個性と走りを重視した、RVRとアウトランダーの中間に位置するクーペSUV!
2017年にグローバルで発売された三菱エクリプス・クロスがマイナーチェンジ。前後オーバーハングを+140mmと拡大しつつデザインを改め、これまで設定されていなかったPHEVモデルを設定。今回はそのPHEVに試乗することができた。
改めてプロフィールを確認しておくと、三菱はRVR(左)とアウトランダー(右)というSUVをラインナップしており、エクリプス・クロスはその中間に位置。自らクーペSUVを名乗る、”個性と走りを重視したモデル”となっている。
また三菱は1936年のPX33で自社初の4WDプロトタイプを発表。1987年の6代目ギャランVR-4で4WD、4WS、ABSを統合したAWCとなり、2007年のランサー・エボリューションX(10)でS-AWCに進化。以後もその研究開発を続けているため4WDには長年のノウハウを持ち、1982年の初代三菱パジェロ以来、SUV(当時はRV)に関しても経験豊富だ。
そうしたヘリテージ(S-AWC、SUV)とチャレンジ(クーペSUV)を組み合わせたのがエクリプス・クロスというクルマ。また2009年のi-MiEV、2013年のアウトランダーPHEVと続いたEV技術も強みとしており、今回のエクリプス・クロスPHEVが、いかに彼らの現在持つ全てを投入したモデルかがわかるだろう。
では先に乗った印象からお伝えしよう。今回は市街地と山道で試したが、エンジンがかかる場面は上りでアクセルを強く踏み込んだ時くらいで、他は終始『EV走行モード』でジェントルな雰囲気。静寂な室内では、力が入っているというオーディオもよさも際立った。ちなみモードはエンジンで発電し電力で駆動する『シリーズ走行モード』、モーターがアシストしエンジンの動力で走行する『パラレル走行モード』の3パターンとなる。
アクセルに対するクルマの動きは実に自然で、EVの違和感はほとんどない。ドライブモードは『ノーマル』、『スノー』、『グラベル』、『ターマック』からなり、PHEVのみの設定となるターマックでは旋回性能が一気に高まり、回生ブレーキが一番強い”B5″では、下りであってもワンペダルで走ることができた。床下にバッテリーを置く重心の低さにも由来する旋回性能の高さは、アウトランダーPHEVでも感じた美点であり、走っていて素直に楽しいと思える部分。走りを重視したと自らが語るだけのことはある。それにしてもグラベルにターマックとは、三菱=ラリーのイメージがまだまだ強いことを感じさせた。
試乗後、開発の方々に話を伺うと、エクリプス・クロスの姿がより鮮明となった。アウトランダーPHEVは当初2リッターを組み合わせていたが、発電が追いつかないため、2.4リッターに拡大。トルクに余裕ができ、自然な走りが可能になったという。そんなアウトランダーとの差別化は、ハンドリング性能。すぐに反応する気持ちよさなどを追求したそうだ。
両車ともPHEVは前後にモーターを置くのだが、それを制御するのがS-AWC。ランエボでも開発を担当したエンジニアが継続開発を行っており、しかもランエボと違いギアが存在せず前後左右のトルク配分をコンピューターだけで制御するため、理想とするところに一歩近づいたというのだ。しかも、現在あるリソースではやり切ったという達成感がある一方で、もしこれでエボリューションを作ったらどうなるかという未来を見たコメントも聞かれ、既に三菱は4モーターの『MI-TECHコンセプト』(下写真)を2019年の東京モーターショーで出展していることから、さらに上を目指しているのは明らかだ。
訊けば、顧客から見た三菱はまだまだラリーや質実剛健というイメージが強いそうだが、少なくとも技術に関しては骨太の剛健さを感じた。しかしデザインや乗り味など感性の領域においては、アドバンテージを有しているとは申し訳ないが思えない。もちろん前後オーバーハングの拡大で荷室が拡大していたり、乗り降りのしやすさを考えていたり、このPHEVで一般家庭10日分の電力を賄えるなど長所はたくさんあり、やっぱり三菱は真面目なメーカーだなぁと改めて感心した(蛇足ながら、筆者の実家はギャラン、ギャラン・シグマを乗り継いだ、三菱育ちである)。
実は試乗の終盤、山道の下りで、峠へ勇んで向かうトヨタ86とホンダ・シビック・タイプRとすれ違った。そこでふとこのエクリプス・クロスは、ランエボを卒業したけど、走りを忘れていない大人向けのクルマなのだと感じた。ユーティリティに優れ、見た目はファミリーカーにも見えるけど、ターマック・モードにすれば気分はランエボ! といった具合に。現代のクルマとしては十分にお勧めできるので、デザインが気に入れば、迷わなくていい1台と言えそうだ。
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