【国内試乗】「BMW アルピナB8グランクーペ」日常性と非日常性を兼ね備えたラグジュアリースポーツの極み!

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エクスクルーシブなBMWを手がけるアルピナの新型モデル、B8グランクーペが国内に上陸した。スポーティな走りと優れた快適性を両立させた贅沢なモデルに仕上がっていた。

BMWとアルピナの揺るぎない信頼関係

BMWとアルピナの関係は、スペシャルバッジを冠する他のブランドとは異なる。Mはもちろん、AMGやアウディスポーツもメーカー直系のサブブランドとして位置づけられている。アルピナは、1965年の創立後こそレーシングチューナーとして活動していた。だが、1983年からはドイツ連邦共和国から認定を得た独立した自動車メーカーなのだ。
とはいえ、BMWとアルピナには揺るぎない信頼関係が構築されている。例えば、BMWが新モデルを発表してからアルピナがそれをベースに開発を始めるわけではない。BMWとアルピナの新モデル開発は同時進行であり、データにもアクセスできるはずだ。それこそ、XD4のベースとなるX4のマイナーチェンジが本国で発表されたのは2021年6月。直後にはXD4もマイナーチェンジを発表し、日本におけるX4の新モデル投入発表に先行したほどだ。
信頼関係の構築という意味で、Mとの立ち位置の違いも見逃せない。エンジン開発では、モデルごとの最高出力でアルピナがMを超えることはない。さらに、このページで紹介する8シリーズベースのB8からは、B6時代のようなクーペとカブリオレはラインナップから除かれ4ドアのグランクーペだけになった。クーペとカブリオレは、MおよびBMWに任せるという配慮といえそうだ。

M850iが積む4.4LのV型8気筒エンジンをアルピナが専用チューニング。Vバンクの間に収める2基のターボチャージャーはタービンの大型化により高い過給圧の供給が可能となる。

むしろ、アルピナの立ち位置には4ドアの方が似合う。B8に限らず、アルピナは日常的な場面で洗練度の高い走りを提供することを重視しているからだ。M850iが積む4.4LのV型8気筒ツインターボエンジンをベースに、冷却系を最適化しターボチャージャーを大型化することなどにより、最大トルクは800Nmに到達。M8が積むエンジンと比べても、50Nm上乗せされているのだ。

アルピナが提供するレザー・ワークショップによりインテリアをオーダーメイドで仕立てに。センターコンソールのコントローラーにはアルピナのエンブレムが刻まれる。グランクーペはフル4シーターとしての室内スペースを確保。

そのため、圧倒的なトルクの余裕を活用し、アクセルペダルに足を乗せる程度の踏み加減でも周囲の流れに先行できる。気づけば、60km/hで8速ATはDレンジで7速までシフトアップを済ませている。そのまま緩めなら上り勾配にさしかかってもシフトダウンはされず、アクセルを少し踏み足すだけでメーターにトルクを表示すると600Nmを確保している。
なおかつ、B8は力強さを際立たせるような演出はしてない。それだけに、滑らかで静かでしかも速い。開きすぎた先行車との車間を調整、高速道路で流れの速い追い越し車線に移る、そうした日常的な一瞬の場面で快感を覚えるような加速が提供される。

究極の二面性こそがアルピナ・マジックの本質

ただ、静粛性がアルピナのフラッグシップとなるB7の域に達しただけに、ロードノイズのマスキングに影響がおよぶことがある。路面の舗装骨材が見えるようなザラつきを通過すると、タイヤがゴーッというノイズを発してしまう。場面は限定されるものの、B8に認められる唯一の改善課題だ。
ちなみに、望めば走行モードをスポーツにしてアクセルを踏み込めば、ボリュームは控えめながらエンジン音に低周波の鼓動を重ねてくる。適度な刺激とともに、Dレンジ6400rpmでシフトアップ。一瞬の出来事であり、速度にして2速ならちょうど100km/h。あるいは、高速道路の合流車線から音もなく空気の壁を裂き、矢のように差し込んでくるB8を目撃した方がいるかもしれない。
サスペンションも、日常的な場面で洗練度の高さが実感できる設定となる。低く構えた前傾姿勢となることがアルピナの特長でありB8もそうだが、実は車高を比べるとM850iよりも高い。それは、タイヤの外径を1インチ拡大しているからだ。しかも、フロントよりもリアはより大きい。

タイヤはM850iと比べ1インチ(25mm)大径となる。その分だけフェンダーとタイヤのクリアランスが埋まるので低く見える。アルピナの特長としてB8も同様に前傾姿勢となるも特長だ。

そのため、フェンダーとタイヤの隙間が少なく低く構えているように見える。つまり、サスペンションをローダウンしているわけではなく、十分なストロークを確保することが可能なため、路面を問わずしなやかな乗り心地が提供され快適さを際立たせる。
4輪操舵のインテグレイテッドアクティブステアリングを組み合わせるので、高速道路のレーンチェンジでは旋回というよりも平行移動するような挙動となるが不自然さとは無縁だ。レーンチェンジを終える際は、B8が自立的に直進に収めてくれる感覚さえ抱く。

空気抵抗を増やすことなく揚力を抑える専用デザインのエアロダイナミクスパーツを装備。4本出し楕円マフラーはアルピナの象徴でもある。

直進状態ではステアリングの手応えが中立で落ち着き、さらに速域を上げても安定感を維持しそうな予感がある。B8の最高速度は324km/hと発表されているが、この数値は巡航時であり、安心してコーナリングやレーンチェンジできることを前提としているあたりもアルピナらしい。

20本スポークのクラシックホイールはアルピナ伝統のデザインで軽量高剛性なアルミ鍛造製。ブレーキはブレンボ製を採用する。

コーナーが連続する場面に移っても、洗練度の高さはそのままに保たれる。ステアリングの切れ味がスッキリと軽めであり、低速コーナーへの進入時は操作に対して長いノーズがスイッという感じで向きを変える。リアタイヤが逆位相で操舵されることに加え、前傾姿勢によりフロントの荷重を稼ぎやすいことも効いている。
中速以上のコーナーでは、操縦性と安定性を高次元でバランスさせる。B8では試していないが、同じエンジンを積む重心が高いB5で富士スピードウェイをホンキで攻めたことがあるが、まったく不安を感じない。日常的な場面を重視していても、サーキットのような非日常も得意なステージとなる。それは、B8でも変わりがないと断言しておこう。
たとえば、B8をサーキットで走らせ超高速域を体験。帰路、高揚した気持ち洗練度の高い走りとラグジュアリーなインテリアが癒す。そんな乗りこなしができることも、アルピナならではの魅力だ。

【specification】BMWアルピナB8グランクーペ・オールラッド
■車両本体価格(税込)=25,570,000円
■全長×全幅×全高=5090×1930×1430mm
■ホイールベース=3025mm
■トレッド=前1625、後1665mm
■車両重量=2140kg
■エンジン型式/種類=-/V8DOHC24V+ツインターボ
■内径×行程=89.0×88.3mm
■総排気量=4395cc
■圧縮比=10.5
■最高出力=621ps(457kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2000-5000rpm
■燃料タンク容量=68L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前Wウイッシュボーン/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前245/35ZR21(8.5J)後285/30ZR21(10J)
公式ページ https://alpina.co.jp/models/b8/highlights/

フォト:宮越孝政 T.MIyakoshi ルボラン2022年1月号より転載

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萩原秀輝
AUTHOR
2021/12/01 09:00

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