“フェラーリ初のSUV”として噂に上っていたプロサングエが、ついにヴェールを脱いだ。しかし、フェラーリはプロサングエが「ホンモノのスポーツカー」だと主張する。では、はたして一般的なSUVとプロサングエはどこがどう違うのか? 正式発表前に行なわれたワークショップで明らかになった内容から説き明かすことにしよう。
【写真13枚】満を持してヴェールを脱いだV12搭載の4ドアモデル「フェラーリ・プロザングエ」の詳細を写真で見る
“跳ね馬”からのファイナルアンサー
初めに断っておくと、フェラーリはプロサングエがSUVではないと説明している。
しかし、全高が1589mmもある4ドアモデルで、おまけに4WDなのだから、多くの人々がプロサングエをSUVと受け止めたとしても不思議ではない。そして、そのことはフェラーリ自身も重々承知しているはず。それでも彼らがSUVと認めないのは、SUVとひと言で括られることで、プロサングエのユニークなキャラクターやパフォーマンスが見過ごされることを危惧しているからではないか。ワールドプレミアに先駆け、マラネロで行なわれたプロサングエのワークショップに参加した私は、そんなふうに理解している。
たしかにプロサングエは、従来のSUVとは一線を画している。たとえば、アルミスペースフレーム製のアーキテクチャーはプロサングエだけのために作られたもの。おかげでエンジンなどの重量物をすべてホイールベース内にレイアウトできたほか、ギアボックスを後車軸上に設けるトランスアクスル方式により、前後の重量配分をフェラーリが理想とする49:51に設定できたという。
プロサングエに搭載されるエンジンは自然吸気式V12。基本的には、812スーパーファストなどに搭載されたものと同系統だが、吸排気系やクランクシャフトなどを大幅に刷新することで、725psの高出力と2100rpm以上で最大トルクの80%以上を発揮する柔軟性を実現。2033kgのボディに対して十分以上のパフォーマンスを手に入れている。
なお、一部に「プロサングエにはV12エンジン+ハイブリッドが投入される」との噂もあったが、フェラーリ側は「V12こそプロサングエにぴったりとマッチする」と判断し、ハイブリッドの採用を見送った。また、当面は別バリエーションを追加しない計画であることも明言している。
プロサングエがトランスアクスル方式の4WDであることはすでに述べたが、前車軸用のトルクはギアボックスから“取り寄せる”のではなく、エンジンの出力軸近くに置かれたパワー・トランスファー・ユニット(PTU)からダイレクトに伝達される。このPTUには、エンジンパワーを前後に分割するだけでなく、前車軸用の2段ギアボックス、さらにはフロントの左右2輪に伝達するトルクを個別に制御する機能などが盛り込まれている。そうすることでヨーモーメントを積極的に制御し、ブレーキに頼らないトルクベクタリングを実現しているのである。
新開発のフェラーリアクティブサスペンションも注目に値する。これは各車輪に設けた電気モーターとリサーキュレーティングボールスクリューでホイールの位置を制御するもの。しかも、フェラーリはこのアクティブサスペンションで単にロールやピッチを打ち消すのではなく、ドライバーにとって自然な運転感覚、それにタイヤの接地性を最適化するために活用したと主張している。このあたりも、実に興味深い部分だ。
もうひとつ、プロサングエで注目されるのは、ウェルカムドアと呼ばれる観音開き式ドアを採用したことにある。このリアドアはBピラーの根本付近に取り付けられた小さなスイッチで開閉可能。しかも、一部の観音開きモデルとは異なり、フロントドアとは無関係にリアドアを単独開閉できる。観音開き式には珍しくBピラーが設けられているのは、このほうが軽量化と高剛性に役立つからだ。
大人4人に十分なスペースを確保しながら、グランドツーリスモ性やスポーツドライビングの喜びまで盛り込んだプロサングエ。たしかに、従来のSUVという枠には収まりきらない新ジャンルの4ドアモデルといえるだろう。
【SPECIFICATION】フェラーリ・プロサングエ
■全長×全幅×全高:4973×2028×1589mm
■トレッド(F/R):1737/1720mm
■ホイールベース:3018mm
■車両重量:2033kg
■エンジン形式:V12DOHC48V
■総排気量:6496cc
■ボア×ストローク:94.0×78.0mm
■圧縮比:13.6
■最高出力:725ps/7750r.p.m.
■最大トルク:73.0kg-m/6250r.p.m.
■変速機:8速DCT
■懸架装置(F&R):ダブルウィッシュボーン
■制動装置(F&R):ベンチレーテッド・ディスク
■タイヤ(F:R):255/35R22:315/30R23
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