見る者にひと目でそのクルマだと認識させるエンブレムとフロントグリルは、自動車にとって必要不可欠なアイデンティティとなっている。ともに100年以上の歴史を誇る老舗ブランドであるメルセデス・ベンツとBMWは、往時に確立したエンブレムに込めた社是を保ち続けながら、時代の変化に即した個性的なフロントグリルを採用してきた。
フロントマスクを見るとデザイン哲学を知れる
BMWがブランドのデジタル化を進める中で発表した新しいコミュニケーション・ロゴが話題だ。
BMW/ミュンヘンに本社を置くBMWの歴史は1917年にスタート。当初、ドイツ空軍向け航空機用エンジンの製造と保守を手がけていたが、その後、モーターサイクルの生産も開始した。
フラットデザイン化され、2D仕様となった新ロゴは日本の公式サイト等でもすでに使用されている。この新ロゴの登場に伴い、旧来からのBMWロゴ (エンブレム)は、プロペラが由来といわれていたが、ここに来て、あれは図案化されたプロペラではなく、BMWの前身となったラップ発動機製作所が用いていたロゴの円形デザインを引き継ぎ、内側の四分円はバイエルン州を象徴する白と青であるという説がBMWから公式にアナウンスされている。
1917/この年の10月から使用され始めた最初のロゴ。前身であるラップ社のロゴを受け継ぎ、ブラックの外周円に社名が入るデザインを採用。
1933/ブラックの外周円を縁取っている2本のゴールドラインが太くなった。白と青は、BMWの故郷であるドイツ・バイエルン州の色である。
1933/BMW303/当時、グリルは一枚モノが一般的だったが、BMW初のオリジナル4輪車としてリリースされたBMW303で2分割のキドニーグリルが登場。
1936/BMW 328/左右に2つ並んだフロントグリルが腎臓(キドニー)に見えることからキドニーグリルと呼ばれるようになった。328では縦長に。
1953/往時の商標法では州や君主の紋章を民間企業が使用できなかったので、BMWのロゴは紋章ルールとは逆順で白と青を配置していた。
1955/BMW 507/303のデビュー以降、基本的に縦長のデザインで推移していたキドニーグリルだが、スポーツカーの507では横長のデザインを採用。
1961/BMW 1500/世界のミドルクラス・サルーンの手本となるほど完成度が高かった1500系には、小さく、縦長のキドニーグリルが付いていた。
1963/ブラックの外周円を縁取る2本のラインとBMWの文字色が白に変更されてから10年が経過し、ホワイトのラインがより存在感を増した。
1979/BMW M1/ジウジアーロがデザインしたスーパースポーツカー、 M1のキドニーグリルは、バンパーの意匠のひとつであるかのような小さなもの。
1997/BMWの文字色とブラックの外周円を縁取る2本のラインがホワイトからシルバーとなり、立体的な3Dデザインロゴになった。
2013/BMW i3/次世代モビリティを提案するBMW iブランドからリリースされている電気で走るクルマのキドニーグリルは、あくまでもデザインだ。
2020/オンラインでもオフラインでも柔軟に対応することを目的として新しいコミュニケーション・ロゴはシンプルな2Dに変更された。
2020/BMW 4シリーズクーペ/新しい4シリーズのクーペは、クラシックモデルの輝かしい伝統を取り入れ、縦長で、大型化したキドニーグリルを再び採用した。