フェラーリの日常性は高い技術力の証である
ポルトフィーノは、フェラーリを日常にすることが、どんなことなのかを体現した一台だ。
リトラクタブルハードトップを備えるオープンスポーツカーとしてその剛性を補うべくスプリングレートはやや高めに設定されており、これがクローズドボディ状態だとクイックなステアリングの応答性を実現する。しかしその俊敏ささえもがフェラーリのイメージに相応しく、太いリアタイヤがもたらす横揺れ感や電子制御ディファレンシャルの安定感に、ドライバーはスポーティさを感じるのだ。
実際アクセルを踏み込んでもポルトフィーノは素晴らしい。低回転域ではサウンドこそ無骨だが、熱が入り回転が上昇するに従い全てが整って行く質感の高さには、フェラーリが組んだターボユニットの威厳が感じ取れる。思わずうっとりしていたら、アクセルを離した瞬間にパンッ! と一発マフラーが弾けた。バラバラと雑音をまき散らさない切れ味の良さは、ドイツ勢との違いを無言に物語る。
ハンドリングを存分に楽しんだあと、メタルトップを開け放つ。高い開放感はそれまでの緊張感を風と共に洗い流してくれる。ミッドシップである488よりも気を使わないアイポイントの高さ。クローズド状態よりも若干緩くなる操舵感は、可変ダンパーを緩めると見事に乗り味を調和させた。
刺激と優雅さを高次元でミックスさせた高貴な乗り味は、近代フェラーリの技術力そのものだ。ただこのポルトフィーノは、誰かと競い合うようなスポーツカーではない。ひたすらに自分と助手席の恋人のためだけにある一台である。
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