E53シリーズは静粛性とパワーを両立する
E53 4MATIC+
E53は若きエグゼクティブにとって憧れの存在となる一台だ。C63のすごさは分かるが、同じ価格なら「E」に乗りたい。ひとつ上にはV8を搭載するE63/E63Sもあるが、さらに400万円以上のエクストラを払うのはトゥーマッチ。そんな、ハイエンドな中にもバランス感覚を持つユーザーが選ぶ一台だと思うのだ。
E53に育ちの良さを感じさせるのは、Sクラスで評価を得ている「M256型」直列6気筒ユニットの存在。電気モーターであるISGのアシストによって、エンジン始動すらわからないほど静かなスタートが可能となる。今回の試乗は全開率の多い峠道だったが、本来の主戦場である街中でこの電動化がもたらす静寂は大きな武器であり、Eクラスのカジュアルさに大人の質感を大きくプラスする。かつアクセルを微妙に踏み込めばモーターパワーとスーパーチャージャーの組み合わせが極めてスムーズに少し大柄なボディを加速させ、高回転領域まで踏み込めばいつの間にかターボへと過給をスイッチして、435psのパワーとストレート6の気持ち良い伸び感を味合わせてくれるのである。
これだけ素直なパワー特性でなら4マチックいらずでは? とも思えるが、そこはメルセデスの安全哲学が優先する。メルセデスAMGはこの安定性とエアサスの乗り心地を犠牲にせず、弱アンダーステアの回頭性を与えている。EクラスにしてSクラスの質感を得る。ここにE53のたまらない魅力があると思う。
ENGINE TYPE:M256
直6+ISGの新世代ユニット
COLUMN 02/MERCEDES-AMG E63S 4MATIC +
612psを誇るE63 Sの走りは?
E63 S 4マチック+は、AMG珠玉の4L V8ツインターボを612psにまで高め4マチックで武装、わがまま度全開の走りは「Eクラス番長」と呼ぶに相応しい。特に雨のサーキットではC63をも蹴散らす速さとFRライクな走りを見せつけた。ただし車重は2トンを超えるので、過信は禁物である。
信じられないことにS63カブリオレが最もピュアな回頭性を示す。
S63 4MATIC CABRIOLET
ハンドリングではC43、質感とのバランスではE53かと頭を悩ませていたが、よもやS63の、しかもカブリオレに圧倒されるとは思わなかった。これはすべての欲望を凝縮させたメルセデスAMGだ。
信じられないことにそのハンドリングは、今回で最もピュアな回頭性を示す。シャシーは先代からのキャリーオーバー、4座オープンボディで剛性は大幅に落ちているはずなのに、不快な突き上げやシェイクはない。ここにはエアサスとアクティブダンパーの制御が大きく効いているようだ。こうなると車重(2250kg!)が気になるところだが、走りに重さは感じさせない。むしろオープントップとなったことで重心の低さをより多く感じる。コーナーではステアした瞬間からシートがサイドサポートを張り出し、軽やかながらも粘り腰のエアサスによって、安心して旋回Gを高めて行けるのだ。
さらにここでS63は、AMG自製の4L V8ツインターボが吠える。Sクラスの上品さに対して排気干渉やマフラーの炸裂音は一見下品に感じられつつ人間の本能をくすぐり、620psのパワー以上に“力”を手に入れた支配欲に満たされる。欧州の階級社会とAMGの技術力は、とんでもないオープンカーを作り出した。やはりSクラスはメルセデスの旗艦である。
ENGINE TYPE:M177
新世代AMGの主力ユニット
COLUMN 03/TYPE:M279 +
最大トルク1000Nmの究極ユニット
6L V12にツインターボを付加した、AMG究極のハイパフォーマンスユニット。最高出力630psと最大トルク1000Nm超えのピークトルクによる加速は強烈のひと言だ。現在は、S65ロング/S65クーペ/S65カブリオレに搭載。
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