【国内試乗】「ホンダ・クラリティ・フューエルセル」先進技術をコンパクトに、燃料電池自動車クラストップの走行距離

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その大きさがイチバンの課題とされる燃料電池システムをコンパクト化することで、環境対応車ながらも洗練されたデザインと十分な居住空間を実現したFCVサルーン。新世代プラットフォームがもたらす走りは、グランドツアラーとしての資質も高い。

上質感すら醸し出す、グランドツアラーFCV

MIRAIより1年3カ月ほど後発だからか、クラリティ・フューエルセルはスペック的に少し優位だ。水素タンクの容量が大きいこともあって一充填走行距離は約750km。燃料電池スタックは小型化されて駆動ユニットと一体化され、エンジン車と同じようにボンネット下に収められるため、パッケージングの自由度が高くなり、5人乗りで室内空間やラゲッジスペースでもMIRAIを少し上回っているのだ。

水素タンクを積むための専用骨格に空力性能を追求したエクステリアを纏う。リアドア下のエアカーテンダクトは世界初となる。

モーターは130kW/300Nmで、MIRAIと比較するとパワー型。低速域でのドカンッとくる感じはやや薄いが、伸びやかな加速感が心地いい。長年に渡るFCV開発の中で、上質感を醸し出すべくあえてこういった特性にしているのだという。

嵩張る水素タンクを後席下とリアアクスル上に、リチウムイオン電池を前席下に格納し、燃料電池と電気モーターをユニット化してフロントに搭載することでシステムを小型化。

プラットフォームは世代が新しく、シャシー性能にも余裕がある。ボディ剛性の高さ、リア・マルチリンクのサスペンションなどポテンシャルが高く、高速域でもフラットにビシッと走っていく感覚がある。パワーステアリングのフィーリングも良く、微舵コントロールから大きな舵角のコーナリングまでインフォメーションが豊か。乗り心地はソフトタッチではないものの、ダンピングが効いてスッキリとしている。最近のホンダ車はシャシー性能が進化しているが、クラリティ・フューエルセルにもそれは表れている。パワートレインの上質さも含めグランドツアラーとしての資質も高い。航続距離の長さが自慢のモデルにピッタリの特性だ。
BEV(北米向け)とPHEVも用意する環境対応車で、ハードウエアの出来も上々だが、今ひとつ人気が出ないのが悩みどころ。FCVの個人向け販売など、新たな展開が望まれるところだ。

フォト=宮門秀行/H.Miyakado ル・ボラン2019年10月号より転載

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