このところ積極的にBEVを導入しているメルセデスが、第3のモデルとしてリリースしたのがこのEQAだ。激戦区ともいえるコンパクトSUVのBEVのなかで、果たしてEQAの優位性はどこにあるのか? まずはプロトタイプのインプレッションをお届けしよう。
アウトバーンでは重厚で快適な乗り心地を実感
メルセデス・ベンツEQAは、モデル名が示すようにAクラスのBEVバージョンだが、そのスタイルはクロスオーバーSUVである。エクステリアを見ると、フロントこそEQCのようなメルセデス・ベンツ EQファミリー似だが、プロポーションはベースになったGLAに近いものだ。
サイズは全長4463×全幅1849×全高1620mmで、ホイールベースは2729mm。GLAよりはひと回り大きく、同じカテゴリーでは間もなくドイツで発売されるフォルクスワーゲンID.4に近い。
メルセデス・ベンツのデザイナーはこのEQAで空力特性の向上に特に力を注いだとのことだが、これはもちろん空気抵抗を減らして航続距離を伸ばすのが最も大きな狙いである。その結果、前面投影面積は2.47m2、Cd値は0.28を実現している。この空力改善の要素は、ほぼ完全に塞がれたフロントエンドとアンダーフロア、さらにエアロデザインの専用ホイールなどが挙げられる。
パワートレインは、フロントに搭載された140kW(190ps)と375Nmの出力を持った電気モーターで前輪を駆動。0→100km/h加速は8.9秒、最高速度はリミッターで160km/hに留まる。この性能をもたらす電池エネルギー容量は、ネットで66.5kWh、NEDCサイクルによる電費(コンバイン)は15.7kWh/100km、航続距離は486kmと発表されている。また、充電時間はウォールボックスあるいは公共充電器では5時間45分、DC充電では30分で80%まで充電が可能である。
EQA250のベースモデルは日本円で約600万円と非常に政治的な価格である。と言うのは税引きで約500万円と、ドイツ政府のインセンティブ(補助金)約75万円、そして製造者のメルセデス・ベンツから支給される約35万円を取得できるギリギリの約500万円を下回っているのだ。この結果、EQA250はドイツでは約485万円と、ガソリン仕様のGLA250 4マチックとほぼ同じ価格で購入可能となる。
今回、我々はバーチャルデビュー、リモート発表会にも参加したが、発売前のプロトタイプ試乗の機会にも恵まれた。こちらは発表前から公道テストに使用されていた量産試作車で、前後に軽いカムフラージュが与えられていた。
ドライビングポジションはGLA同様にやや高めで、全長に加えオーバーハングも短いので街中での取り回しは非常に楽だ。さらにEV独特の素早い加速とスポーティなダイレクトフィールを持つステアリングで、街中を機敏に動き回れる。ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」が用意されているが、スポーツを選んでも180psの出力に対して、車重は軽く2トンを超えているので加速感は通常のEVに比べると大人しい。一方、ステアリングホイール背後のパドルでブレーキの回生力を5段階に調整することができ、最強では街中で、ほぼワンペダル・ドライブが可能だった。
気になったのはセッティングが快適志向で、しかも車重がかさむので、やや大きめな凸凹のある路面を通過するとボディが揺すられること。しかしこれは量産モデルでは解決されるだろう。
一方、アウトバーンでは低重心のおかげでコンパクトセグメントとは思えない重厚で快適な乗り心地を提供してくれた。
メルセデスはこのEQA250の他に、前後アクスルにそれぞれ電気モーターを配してシステム出力を200kW、4WDとしたパフォーマンス・バージョン、そして航続距離を500kmまで延長させたロングディスタント・バージョンも予定しているという。
【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツEQA
■全長×全幅×全高=4463×1834×1620mm
■ホイールベース=2729mm
■トレッド=(前)1585、(後)1584mm
■車両重量=2040kg
■モーター種類=交流同期電動機
■最高出力=192ps(140kW)/-rpm
■最大トルク=375Nm(38.2kg-m)/-rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=66.5kWh
■航続距離(WLTP)=426.0km
■サスペンション形式=(前)ストラット/コイル、(後)後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=(前)Vディスク、(後)ディスク
■タイヤ(ホイール)=(前後)235/55R18(7.5J)
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