBEVの新モデル投入攻勢が続く。それだけに、日本市場では大出力の公共急速充電設備の導入が急務となる。さもないと、SUVだからこそ必然となるべき現実的なロングランが不可能になってしまうからだ。
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