ジャガー・ランドローバーのハイパフォーマンスモデルの開発/製造や、ビスポークオーダーを請け負うスペシャル・ビークル・オペレーションズ(SVO)が手掛ける、ハイパフォーマンスグレード「SVR」に日本限定車が登場。専用の意匠およびカラーを纏った高性能SUVの出来栄えはいかに?
英国メイクスが仕立てる高性能SUVの作り方
シングルモルトに代表されるように、イギリス人はひとつのものをじっくりと熟成させ、より良いものに磨き上げる才能に長けている。それはクルマも例外ではない。
ジャガー史上初のSUVとしてFペイスがお披露目されたのは2015年のこと。デビュー直後に乗った2L直4ディーゼルと3.5LガソリンV6スーパーチャージャーは、軽量高剛性のアルミモノコックシャシーにより、高速道でも山坂道でも静かで乗り心地がよく、4本のタイヤが常にしっかりと路面を捉える足捌きのバランスも素晴らしく、「さすがジャガー」と唸ったのを覚えている。
今回試乗したのは、Fペイスのフラッグシップ&ハイパフォーマンスモデルであるSVR。しかもSVビスポークが手がけた”SVRジャパンSVエディション”という日本専用20台の限定車である。
中でもアボカドと呼ばれる若草色のボディカラーはわずか5台の設定。個人的にはスターリング・モスやイネス・アイルランドを擁してF1を戦ったUDTレイストール・レーシング・チームの”レイストール・グリーン”を想起させる色で、ブラックアウトされたグリルやモールとも似合っていると感じた。
ドアを開けると、エボニーで統一(他にライトオイスターとのツートーンも用意)されたトリムや、ウインザーレザー・パフォーマンスシートのインテリアが広がり、SVOが手がけるSVブランドならではの特別感を演出。
しかし、そこで満足するのはまだ早い。SVRといえば最高出力550psを発生する5LのV8が特徴だが、2021年モデルで行なわれたビッグマイナーチェンジで出力はそのままに680Nmから700Nmへとトルクを増強。その結果、0→100km/h加速が0.3秒縮まり4秒フラットになったほか、最高速度も283km/hから286km/hへと向上しているのである。中には「たったそれだけ?」と思う方もいるかもしれないが、ライトウェイトスポーツならともかく、車重2.1トンの巨大なSUVのパフォーマンスを280km/h以上の領域で向上させるのは並大抵のことではない。
聞けばボディのエアロダイナミクスも見直され、ドラッグが35%も低減されているほか、XE SVプロジェクト8と同じトルクコンバーターを採用して、より高負荷に対応できるようになった8速AT、さらにダイナミクスシステム、アダプティブダンパー、ブッシュなどもアップデートするなど、随所に地道かつ有効なアップデートが施されているという。
乗り出してまず感じるのは、そうしたスペックの凄さより、静かさと上質さだ。これは2021年モデルでFペイスシリーズに施された、様々な改良、そしてモデルライフを通じての熟成にほかならない。フロント265/40ZR22、リア295/35ZR22というタイヤサイズにも関わらず、乗り心地はしなやかで、耳障りなノイズも感じさせないのだ。
ではSVRが飼い慣らされた大人しい豹かというと、そうじゃない。ドライブモードをコンフォートからダイナミックに変えると、V8は雄叫びをあげ、吹け上がりもアクセルペダルに対するレスポンスも俄然鋭くなる。そして足回りは明らかに硬く引き締まり、路面からの突き上げも隠そうとはしない。その代わり速く走るということには驚くほど貪欲で、2トンオーバーの車体をものともせずに猛烈に加速し、フラットな姿勢を保ったまま路面に吸い付くように曲がっていく。
世の中にハイパフォーマンスなSUVを謳うモデルは数多くあるが、ここまで骨っぽいクルマも珍しい。さすがはSVOの仕事だと思わず笑みが溢れるほどだった。
【Specification】ジャガーFペイスSVRジャパンSVエディション
■全長×全幅×全高=4755×1960×1670mm
■ホイールベース=2874mm
■トレッド(F:R)=1648:1655mm
■エンジン種類/排気量=V型8気筒DOHC 32V+スーパーチャージャー/4999cc
■最高出力=550ps(405kW)/6250-6500rpm
■最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/3500-5000rpm
■燃料タンク容量=82L(プレミアム)
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F&R)=Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=265/40ZR22: 295/35ZR22
■車両本体価格(税込)=16,460,000円
■問い合わせ=ジャガー・ランドローバー・ジャパン ☎0120-050-689
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