「S」の称号に偽りはなし!
デザインの変更は派手なものではないが、ブレーキキャリパーや室内のステッチなど各部にオレンジ色が取り入れられて、アクセントを添えている。また、ルーフには2kg弱の軽量化を可能とするカーボン製が設定された。
まず一般道では、明らかに力強さが増しているのを実感した。320Nmの最大トルクはA110と変わらないが、それを2000-6400rpmという実に幅広い回転域で発生するおかげだ。レスポンス、特に低中回転域でのアクセル操作に対するツキが明らかに良くなり、 軽快に走ってくれる。
乗り心地は確かに少し引き締まった感触だが、アルピーヌらしいタッチはちゃんと継承されている。ただし、フックス製鍛造ホイールを履いた仕様は突き上げがやや鋭角に過ぎるのが気になった。開発メンバーに聞くと、我々が乗ったのはたまたまサーキットで酷使された個体で、本来そんなことはないはずとのことだったが……。
そのサーキットでの走りは、さすがの仕上がりだった。ピュア/リネージよりも姿勢変化が抑えられ、姿勢は常にフラット。そしてリアの安定性が格段に高く、高速コーナーで安心して踏んで行ける。
もっとも、単に安定しきっているわけではない。ターンインから積極的に姿勢を作っていけば、これぞニュートラルステアという気持ち良い姿勢で飛び込んでいける。さすがに自分ですぐにそれは出来なかったが、お馴染みテスターのロラン・ウルゴン氏は、エストリル全コーナーでドリフトしていたほどだ。そう、全コーナーで!
エンジンも快感。実用域のトルク感も増していたが、トップエンドの吹け上がりの鋭さ、パワーの伸びは明らかに上で、実に魅力的な仕上がりとなっていた。
まさにメーカーが主張する通り、ミニサーキットで遊ぶならピュアやリネージで何の不満もないが、国際格式コースなどで走りを突き詰めていきたいという人は、A110Sの方が合っていそうだ。個人的にも、シャシーはピュア/リネージでもいいとして、そのほぼ唯一の不満であるエンジンは断然こちらが刺激的というわけで、やはりA110S一択となりそうだ。
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