日本では昨年に4ドアクーペバージョンが限定35台で発売されたが、今回は2ドアのAMG GT63S EパフォーマンスをAMG本社があるアッファルターバッハでテスト。弩級のパフォーマンスとロングノーズ・ショートデッキのスタイリングは、あのライバルにはない魅力と言えるだろう!
このスタイリングはライバル911にはない魅力
2014年にメルセデス・ベンツのハイエンドスポーツブランドであるAMGが打倒(!?)ポルシェ911を目標に独自で開発したスポーツカーAMG GT(R190)はベストセラーの911には及ばないものの、主要マーケットであるアメリカで、毎年コンスタントに2000台を超える販売台数を記録している。実際、北米各地の高級住宅街でのストリートウォッチングでは、必ずその姿を見せるほどである。その主な理由のひとつは、やはりV8エンジンをフロントに搭載したロングノーズ・ショートデッキ、すなわちジャガーEタイプに見られる911にはない古典的なスポーツカーのダイナミックなシルエットにあるようだ。これは開発当初からチーフデザイナーのゴーデン・ワーゲナーが狙っていた点である。
さて、このAMG GTはちょうど一年前のぺブル・ビーチで2世代目(C192)が公開されたが、今回はそのトップモデルであるGT63S Eパフォーマンスのロングリード試乗会がシュツットガルト郊外のアッファルターバッハで開催された。
すでに一年前にデビューしたニューモデルのエクステリアデザインは、旧型に比べると切れ長のヘッドライトおよびリアのコンビネーションライトを含むボディ全体が一層スムーズなサーフェスに包まれている。インテリアは更に洗練されており、ドライバー正面には様々なスイッチ類がジャングルのように並んだステアリングホイール、そしてその奥には12.3インチのメータークラスターが備わり、センターコンソールには11.9インチのタッチパネルがセットされる。
パワートレインはF1技術をベースにしたPHEVで、ワンマン・ワンエンジン工程で完成された4LV8ビターボ(M177)エンジンで、最高出力612ps、最大トルク850Nmを発揮する。そしてこれに組み合わされるハイブリッドシステムは、リアアクスルにフランジされた最高出力204ps/最大トルク320Nmを発揮する電気モーターで、そのシステム総合出力は816ps、同じくトルクは1490Nmに達する。
今回の試乗ステージは、AMG本社工場周辺に広がる広大なワインディングロード。GT63S Eパフォーマンスはここで水を得た魚のように俊敏なダイナミックドライブを堪能させてくれた。
一方アウトバーンでは高速域で車高を4cmローダウンして空気抵抗を減らし、さらにリアスポイラーは速度に応じて自動的に5段階にポジションを可変するので常に安定した走行が可能だ。特にEブーストはおよそ140km/hで2速ギアがスムーズに介入し高速域での追い越し加速をまるで多段式ロケットのようにダイナミックなものにしている。特に面白かったのはこのGT63S Eパフォーマンスに搭載されている4段階の回生ステージシステムで、最も強力なポジションでのドライブフィールはまさにワンペダルで十分、回生能力は目覚ましくタイトなコーナーを数回まわっただけでバッテリーはフル充電になった。
さらに絶対的なパワーを楽しませてくれるだけではなくドライバーアシストも標準装備され、他モデルに劣らない装備も充実している。その他オプションではアクティブ・トラフィックジャムアシストやレーンキーピング、さらにはメモリー・パークアシストなども用意されている。
日本ではこのGT63S Eパフォーマンスは4ドア仕様だけが販売されているが、今回ドイツで試乗した2+2のパーソナルな雰囲気を持った2ドアGTは一層スポーティな佇まいと性格を持っており、911のライバルとしてはこちらの方が相応しいと感じた。
【SPECIFICATION】メルセデスAMG GT63 S E パフォーマンス
■全長×全幅×全高=4728×1984×1354mm
■ホイールベース=2700mm
■車両重量=2120kg
■エンジン形式/種類=M177/V8DOHC32V+ツインターボ
■総排気量=3982cc
■最高出力=612ps(450kW)
■最大トルク=850Nm(86.7kg-m)
■モーター型式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=204ps(150kW)
■モーター最大トルク=320Nm(32.6kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:295/35R20、後:305/35R20