新開発のプラットフォームなど一から開発できたのは利点
2020年7月15日、日産のピュアEV第2弾であり、同社初のクロスオーバーEVとして発表された「アリア」。スタイリッシュなエクステリアデザインにシックなインテリア、そしてパワフルな動力性能を発揮するモーターに600kmを超える航続距離など、日産の先進技術のすべてが注ぎ込まれた自信作だ。そんなアリアの魅力を、開発責任者の中嶋 光氏に聞いた。
――現在EVでは、日産のリーフをはじめ他社からも続々とリリースされています。そんな中でアリアだけが持ち合わせている価値とはどんなものがあるのでしょう?
【中島】まずリーフに関しては既存のプラットフォームを利用してEV化しましたが、アリアでは専用の新型プラットフォームを開発しています。このメリットはEVとして理想的なレイアウトを実現できるということ。例えばバッテリーは薄型にして床下に配置することで、フロアを平坦にして広い居住空間を提供できました。またコンパクトなモーターを開発できたことで、空いたスペースにエアコンのシステムを搭載しています。これら優れたパッケージにより、欧州Cセグメントのボディサイズながら、2775mmという長いホイールベースもあり、室内空間はDセグメントレベルを実現しています。これらはアリアを一から新規に開発したことの最大のメリットであり、価値だと思います。
――最近SUVタイプのEVはかなり大きいサイズが多いですが、それと比較するとアリアは小さめですね。このサイズ感はどのように決定したのでしょうか?
【中島】もともとはリーフの上のクラスを考えていたのですが、そのマーケットではSUVが売れています。そこで単純にCセグメントのSUVを狙ったということですね。他社は確かにサイズが大きいですがそこは気にせず、あくまで我々のEVのラインアップとして考えました。
――開発に関してもっとも苦労した点は何でしょう?
【中島】苦労した点はいろいろとあるのですが、一番は衝突安全性ですね。フロントボンネット部分が小さくなり、クリアランスを確保するのが難しかったもので。もちろん車重もありますから。しかし何とか克服することができました。
――今回のアリアはリーフの発売から実に10年かかったわけですが、これだけ時間がかかった理由は何でしょうか?
【中島】我々のスケジュールでは、まずはリーフを熟成し2代目へと進化させるのが先決でした。アリアは5年前に開発がスタートしてますが、プラットフォームも新たに作らなければならなかった。やはり新しいモデルを開発するのにはそのくらい時間が必要なんです。
走りも存分に楽しめる4WDシステムに仕上げた
――アリアには「e-4ORCE」と呼ばれる2モーターの4WDシステムが搭載されているグレードもあります。こちらの制御について詳しく教えてもらえますか。
【中島】e-4ORCEモデルでは前後にモーターを搭載してまして、エンジンのクルマと違っていずれも独立制御が可能です。モーターの場合は反応速度が速いのが特徴のひとつで、瞬時に前後のトルク配分を変更できるのが最大のメリットですね。アリアはハンドリング性能の高さも売りですが、例えばワインディングを走る際も、コーナー進入時にはリア内側のブレーキをちょっと掛け、ヨーレイトをうまく発生させます。その後アペックス付近では4WDにより車体を安定させニュートラルステアに、脱出では大トルクを活かして力強い加速、といった気持ちよいコーナリングが楽しめると思います。ただドリフトを楽しむというよりは、ライントレース性を高めた制御と言えますね。また、ブレーキング時にはリアの回生を強めにしてフロントダイブを抑制し姿勢を安定させる制御も入れています。これは2WD(FF)モデルでも同様です。
――開発中のブレークスルー的なものは何かあったのでしょうか?
【中島】リーフのお客様からの声で多かったのは、長距離移動時の急速充電の安定性でした。バッテリーは熱い状態でも冷えている状態でも充電効率が悪くなる傾向があります。そこで我々はヒートポンプシステムと同調し、バッテリーを常時30度に保つ温度調節機構を取り入れました。これにより急速充電時の充電量を安定することができましたし、航続距離も気温に左右されることなりましたね。このことはある意味大きなブレークスルーと言えるでしょう。また発売に備え、新たな充電インフラの整備を目指していまして、アリアの高いバッテリー性能に対応し、より短時間での充電を可能とする最大出力150kWのCHAdeMO急速充電器を、2021年度内に国内の公共性の高い場所に設置できるようパートナーとの調整を進めています。
プロパイロット2.0も進化を続けています
――日産といえば高速道路でのハンズフリーを実現したプロパイロット2.0が話題ですが、アリアでは北米でも導入するそうですね。それにはあの広大な土地の高精度地図情報が必要だと思うのですが、そのあたりの開発は進んでいるのでしょうか?
【中島】おっしゃるとおりプロパイロット2.0を機能させるには、地図情報を取得するために膨大な量の走行データが必要になってきます。そのテストに関してはこれから取り組むところでして、マッピング取りのためのフリート走行を行う予定です。欧州や中国はレギュレーションの問題で難しいのですが、北米は我々がきちんとしたデータを出せば許可が下りますので、実現するための道のりはそれほど遠くないのですが、新型コロナウイルスの問題でやや遅れているのが実情です。またアリアでは「みちびき」と呼ばれる準天頂衛星システムからもデータを取れるように専用のアンテナを追加しています。これは非常に精度が高いのが特徴でして、プラスマイナス10~50cmレベルで位置情報を確認できるんですね。国内の高速道路は多くても4車線程度ですが、北米のハイウェイは8車線のところもあったりとかなり多いので、グローバルに展開するとなるとやはりそういったシステムが必要となってきます。プロパイロット2.0もさらに進化しているんです。
――新開発のモーターですが、最上級モデルは最高出力が290kW、最大トルクは600Nmと相当パワフルですね。このあたりのスペックはどのように決定したのでしょうか?
【中島】モーターは4WDモデルに関しては生産性向上のために前後同一のものを搭載しています。パフォーマンス的に最上級モデルは0→100km/h加速5秒を目指したのですが、結果的に5.1秒とややオーバーしてしまいました(笑)。しかし実は0→60mph加速5秒切りも目指しておりまして、こちらは達成しています。
――重量に関しては同じく最上級モデルは2.2トンとかなり重いですが……。
【中島】これはやはりバッテリーが400~600kgとかなりの重量を占めているんですね。今後バッテリーの進化で軽くなるのと、寿命が延びることに期待しています。
――発売は1年後ということでしたが、今後も開発が進んでいくことを考えると導入が楽しみですね。本日はありがとうございました。
【中島】皆さまには少しお待たせすることとなりますが、是非楽しみに待っていていただきたいです。ありがとうございました。
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