今なお第一級のS3、ドンデン返しのゴルフR
マイナーチェンジを経て290ps/380Nmのテコ入れを受けたとはいえ、今から6年以上も前に登場したS3が最新コンパクト4WDに太刀打ちできるのか?
それができてしまうのだからアウディは恐ろしい。Cセグとは思えないボディの重厚感と、これを土台とした限りなくスムーズな足回りの連携。忘れないうちに言っておきたいのは、マグネティックライドダンパーは必須だということだが、ともあれアウディS3スポーツバックは、そこに古さなどまったく感じさせない名機である。
一世代前のボディだけにそのホイールベースはライバルに対して2630mmと短く、商品性としては居住性の点でハンディを負うものの、走りではこれこそが回頭性の良さにつながっている。ややオーバーステア気味なはずの旋回性を安定させているのは前述した長足とクワトロ4WDのイニシャルトルクによる接地性で、小回りを効かせたあとにズバッと加速体勢に入ることができてしまう。
2L TSFIはトルク感こそ前出のライバル達に一歩譲るものの、透明感のある吹け上がりは絶品。7段Sトロニックの切れ味の良さはトルコン勢の比ではなく、パワーユニット全体で精緻な回転上昇感を演出して行く。
A35と同じく、速さを突き詰めねばらないRS3よりも、S3の方がよりアウディらしくて魅力的だとボクは思う。しなやかな乗り味と精密機械のように回るエンジンをもって、どこまでクールに走りきる。S3は今なお、第一級のハイパフォーマンスカーである。相手がジャーマンスリーである上に、ひとつは同じVWグループの高級グレード。この中にあってゴルフRが見劣りするのは致し方ないことだと半ば諦めながらステアリングを握ったのだが、それは大きな間違いだった。むしろゴルフRはこの大雨の中で、一番前のめりに運転できる1台だ。
一体感が、抜群なのだ。足回りにはS3のような磁性流体ダンパーを用いているわけではない。しかし油圧制御式の可変ダンパーは、スポーツモードに入れると路面をグッとつかむ。S3よりもストローク量が少ないのかコーナーでの安定感は高く、しかし乗り心地はA35よりもしなやかだ。
2LのTSIユニットは4車の中で最もハイパワーな310psを誇る。そのトーンは同族のS3よりもやや低めで、サウンドもゴロゴロと荒削りだが、低中速域での力強さは抜群で、これが高回転までスカッと伸びて行く。
このパワーを受け止めるボディに剛性の余裕は感じない。しかし足りないとも感じないからまさに現時点がジャストな領域なのだろう。車体の動きが軽く、伸びやかな足回りの動きを利用して積極的に向きを変えて行くのが抜群に楽しい。S3のドライビングがクールなら、こちらは完璧にホットだ。
ここまでの走りを見せつけられると、やっぱりVWには“本物のゴルフ”を出して欲しくなる。もっとニュートラルステアを突き詰め、ターンインでの自由度を増やし、4WDのトラクションでこれを安定させられるようになれば、絶対に最高のホットハッチが出来上がる。それができるのに、やらないのはずるい。
最後の最後でゴルフRには、Cセグ王者の貫禄を見せつけられた。M135iにはクルマを乗りこなす喜びがある一方で、ゴルフRには運転そのものに没頭できる魅力がある。A35はその感覚に最も近いが、ゴルフRはさらに軽やかだ。
こんな結末になるとは思いもしなかったけれど、もしボクがこの中で一台を選ぶなら、間違いなくゴルフRを選ぶだろう。
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