メルセデス AMG GT S vs ポルシェ 911 ターボ、掛け値なしのガチンコ対決!【清水和夫のDST】#67-1

完成度の高いスポーツカーを本気で開発

AMGは長らくメルセデス・ベンツのエンジンチューナーとして、ホットなメルセデスを作ってきたブランドである。しかし2004年のSLRからはコンプリートカー製作の道を歩み始め、いまではメルセデス・ベンツの別働隊としてスポーツ車両を一挙に引き受ける存在となった。そのため、エンジン開発だけでなく、カーボンなどボディ素材の研究や空力技術まで身につけるようなったのだ。これはF1などのモータースポーツ参戦を見ても分かるように、フェラーリやポルシェのようなスポーツカービジネスの構築を目論んでいるからだろう。今回登場したAMG GTは、これまでとは違って、完成度の高いスポーツカーを本気で開発してきたように感じた。

エンジンは「ホットV」と呼ばれる新世代V8ターボ。Vバンク内にタービンを搭載する方式はBMW M5/6から始まったV8ターボだが、コンパクトにまとまったV8はフロントボンネット内の後方に搭載される。つまり、フロントミッドシップなのだ。実測値で計算するとフロント48%、リア52%の配分となっている。

高速周回路では、エンジンはAMG特有の「ゴロゴロ」という音を聞かせてくれる。これは各シリンダーの点火順序に秘密があり、狙いは個性的なV8サウンドである。コクピットに座るとポルシェ911 GT3と同じようなアルカンターラのステアリングホイールが印象的だ。しかし、そのグリップが太い。手が小さい私にはちょっと握りにくかった。

AMG GTの特徴は、ロングノーズのFRパッケージを持っていること。サーキットでドリフトさせると、911とは違った感覚が得られる。この日の高速周回路はかなり強い横風が吹いていたが、低いフォルムだから横風への安定性も悪くなかった。

 

ル・ボラン 2016年3月号より転載

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