1976年、ポルシェ935ターボは、ドイツ国内のレーシングカー選手権(DRM)はもとより世界選手権クラスでも圧倒的な強さを誇り、シルエットフォーミュラはまさにポルシェの独擅場となっていた。そんな中、打倒ポルシェを目指し、トヨタ・チーム・ヨーロッパとドイツ・トヨタ(ドイツ国内のトヨタディーラー)との企画によって開発されたのが、セリカLBターボである。ベースはセリカLBだが、18R-G型エンジンにシュニッツァー製16バルブ・ヘッドを組み合わせ、さらにKKK製シングルターボとクーゲルフィッシャー製インジェクションポンプで武装。排気量も2090ccまで拡大され、560馬力を捻り出した。レギュレーションによりボンネット、ルーフ、ドア、テールパネルはベース車両そのままが義務付けられていたが、それ以外の部分はシャシーも含めて完全なレーシングカーとして設計され、車重も860kgに抑えられていた。
1977年のDRM第8戦ホッケンハイムで突如としてデビューしたものの決勝4ラップでリタイア、続く第9戦も決勝3ラップで退場。しかし最終戦ニュルブルクリンクでは1、2、3位のポルシェに続く4位で完走、そして、デビューから4戦目にあたるゾルダー(ベルギー)で開催されたノンタイトル戦ADACトロフィーで、ようやくポルシェを抑えて念願の初優勝を収めた。
シルエットフォーミュラの存在を知らしめた1台!
翌1978年は、初戦よりDRMに参戦したが8位完走が一度きり。1979年にはトムスにより日本へと輸入されたが、富士で1勝を挙げた以外は振るわなかった。こうして戦績だけを見ると、レーシングカーとしては決して成功したマシーンではなかったとも言える。しかし、日本におけるシルエットフォーミュラの草分け的存在であることは間違いないだろう。とりわけ、模型メーカー各社により製品化されたことが、アラフォーやアラフィフ世代にとっては、このマシーンひいてはシルエットフォーミュラを認知する契機となったのではないか。1/24のプラモデルとしてはタミヤ、アオシマ 、フジミ、イマイ、ニチモ、マルイなどからリリースされており、特にタミヤは1/20でもキット化していた。
さて今回は、現在でもその気になれば比較的入手しやすい、タミヤ製1/24を作例として制作してみた。実は私、物心ついた頃からのクルマ好きだが、そのルーツ(DNA?)は母方の叔父であり、その叔父がずっとセリカのLBに乗っていたのである。そんなこともあり、このLBターボはずっと気になっていたキットであった。たまたま行きつけのリサイクルショップで見つけたのだが、おそらく初版当時のもので箱の状態があまり良くなく、意外なほど安く購入できた。さらに、ボディとシャシーが間違った状態でハメ合わされて保管されていたためどちらも変形していた。これをドライヤーで温めたり、プラ棒でつっかえ棒を追加したりして、何とか元の状態にに戻して制作したつもりである。
キット自体は、時代的に主流であったモーターライズ仕様で、室内後部を単三乾電池2本とモーターのスペースとしたものだ。しかしながら、コクピットは上げ底ではなく、付属のドライバーフィギュアも足先を省略することなく爪先まできちんと再現されている。ボディ全体の形状も変にデフォルメされておらず、むしろ前後に伸びやかなのがとても好印象であった。車高やフェンダークリアランスも当時のレーシングカー然とした雰囲気が再現され、そのまま組んでもディスプレイモデルとして耐えうるものに仕上がる辺りは、さすがタミヤである。
気になるポイントに若干の改修を施して制作
気になった点としては、Aピラーの付け根辺りのドアの切り欠きのラインが全く再現されていないので、他のモールドと併せて、BMCタガネで彫り直した。ボンネットのエアアウトレットも少々頼りない造形だったので、デザインナイフと粗めのペーパーで開口部を拡げ形状を整えている。キットではメッキパーツで再現されているヘッドライトは、目ヂカラのアップを狙って、ジャンクパーツからリフレクターとレンズを流用した。ボディカラーに関しては、当時の画像を検索して、少し暗めの青という印象を元に調色してみたが、思うような色が出せず、結局、クレオスのフタロシアニンブルーが一番印象に近かったため、これをそのまま使用している。キット付属のデカールは残念ながら黄変が酷かったため、Auto Colour製デカールを使用した。また、コクピット計器盤の裏にはコード類を追加している。
幼少の頃から何度となく模型店で見かけて憧れた青いセリカは、40年の時を経てようやく僕の手元にカタチを成した。たかがプラモデルと言われるかもしれないが、ちょっとした感慨に耽っている。60代半ばを迎えた今でも32Zに乗るクルマ好きの叔父にこのセリカを見せて、久しぶりにクルマの話をしようかな。
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