あえて簡素さを追求した軽オート三輪ブームの立役者
軽オート三輪の代名詞とも言えるダイハツ・ミゼットは、1957年8月に発売された。ダイハツは戦前からのオート三輪の老舗のひとつとして知られていたが、この頃、オート三輪市場が徐々に縮小しつつある状況にあって、ミゼットの開発は綿密な商品企画に基づいて行われたという。
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ミゼットの特徴は、何と言っても軽自動車であることだ。軽自動車という規格自体は1949年に初めて制定されたものだが、名は体を表すと言うべきか、これに則って作られた車種は、いずれもオモチャのようなものであった。寸法や排気量の規定は徐々に拡大され、その中で軽自動車も段々と本格的なものとなってきたが、”革命的”とも言えるスバル360の登場には、1958年まで待たねばならない。
軽規格が本格的なものとなるにつれ、その規定に合わせた三輪トラックもミゼットより前に、すでに世に出ていた。ライトポニーやダイナスター、ムサシ等々、全国に乱立していた中小の零細企業によるそれらの名を聞いても、その姿を即座に思い出せる人は少ないことであろう。それらは、あくまで通常のオート三輪を軽規格に縮小しようというところから出発していた点に、無理があったものと思われる。ミゼットはあくまで、軽自動車としてできることの枠内で考えた製品であることがミソであった。
すでにオート三輪は丸ハンドル化などの高級化・本格化に向かっていたが、ミゼットはバーハンドル・一人乗り・オープンキャブと割り切った設計で、ボディサイズも軽規格いっぱいと言うよりはいくぶん小さく、最大積載量も300kgと、実に簡素であった。敢えてミゼットでは酒屋や米屋などの小口配達に用途を絞り、「街のヘリコプター」というキャッチコピーでそれをアピールしたのである。
もう少しミゼットの具体的な内容について述べておくと、ボディサイズは全長2540mm、全幅1200mm。エンジンは強制空冷式2ストローク単気筒249cc、最高出力8hp。変速機は前進3段、後進1段。これだけの内容で軽快に走り回り、しかもオートバイと同程度の価格(23万円)とあっては、ヒットしない訳はなかった。他社からも同様の軽オート三輪が発売されることとなるが、ダイハツはセル付きやドア付きなどを追加しこれに応戦、さらに丸ハンドル・密閉キャビンのMP型ミゼットを1959年に発売している。一方、バーハンドルのミゼット(DK/DS系)は1961年に生産終了となった。
ミゼットのプラモデルといえば、かつてエルエスがリリースし、金型を引き継いだマイクロエースが現在も販売している1/32スケールのキットが思い浮かぶが、ここでお見せしているのは、それではない。1/32とは段違いの全体の密度感から分かるように、1/24スケールで制作された、完全なるフルスクラッチモデルなのだ。すでに以前、同様にフルスクラッチしたハンビーをお見せしているが、作者は同じく周東氏、制作方法も同じく木型を削りだしてのヒートプレスとプラ板箱組みの組み合わせである。
フロント周りの表情には、よく知られたミゼットのそれとは異なるものが感じられるが、その理由は、ヘッドライト下のルーバーと、それに付随するメッキの飾りがないためだ。これは、極初期モデルを制作したためであるとのこと。ハセガワ製スバル360のタイヤやタミヤ製ロータス7のデフ、タミヤ製ミニのヘッドライトレンズなど、流用パーツはいくつかあるが、基本的にはすべてプラ板から作り出された作品である。じっくりとご覧頂きたい。
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