ドライブフィーリングはまごうかたなきメルセデス
モーターは前後にひとつずつ置かれ、フロントは主に低負荷から中負荷で、リヤはそれ以上のダイナミックな走りの時に威力を発揮する4WD方式となる。システム最高出力は408ps、最大トルク760Nmを発生するそうだ。フロア下に敷き詰められたリチウムイオン電池の電力量は80kWhで、バッテリー単体での重量は652kgにも及ぶ。充電時間はACの普通充電で約11時間、DCの急速充電で約40分。日本仕様はCHAdeMO対応となるそうで、高速道路などの急速充電器が使用できる。最高速は180km/h、0→100km/hは5.1秒で、航続距離は使用状況にもよるが445kmから471kmと発表されている。
モーター/リダクションギア/ディファレンシャル/冷却システムはひとつのハウジングに収められ、これが前後共サブフレームにマウントされている。
走り出してすぐに乗り心地のよさと静粛性の高さが実感できるが、これはBEVならどんなモデルにも共通する印象である。床下に652kgのバッテリーを搭載する2495kgの車重があれば、ばね上の動きはある程度自動的に抑えられるはず。電子制御式ダンパーをあえて採用しなかったのは、おそらくその必要がなかったと考えられる。静粛性に関しては、特にリアのフェンダー周りに遮音/吸音の処置が施されていた。内燃機よりも圧倒的に静かなBEVでは、内燃機仕様車でさほどきにならなかった音が耳障りに感じる場合がある。フェンダー周りの処理は主にスプラッシュノイズ対策だろう。1万3000回転まで回るモーター特有の高周波ノイズもうまく遮断されていた。
荷室容量は後席を倒さずに500Lで、GLCよりも50少ない(数値はいずれも欧州仕様)。
ハンドリングはまさにメルセデスのそれである。ステアリングレスポンス、コーナリング時の過渡特性、荷重移動など、メルセデスのSUV系と何ら変わりない安定志向の味付けになっていた。動力性能も同様で、ドライブモードのコンフォートやエコを選んでいる限り、スロットルペダルの動きに対するパワーデリバリーは内燃機仕様車と酷似していて違和感をまったく感じない。スポーツを選ぶと瞬時にトルクが立ち上がるEVらしいパワフルな加速が顕著に体感できた。
とりあえず初めてのBEVは、革新的というよりも保守的にまとめてきた印象が強い。メルセデスも、この先10年くらいのパワートレインの動向が正確には掴めていないようで、EQCでしばらく市場の反応を窺うつもりなのだろう。専用プラットフォームの開発についての言及はなかった。
リポート:渡辺慎太郎/S.Watanabe フォト:メルセデス・ベンツ日本/Mercedes-Benz JAPAN ル・ボラン2019年7月号より転載