【国内試乗】新型センチュリーの全席に乗ってみた!

さすがの後席

発表会で開発主査から聞いたように、太いピラーにまずは自分の姿を映し、髪をちょっといじってからドアを開けました。

スカッフプレートとフロアの段差を可能な限り小さくされており、カーペットが敷かれた状態だとそこがフラット。このおかげで乗り降りが抜群に楽。特に下りるときの効果は大きく、ここに足がガシっと当たることがないことが実にいい。やや緊張しながらまずは一等地である左後席に腰かけ出発。

標準状態でも充分だけど、前席スライドを一番前に、シートバックもフルに前に倒すと空間はかなり拡がりいろんな姿勢でいられる。礼服への着替えもさほど窮屈感なくできそう。アームレストのタッチパネルを操作してシートバックをめいっぱい倒し、前席シートバックに内蔵されているオットマンをなりなりと開いて足を乗せ『瑞響』に体をあずける。そうそう、せっかくだからマッサージもオンにして……ああもう何も考えたくない。このシートでVIPたちはどんなこと考えているのかと想像してはみたものの、もしかしたら案外何も考えずに誰にも邪魔されない時を過ごしているのかもしれないとも思いました。

11.6インチリヤシートエンターテインメントシステムはBlu-rayディスクの再生もできるし、SDカード、HDMIインプットの他、Miracast、DLNA対応なのでモバイル端末の音楽や映像も再生できる。12chオーディオ・20スピーカーのプレミアムサウンドシステムはさすがにいい音を出す。シートアレンジ、オーディオ、エアコン操作などほとんどのコントロールはリアシートからも可能。

先代は“オットマン機能付助手席シート”で、シートバックの一部分を開けてそこに足を差し入れるようになっていたため運転手に足先が見えるというあまりありがたくない状態だったけど、新型はホイールベースが延びた効果でその必要がなくなったため、安心して足を伸ばせるようになった。

そのままで終わるわけにはいかないのでオットマンとリクライニングを元に戻ししゃきっと座ってみます。

サイドカーテンを開けて、意味もなく道行く人に優雅に手を振ってみます。すると、リアからフロントにかけての視界がすごくいいことに気づきます。街中のいろんなもの、例えば地面、人の動き、ビル、空、それぞれがいいバランスで目に入るんですね。

人々の街の動きを目線とほぼ同じ高さから見るというのがいいのかもしれない。この開放的で広い視界がリラックス具合にも寄与している気がします。車内の物理的空間が広いという理由でミニバンにすることも増えているように聞くけれど、視点が高いことと実はそんなに視界が広くないということもあり、何か肝心なところで世の中を見誤りそうな気がします。

発表会の時に外国人記者からセンチュリーのSUVやミニバン版は作らないのかとの質問があったけれど、それは上に述べた点からもあり得ず、セダンであることに意義があると思います。またミニバンは、優雅に開閉する電動スライドドアと高いフロアのせいで乗り降りに時間がかかるため、有事の迅速な乗降性に劣り、この点でもセダンに分があると言えるでしょう。

護衛しやすい助手席

乗り心地の方はどうか?

飛ばして走行したときのエンジン音、リアタイヤの音、ロードノイズなんかはけっこう聞こえるし、高速道路の継ぎ目や段差を踏んだときのコツコツ感は意外に大きい。このあたりは先代のV12エンジンモデルに分があるように思えました。もうちょっとスカイフック感(上からつるされていて、バネ下だけで衝撃を吸収する感)が欲しい。今の技術なら、路面の先を読んで瞬時に減衰力を変化させるくらいのことはできるはずです。

と、思いながらも感心したのは、けっこうラフな運転をしても肩が揺さぶられるようなことがないこと。このときの運転担当は、残念ながらセンチュリーの運転手としてはいかがなものかと言いたくなるような運転をしてくれたのだけど、見た目のラフさが後席での体の揺れに直結しないんです。なぜ? 減衰力可変ショックアブソーバーの効果でしょうか?

助手席からの視界もけっこう広くいろんなものが目に入る。このことは、SPや警備担当が護衛する際に不審者や不審物の早期発見につながると思います。

取材・写真・文:大田中秀一

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2019/05/04 11:30

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