ポルシェが新たなフラッグシップSUVを開発している。開発コードネーム「K1」のスーパーSUVだ。ここでは本国でキャッチした開発車両の写真と、取材で知り得た情報をもとに、その概要をお届けする。
3列シートを備えた最大のポルシェSUV
ポルシェがカイエンより上のクラスに位置するスーパーSUVの開発を行っていることは、今からおよそ1年前のディーラー・ミーティングで同社のCEOであるオリバー・ブルーメが自ら明らかにしてくれた。
開発呼称「K1」と呼ばれるポルシェとしては全く新しい7番目のシリーズに属するニューモデルは、フルエレクトリックかつフルサイズSUVと言われているが、ブルーメによれば「SUVの新しい解釈、スポーティで全く新しいシルエットを持つクロスオーバーモデル」と断言。
2023年秋頃から2024年の初頭にかけてポルシェの開発センターがあるシュトゥットガルト郊外ヴァイザッハ周辺で目撃され始めた数台のプロトタイプは、マカンのボディを延長した完全なカモフラージュが施されたミュール(偽装車)で、タイカンあるいはマカンEVのようなヘッドライトを含むフロントのデザインには、ポルシェのEVファミリーらしさが見える。
短いノーズとリアのオーバーハングを持つボディ全長は約5mと思われるK1だが、3列目シートのヘッドルームを稼ぐためにルーフは後方まで平坦に伸びている。何度か遭遇したプロトタイプを見ると標準装備と思われるエアサスペンションにより車高はかなりの幅で可変可能で、オフロード走行への対応も考えられているようだ。
このスーパーSUVに採用されるプラットフォームは、これまでは同グループのランボルギーニが2023年8月に発表、2028年に販売を予定しているフルエレクトリック・スポーツカー・コンセプト「ランザドール」と同じSSP+S(スケーラブル・システム・プラットフォーム)スポーツの採用が予想されていた。しかし、グループ内のソフトウエア開発会社「カリアド」の開発遅延問題などから先に発売されたマカンEVと同じPPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)が採用される可能性も考えられる。
もちろん技術的なアップデートが行なわれる中で、2021年のフランクフルト・モーターショーで公開されたスーパー・スポーツEV「ミッションE」で紹介された920Vのオンボードアーキテクチャーが搭載される可能性もある。この高電圧によって5〜80%の充電時間は何と15分で完了させることが出来る。また搭載されるリチウムイオン・バッテリーの容量は少なくとも100kWhで、航続距離は最低でも700kmが目標とされている。また、こうした電気関連技術は先のタイカンで技術協力関係を築き、新たにグループに加わったクロアチアのスタートアップ「リーマッツ」の助けを借りているのかもしれない。
シャシーは基本的にはマカンEVと共通で、最大舵角5度までの後輪ステアも採用され、延長されたボディにも関わらずポルシェの名に恥じないアジャイルな操縦性と市街地での取り回しを見せてくれるはずだ。
また、同グループのランボルギーニが2+2のGTであるのに対して、ポルシェは3列シートを持ったフル6シーター(あるいは7シーター)が予想され、これはポルシェがこれまでスポーツカー専門メーカーからカイエンそしてパナメーラで成功し、その生産台数を大幅にアップさせた歴史に起因している。すなわち、ポルシェCEOであると同時にVWグループの会長でもあるオリバー・ブルーメが18.4%という同グループ内での最大利益率を持つブランドとして、さらなる成長とグループ、そして株主への貢献を目論んでいるためなのだ。
それにはこのスーパーSUVが最大市場である中国、そしてアメリカで台数を伸ばす必要がある。もちろん、そのためには前述したランボルギーニ・ランザドールのようにスポーティなGT風のスタイルでは難しい。にも関わらずブルーメは「これまでにないカテゴリーのクロスオーバー!」と語っている。チーフデザイナーのミヒャエル・マウアーにとっては大きな挑戦と言えるだろう。
ポルシェはこれまでにタイカン、そして本格的な量販を目指したエレクトリック・マカン4とターボを発売、さらに2025年にはボクスターおよびケイマンの718シリーズ、そして2026年にはカイエンの電動化も計画しており、このスーパーSUVの登場で「2030年には全製品の80%がフルエレクトリックモデルになる!」と言うオリバー・ブルーメの公約が果たされることになる。
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