BMW初のSUVが採用した「xDrive」
BMWが開発したAWD(オール・ホイール・ドライブ)システムの「xDrive(エックスドライブ)」は、2003年に初代X5がマイナーチェンジした際に搭載されたのが最初のケースだ。BMW初のSUVとして独自にSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)を名乗ったX5は、その後世界的な大ヒットモデルとなり、実に84万5000台以上のセールスを記録。そしてこのX5の成功が、Xモデルのシリーズ化の布石となったのは明かであり、いまや数多くのBMWモデルがxDriveを搭載するに至っている。現行ラインナップでいえば、コンパクトMPVの2シリーズ・アクティブツアラー/グランツアラーをはじめ、主力の3シリーズ・セダン/ツーリングから旗艦7シリーズ、全Xモデル、そして最新のM5に設定されるなどSUVだけの装備でないことがわかる。
そもそもBMW xDriveとは?
BMWの多くがFR(フロントにエンジンを搭載して後輪を駆動)レイアウトを採用しているので、その代表的な例から解説しよう。まずxDriveは、トランスミッション(変速機)後方に配置されるトランスファーギヤボックス(エンジン出力をドライブシャフトを介して前後軸に伝達する装置)内蔵の電子制御式多板クラッチによって、フロントとリアのアクスルにシームレスで駆動トルクを可変分配する。各モデルのキャラクターによって異なるが、FRレイアウトの基本となるトルク配分は、前40:後60というように後輪への配分が大きく、その状態からコンピュータの指示によって0:100から100:0までの間で、駆動トルクが前後のアクスルへと振り分けられる。
最大のキモは統合制御
前後のアクスルへと駆動トルクを振り分けるxDriveは、ほかの制御と統合されて作動することでその真価を発揮する。「ABD-X(オートマティック・ディファレンシャル・ブレーキ)」を含む「DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール/姿勢制御装置)」、モデルによっては「ダイナミック・パフォーマンス・コントロール」や「アクティブMディファレンシャル」といった複雑な機構がそれ。
こうした電子制御システムを組み合わせるメリットをコーナリング中にアンダーステア(前輪が遠心力によって外側へ向く挙動)が発生したケースで考えてみると、xDriveを搭載しないクルマで強いアンダーステアに見舞われた場合、DSCがエンジン出力を絞ると同時に内輪のフロントないしリアのブレーキを適切にポンピングして、車両をイン側に向けていくという、走行性能面では消極的な制御といえる。
当然、xDrive搭載車でも基本的にDSCが介入してエンジン出力の制御と各ブレーキへの制動を行うのだが、より積極的にアンダーステアを解消するべく、後輪の駆動トルクを増やしてオーバーステア(コーナーの内側に巻き込む傾向)へと車両を持ち込む。逆に、オーバーステアが過剰になった場合はフロントの駆動トルクを増大させてバランスを保つわけだ。また、上位モデルに用意されるダイナミック・パフォーマンス・コントロールは、さらに一歩進んでカウンターステア(進行方向と逆にステアリングを切る)まで自動躁舵しながら姿勢を立て直し、アクティブMディファレンシャルが組み合わされれば左右輪への最適なトルク分配までも実現する。
こうした一連の制御は極めてリニアで、エンジン出力のコントロールや前後アクスルへの駆動配分には1秒も要さない。例えば雪道発進などでフロントタイヤだけがグリップするような状況では、スリップしないレベルに調整した駆動力のほぼ100%を、0.1秒以内にフロントアクスルに配分する。
走行性能と安全性に寄与
AWDシステムは、エンジンの持つパフォーマンスを効率よく路面に伝達できるため、優れた運動性能が発揮できる。運動性能の高さは、安全性の高さにも直結するが、BMWのxDriveの場合、さらに一歩も二歩も進んだ電子デバイスとの統合マネジメントによって、走行性能と安全性の双方を飛躍的に高めている。最後に余談だが、BMW=後輪駆動というイメージが強いが、xDrive装備車がバックする際は前輪のみを駆動させるので、一時的にFF(フロントエンジン前輪駆動)状態となる。
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