質実剛健かつスポーティな傑作車
戦後のメルセデス初のコンパクトカーとして1982年に誕生した190E(W201)は、1970年代のオイルショックを期に急速に高まった経済的実用車を求める声に応え、約10年の歳月をかけて開発された。
【画像39枚】見事に後期型190Eノーマルへと改修された作例とその制作過程を見る!
当時すでに2リッター・クラスの実用車の駆動方式はFFが主流となっていたが、ダイムラーの設計陣はあえて手堅いFRをチョイスし、サスペンションはフロントにメルセデス初のマクファーソン・ストラット、リアには世界初のマルチリンクが採用された。エンジンは当初は新開発のSOHC 2L 4気筒でキャブレターとインジェクションの2種類のみだったが、1983年にはコスワースの協力で開発されたスポーツ仕様2.3-16が追加され、1988年には2.5-16に発展した。
空力実験車C111から得られた知見を元にフラッシュサーフェス化された機能主義的なスタイリングは、当時のチーフデザイナー、ブルーノ・サッコによるもの。1988年のマイナーチェンジでノーマル系の前後バンパーがエアダム形状に変更され、側面下部に空力重心を引き下げる目的で「サッコ・プレート」が装着された。
小型ながらSクラスやEクラスと同等の品質を誇る190Eは、軽量で操縦性にも優れていたため、一種のスポーティカーとしても高く評価され、DTMなどモータースポーツでの目覚ましい活躍もあり、メルセデス・ユーザーの若返りに大きく貢献した。日本ではバブル期に大量に輸入され、BMW 3シリーズと並び「シロガネーゼのお買い物カー」として大ヒットしたが、今世紀に入りエンスーなヤングタイマーとして改めて注目されている。
レース用車両であるエボ1のキットから右ハン・ノーマル化!
190Eの1/24プラモデルはエッシーとフジミの2社が手掛けたが、前者は前期型190Eと2.3-16、後者はAMG/2.3-16/エボリューション1/エボリューション2というラインナップで、我が国の路上でもっともポピュラーな190E後期型(いわゆるサッコ付き)のプラモデルは残念ながら存在しない。今回の作例はフジミのエボリューションを改造して、サッコ付きノーマルを再現したものだ。
フジミの190EはAMGと2.3-16が1984年リリース、エボ1/2は1994年リリースで、両者はボディの骨格が全く異なる。エボ1よりもAMG/2.3-16からの改造のほうが工作は少なくて済むが、今回はプロポーションの良さを重視して、前者からの改造にトライした。オーバーフェンダー除去/ノーマルフェンダー自作、前後バンパー下部形状変更、サイドシル形状変更などの工作は、プラ板と瞬間接着パテを駆使して行なった。
右ハンドル・AT・スライディングルーフ・フルレザースポーツシートというスペックは、私自身が約24年前から所有している個体を再現したもの。キットは左ハンドルMTなので、ダッシュボード/シフトコンソール/シフトレバーは、10年ちょっと前に個人的に製作したトランスキットのデッドストック部品を流用した。
メルセデス・ベンツの歴史上で重要な車種であり、世界の小型セダンのデザイン潮流に強い影響を残し、ツーリングカーレースでも一時代を築いた190E、そろそろ決定版と言える新しいキットが欲しいものだ。
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