ABSをボディに使った初めての市販車
シトロエン・メアリは、ディアーヌ6のシャシーをベースとした、レジャーカー的なモデルである。フランスにおける国民車として長く愛された2CVの後継車・ディアーヌ6の鋼管フレームシャシーの上に、ABS樹脂によるボディを架装。このボディはミリタリールック的な平面を多用したデザインであり、レジャーカーとしてだけでなく、小型トラックとしての性格も持たされたものであった。エンジンは空冷水平対向2気筒の602ccで最高速は100km/h。1968年から1988年という長きに渡って製造され、約14万5千台が世に送り出されている。
樹脂製のボディは、基本的には塗装ではなく成型色での仕上げであるため、傷付いても補修が簡易である。当然ながら錆に強く、漁業や農業の軽便な運搬車から、ビーチサイドや避暑地でのレジャーユースにと、広く人気を博した。当時まだ最新の素材であったABSだが、市販自動車に導入したのはこのメアリが最初であったと言われる。
ディアーヌ、ひいては2CVと同様のシャシーであるため、ミリタリー調のルックスと裏腹に4WDではなかったが、1979年にはパートタイム4WDのメアリ4×4も登場している。シンプルかつ軽量であるため、耐久性と悪路走破性が評価され、フランス軍にも納入された。ちなみに「メアリ」とは、レースに使われるヒトコブラクダの一種から付けられた名前で、このクルマの性格を上手く表現していると言えよう。
さて、ここまでお見せしているのは、実車と同じくフランス製、エレールの1/24スケール・プラモデルを制作したものである。2015年末頃に新規金型キットとしてリリースされたもので、同車初のプラモ化だ。一部のパーツは同社製2CVから流用するなど、実車の生い立ちとの共通性が見られて興味深い。ただし、フロントバンパー下部やヘッドライト周辺、さらには2CVのままのシートなど、そのままでは違和感のある部分も少なくないので、この作例ではその辺りを中心に手を加えている。
キットの有難みがさらに増す追加工作
まずボディをチェックすると、フロント周りの表現不足が気になる。ヘッドライトのリフレクターが平板であるし、バンパー下のリブが凹ではなく凸モールドとなっている。そこでヘッドライト周辺はドリルやナイフでくり抜き、ライトベゼルを作り直した。0.5mmプラ板を2枚重ね、ライトレンズはハセガワBMW 2002から流用することとし、それが入る孔(6.5mm径)を開ける。これをドリルの先端に両面テープで固定し、回転させながら紙ヤスリで削って孔のヘリをすり鉢状にする。外形をざっくりと切り出し、ボディに合わせながら調整。エプロン部分はプラ板で作り直している。
リアに目を転じると、給油口のモールドがボディと一体で立体感に乏しいので、一旦くり抜いた。プラ板で底を付け、2mmプラ棒と3mmのプラパイプで給油口を自作。車体裏面にはプラ板で作ったガソリンタンクを追加、エンジン部分はほぼ素組みだが、エアクリーナーがボンネットと干渉するので取り付け位置を下に下げている。仮組みを行って4輪接地を確認すると、車高等の調節は不要だがトレッドは対処が必要だった。ホイール内側にプラ板でスペーサーを貼って調節、0.5mm×3枚で1.5mm拡げている。
この他、前述のようにシートパターンが違っている。キットパーツは2CVのまま菱形のパターンがモールドされているが、メアリは単純な縦線パターンだ。そこでシートにパテを盛ってから表面を平らに削り、0.2mmプラペーパーを短冊状にして貼り付けて修正した。
ここまで説明した工作はいずれもプラ板加工や簡単なパテ盛り作業、他車種のパーツ流用などで済むので、ハードルは高くない。基本的な制作においては、ハメ込みのダボや細かなパーツ形状のダルさ、ファジーさが気にはなるものの、丁寧にバリ取りや擦り合わせをしてやれば、素敵なメアリが出来上がるだろう。
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