最新の「ID.3」で解説? アンチEV派に向けたフォルクスワーゲンの言い分

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バッテリー残量が10%になっても最大で77kmの航続が可能

フォルクスワーゲンはこのほど、新型コンパクトEVである「ID.3」の特徴を、6つのシチュエーションに分けて紹介している。これはID.3、ひいてはピュアEVの購入に踏み切れない人の背中を押すためのものとも言えそうだが、果たして説得力はいかに……。

ケース1:都市部のラッシュアワー。バッテリーが残り10%

まずは都市部での渋滞時に、バッテリー残量が10%になってしまったケース。こんな場面でも心配は必要ないと同社は言う。ID.3に搭載されるバッテリーの最大容量は77kWhで、渋滞時の車速20〜30km/hでの電力消費量は約10kWh/100km(WLTPサイクル)。つまり77kWhのバッテリーを搭載したID.3なら最大で770kmの航続が可能で、バッテリー残量が10%になってもあと77km走れることになる。

仮に目的地までバッテリーが持たないと思われる場合は、エアコンやラジオの設定を変更することで、航続距離をできるだけ伸ばすことができる。ID.3のバッテリー管理システムは、充電レベルが5%を下回ると「タートルモード」に切り替わり、モーターを駆動する以外に用いる電気エネルギーを極力使わない。

一方で、充電ステーションの増加も進んでいる。ハンブルク、ベルリン、ミュンヘンなどの都市にはすでに1000を超える充電ステーションが設置されている。今後は最大300kWの電力を備えた高電力充電ステーションを含めて、約750カ所の新設が予定されており、2021年末までには合計で約2000カ所の充電ステーションが新たに稼働する見込み。これは現状より50%以上増えることになる。

ケース2:EVは楽しい乗り物。決して遅くはない

ID.3の上級グレード「Pro S」には、204ps/310Nmを発揮するモーターを搭載。最新のバッテリーとのコンビネーションにより、最適な性能が与えられており、EVでもファンな走りを実現するとともに、決して遅いクルマではないと同社はアピールする。

気温15度のなか、車速130km/hで30分巡航した場合の電力消費量は約14kWhにのぼるが、これは4つ星ランクの1.6Lガソリンエンジン車の燃費に相当するという。ID.3 Pro Sの最大航続距離は549km(WLTPサイクル)で、スポーティなドライビングスタイルでも長距離を効率的に走行すると同社はアピールしている。

ID.3には容量の異なる3種類のバッテリーを選べるが、ミッドレンジとなる58kWhバッテリーでもWLTPサイクルで420km、エコモードなら531km走行できることが同社の実験で立証されている。これはCd値0.267という空気抵抗の低さが実現したことだ。

ケース3:家族や仲間とバカンスに使う

4ドア5人乗りのID.3なら、ファミリーや仲間とともにバカンスに使うことも想定できる。乗車人数や積載荷物が増えれば総重量が増し、電費には不利となるが、ID.3 Pro Sの場合、ドライバーと荷物の75kg以外に412kgの負荷に対応可能。総重量は2260kgになるが、それでも77kWhバッテリーを搭載していれば450kmの航続が可能だ。

総重量の増加は一方で、惰性走行の距離を伸ばすメリットがある。ID.3ではアクセルから足を離した状態での走行を「セーリング」というが、シフトが「D」に入っている状態で可能になる。「セーリング」状態ではエコアシスト機能が作動し、現在の運転状況や走行している道路の制限速度も考慮しつつバッテリーへの再充電を自動的に行なう。

ケース4:急勾配のある山へのドライブ

ID.3は様々な気象条件や路面状況にも対応する。山へのドライブでは15%以上の勾配は珍しくない。標高が上がるほど空気が薄くなっていくが、内燃エンジンではないのでその影響もない。

登りでは平坦な道より多くの電気エネルギーを消費するものの、下り坂でシフトを「B」(回復モード)にし、アクセルペダルから足を離せば最大で4分の3の運動エネルギーを回収できる。これは電費(燃費)の面で、内燃エンジン車より明確に有利な点だ。

仮に電費のよくない走り方をしても、ヨーロッパでは簡単に充電ステーションを見つけられる。フォルクスワーゲンは合弁会社「INONITY」に出資しており、現在120kmごとに高出力充電ステーションを建設している。

ケース5:夏の猛暑のなか週末ドライブ

猛暑のなかビーチへドライブするときは、空調が重要だ。冷房にはさぞ電力消費量が増えると思われがちだが、実際は冬季の暖房より少ないエネルギーで済む。例えば外気温30度のなか、平均車速20km/hでビーチまで走行する際に、車内を快適に保つ温度設定でエアコンを効かせた場合の電力消費量は1kWに満たない。ちなみに2019年のドイツの夏の平均気温は19.7度だったから、エアコンはOFFのままか、点けても温度設定を低くする必要はほとんどないといえる。

ビーチでひとしきり楽しんだ後は、0-100km/h加速で7.9秒をマークする加速性能を利用して速やかに家路につける。それまで浴びていた日光で車内温度が上昇しているので、ウインドーを全開にして熱気を追い払ったら、ウインドウを閉めて適切な温度でエアコンをON。高速道路では120km/h巡航が効率的に最適だ。

ケース6:暗く凍てつく寒さのなかでも車内は快適

外気温が氷点下を10度下回り、あたり一面が雪で覆われているウインターシーズンのドライブ。このような凍結した状況ではパフォーマンスに影響がある。極端な寒さでバッテリーの性能が低下するため、エンジン車と同様に車内を快適にするためには時間がかかるが、ID.3にはバッテリーヒーターが内蔵されているため、この時間を最小限にしてくれる。

外気温マイナス10度のときに、車内を快適な温度にするために必要な電力は約3kW。高電圧PTCユニットはバッテリーからの電気エネルギーを熱エネルギーに変換し、オプションのヒートポンプと組み合わせればさらに効果的に車内を温めることができる。バッテリーからの1kWの電気エネルギーは、2.0kWの熱エネルギーに変換することが可能だ。

マイナス10度のなかでドライブする場合は、さらに凍ったウインドーを溶かすためのデフロスターや、周囲が暗ければヘッドライト、後席に乗員がいればリヤヒーターも作動させる必要がある。ID.3の空調システムは空気循環制御機能によって、必要に応じて暖かい空気の割合を調整することで暖房エネルギーを節約するとともに、視界をクリアに保つ。車内が快適に感じられる温度に達したら、シートヒーターやステアリングヒーターをOFFにすれば、より多くのエネルギーを節約できる。

ID.3にはLEDヘッドライトが装備されている。このLEDライトはハロゲンヘッドライトより73%少ないエネルギーで済み、オプション設定されている最新のマトリクスLEDヘッドライトなら44%少ないエネルギーで前方を効率的に照らし、完璧な視界を提供する。

これら6つのケースで同社が主張するように、ID.3なら充分快適で楽しいカーライフが送れそうだが、いかがだろうか。

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