トヨタ・リサーチ・インスティテュートがプロドライバーの熟練スキルを取り入れた高度な制御アルゴリズムの開発へ
トヨタが2016年にカリフォルニアに設立した人工知能技術に関する先端研究所「トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)」はこのほど、スタンフォード大学のダイナミックデザインラボと協力。自動運転技術にプロのドリフトドライバーのスキルを組み合わせる研究を進めていることを明らかにした。
この研究は、プロドライバーの運転スキルと自動運転技術をどのように組み合わせるかというもので、目標は新しいレベルのアクティブセーフティ技術を設計してそれを広く共有することで、トヨタや他の自動車メーカーが一般道で役立つものとして展開できるようにすることだ。
TRIのギル・プラットCEO兼チーフサイエンティストは、次のように述べている。
「毎日多くのドライバーが、衝突を回避するために超人的なスキルを必要とする致命的な衝突事故に遭遇しています。そんな場面でドライバーはしばしば、衝突を回避するために自分の能力超えた操作を迫られます。このプロジェクトを通じて、我々TRIは最も熟練したプロドライバーから学び、人間の運転能力を増幅させ、人々の安全を守る高度な制御アルゴリズムを開発します。これはトヨタ・ガーディアン(ドライバーをサポートするガーディアンと位置づける自動運転の考え方)の本質です」
毎年、自動車事故により米国では約4万人が、世界中で約125万人が命を落としている。トヨタの目標は、その数をゼロにすること。ほとんどの衝突事故はありふれた状況で発生するが、他の状況ではドライバーは車両を通常の取り扱い制限に近づけたり、時には超えたりする操作を行なう必要がある。たとえば、濡れた路面や滑りやすい路面に直面した場合、プロのドライバーは巧みな操作で「ドリフト」させることが選択でき、これで事故を回避することができる。
今回の研究に協力しているスタンフォード大学のダイナミックデザインラボのクリス・ガーデス教授は、このようにコメントしている。
「2008年以来、私たちの研究室は、自動運転車が最も困難な緊急事態に対処できるようにするアルゴリズムの設計において、プロのレーシングドライバーからインスピレーションを得ています。この調査を通じて得たアイディアは、私たちが道路上の命を救う可能性を高めるものとなるでしょう」
TRIは、ダイナミックデザインラボの研究を長年にわたってサポートしてきた。現在のプロジェクトは、スタンフォード大学が発表した論文「Opening New Dimensions:Vehicle Motion Planning and Control using Brakes while Drifting」を利用しており、スタンフォード大学の研究者は、電動化された自動デロリアンであるMARTYで高度なドリフトを実証。ブレーキ、ステアリング、推進力を使用してドリフト中の後輪駆動車を制御できる概念実証アーキテクチャーを生み出した。TRIは現在このアーキテクチャーを、GRスープラを含む車両プラットフォームに適用させている。
TRIはまた、モータースポーツと高度な開発におけるトヨタのエンジニアリングの専門知識を活用している。米国のトヨタ・レーシング・ディベロップメント(TRD U.S.A.,Inc.)は、モータースポーツとドリフトに関する貴重な技術的および経験的ノウハウを提供。また、これとは別にTRIは、日本を拠点とするトヨタ自動車のビークルダイナミクスコントロールチームとも協力して、将来のトヨタ車にドリフトアーキテクチャーを適用している。
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