新型WRX S4発売間近、STIギャラリー企画展「What’s Driving?」で感じた新しい風 ~若い世代含め、新しいSTIファンが広がり始めている

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新型WRX S4ティザーと「What’s Driving?」

待ちに待った、新型WRX S4日本仕様が登場する。スバルは2021年9月30日、ホームページで「WRXのDNA、新たなるステージへ。WRX S4 Coming soon」と称し、国内市場向けのティザー映像を公開した。
その中で、当然ながらフロントグリルにSTIロゴがチラッと見えたことで、スバルファンの新型WRX S4に対する期待値が一気に上がっている。こうしたタイミングと合わせるかのように、STI本社(東京都三鷹市)に隣接するSTIギャラリーでは2021年10月2日から新しい企画展「What’s Driving 『ドライビングとは、なんだ』展」が開催されている。

企画展の入口で、STI平岡泰雄社長(写真右)と、STIの岡田貴浩取締役。

開催の前日、STIギャラリーを訪れSTI関係者から、企画の意図について聞いた。対応して頂いたのは、STI(スバルテクニカインターナショナル株式会社)取締役の岡田貴浩氏と、STI広報宣伝部の大澤崇人氏のおふたりだ。また取材中、平岡泰雄社長にもご挨拶し、岡田氏と一緒に大型ボードの前で記念撮影をした。

さて、企画展開催とWRX S4ティザー動画公開のタイミングについてだが、「本来は夏からの開催予定だったが緊急事態宣言によって開催が延期され、宣言解除に合わせた」ということで、結果的に新型WRX S4国内デビューに対するバックアップになったという形に思える。

歴代WRカーの常設展示は健在。

それにしても、なぜ今回はドライビングに的を絞った企画展としてのか?
STIギャラリーは現在に至るまで、2019年に大幅な改装をしている。同年9月には「STIを知る」として初代社長・久世隆一郎氏が歩んだ軌跡をSTI黎明期から追うことで、STIギャラリーの認知度を高めるかたちで第一回企画展を実施した。

トロフィー展示コーナーには、先のスーパーGT300 2021年第五戦でのSUBARU BRZ R&D SPORTの優勝トロフィーが飾られていた。

企画展の効果もあり、2019年のSTIギャラリー来場者は約8000人。そのうち約2割が海外からで、最も多いのがアメリカ、次いで中国で、そのほかに南アフリカなど世界各地からSTIファンが三鷹の「聖地巡業」に訪れた。
続く2020年には、北米向けコンプリートカー「S209」を中心として、同車の開発議事録やプロトタイプ部品などを公開し、STIの開発舞台裏を紹介する「TRY&ERROR 創造の軌跡」とした。コロナ禍となり、来場者数は初年度から半減し、海外からのSTIファンの足も途絶えてしまった。

新たなるSTIファンが増加中

これまでの企画展を通じてSTI側が認識したのは、STIファン層の変化だったという。STIといえば、その原点はWRC(世界ラリー選手権)であることは言うまでもなく、WRCで培われたSTIのモータースポーツに対する情熱と開発思想はスーパーGTとニュルブルクリンク24時間レースへと引き継がれてきた。

ドライビングについて語り合う、Think & Talkの場。

STIファンの多くは、そうしたラリーやレースでの実績から自らもSTIユーザーになってスバルとSTIを応援したいという心意気を持つ。こうしたファンは40代以上の年齢層が主体だ。
一方、最近増えているのがレヴォーグ等で量産車STIスポーツを愛車としている、20代や30代のユーザーで、モータースポーツに直接的な関心がなくとも、彼らにとってはSTIに対する信頼度が高まっているというのだ。例えば、新型レヴォーグが発売されたことで、初代レヴォーグの中古車の販売も好調で、若い世代が初代レヴォーグ用のSTIマフラーを購入する傾向も強まっているという。 

スーパーGT用のパワーユニット。

こうしたSTIを取り巻く市場変化の中、「まだスバルに乗っていない人たちも含めて、STIはお客様に何を提供したいのか?」という命題について、STI関係者が自問自答した。その結果、様々なアトラクションを用いて「ドライビングが趣味、という人たちを増やしたい」という思いを具現化することになったという。
とはいえ、ドライビングといっても、モータースポーツの世界で1000分の1秒を競う極限での精神状態での走りもあるし、日常生活の中でちょっとしたワインディングでクルマを操る愉しさを感じる走りもある。また、安心安全な丁寧な走りも当然重要だ。
そこで、多様なドライビングについて、それを実感し、さらにドライビングについてSTIギャラリーで集う人たちのなかで気軽に語り合える場を提供しようという趣向とした。

プレステのシミュレーターに挑むSTIの岡田貴浩取締役。

具体的には、ハードウエアとして2つの機器を用意した。ひとつは、PlayStation 4用のソフトウエア・グランツーリスモSPORTを用いて、FANATEC Podium racing wheel f1と4Kモニターを連動させたドライビングシュミレーターを設置。その中に、eスポーツのFIA GTCワールドツアーネイションズカップ シドニーで優勝経験のある宮園拓真選手をSTIギャラリーに招き、実際の走行データを画面上のゴースト映像として映し出し、参加者とのバトルを可能とした。ドライビングポジションもスーパーGTマシンを参考とする徹底ぶりだ。

ボール落としゲームで盛り上がっている様子。

もうひとつは、アナログなボール落としゲームだ。ボール落としゲームは、欧米おもちゃメーカーが知育器具として開発した「ラビリンス(迷宮または迷路)ゲーム」が有名だが、それをハンドルで左右、アクセルペダルで上下をコントロールする大型器具としてSTIが独自開発した。
また、ハンドル操作は、初期応答性が緩めとシビアの2段階から選べる仕組みとしてドライビングの実感を高める効果を狙っている。実際に操作したが、確かに実車をコントロールしている時の感覚に近い。

ニュルブルクリンクのコース図に宮園選手らの自筆コメント。

そのほか、大型パネルとしてニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ(北コース)が描かれており、各コーナーでの攻略法について宮園選手の自筆コメントと、STIニュルブルクリンク24時間チーム関係者による実車による攻略法のコメントも書かれている。

質問票「あなたにとってドライビングとは、なんですか?」

さらに、来場者自身が「あなたにとってドライビングとは、なんですか?」という質問票に自分の考えを書き、それをボードに張り出すことができる。こうした様々な工夫の中で、Think & Talkの場を設け、ドライビング談義を愉しむことができる。

ドライビングについて、STI関係者と来場者が自身の考えを公開するパネル。

都合1時間半ほどのSTIギャラリー滞在だったが、昨年の第二回企画展と同様、とても居心地良い空間だと感じた。
新型WRX S4の購入を考えている方はもちろんのこと、スバル各モデルにいまお乗りの方、または過去にスバル車に乗っていたことがある方、そしていつかスバル車に乗ってみようと思っている方、それぞれの感覚で自身のドライビングについて、STIギャラリーという場でちょっと考える時間を持ってみてはいかがだろうか。

この記事を書いた人

桃田健史

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

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桃田健史
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2021/10/03 12:00

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