「ブガッティ・ボリード」は1850ps/1850Nmを発揮する8L W16クワッドターボを搭載。乾燥重量を1240kgに抑え0.67kg/psという驚異的パワーウエイトレシオを実現する技術コンセプト
ブガッティ・オートモビルはこのほど、サーキットトラックでのパフォーマンスに焦点をあてたハイパースポーツカー「Bolide(ボリード)」を発表した。なお、現段階ではコンセプトモデルのため、量産されるかどうかは決まっていない。
このモデルは最速かつ最軽量を目指したテクニカルコンセプト。車両重量わずか1240kg(乾燥重量)のボディに、最高出力1850ps/7000rpm、最大トルク1850Nm/2000-7025rpmを発揮する8L W型16気筒クワッドターボエンジンを搭載。パワーウエイトレシオは0.67kg/psを実現している。
7速DCT(DSG)を組み合わせて四輪を駆動するその加速性能は、2.17秒の0-100km/h加速、4.36秒の0-200km/h加速、7.37秒の0-300km/h加速をマーク。卓越したハンドリング性能と俊敏性を損なうことなく最高速は500km/hをはるか超え、F1マシンと同等のパフォーマンスを発揮する。ちなみにル・マン24時間レースが行なわれるフランス・サルトサーキット(全長13.626km)では3分7秒1、ドイツ・ニュルブルクリンク北コース(全長20.832km)では5分23秒1のラップタイムを記録。横方向の最大加速度は2.8Gにおよぶ。
ボリードについて、同社のステファン・ヴィンケルマン社長は次のように述べている。
「私たちは強力なW16エンジンを、4つのホイール、ギアボックス、ステアリングホイール、そしてふたつのシートを備えた、最も純粋な形でブランドの技術的シンボルを実現する方法を自問しました。もっとも重視したのはウエイト・トゥ・パワーレシオに関する制限なしに、パワートレインをチューニングすることでした。これによって誕生したボリードは、妥協のない実験であり、サラブレッドであり、その野蛮的な独占性において、何よりも高性能で軽量、そしてまったく新しい次元でのドライビングエクスペリエンスで感銘をもたらします。ボリードをドライブすることは(車名が意味する「火球」のごとく)大砲に乗るようなものです」
1240kgの車両重量を実現するために、使用する材料はもちろん製造行程にいたるまで、あらゆる検討が重ねられた。モノコックやフロントエンドパネル、アンダーボディはカーボン製の軽量タイプを採用。さらに使用するビスやボルトなどの結合パーツはすべてチタン製。さらにさまざまな箇所に航空宇宙用チタンで作られた中空肉薄のパーツが用いられた。このパーツは3Dプリンターで製造されており、薄さ0.5mmを実現する一方で、1平方mmあたり1250ニュートンの引張強度を誇る。
ボディのエアロダイナミクス性能の追求も徹底している。ルーフの可変エアスクープは速度域に応じてアクティブにエアフローを最適化する。低速ではスクープの表面は滑らかだが、高速ではバブルフィールドが膨張し、スクープの空気抵抗が10%、ドラッグが17%減少する。前後ウイングのエアフローも最適化され、車速320km/hでのダウンフォース量はフロントで800kg、リヤで1800kgにおよぶ。
ボディサイズは全長4756×全幅1998×全高995mm、ホイールベースは2750mm。フロントウインドーを低く抑えることによって実現した995mmの全高は、シロンより約300mm低く、同社の歴史的な名車である「タイプ35」と同じだ。
スタイリングは空力を追求したF1マシンに近い。現代のブガッティのなかでもっとも挑発的なプロポーションを実現したとのことで、“デザインは性能についてくる”というブガッティのデザインポリシーを具現化している。このスタリングは、まさに技術によって生み出された形なのだが、航空史に登場する「Xプレーン」を思わせるデザイン要素も採用。これは1947年に米国空軍大尉のチャック・イェーガーの操縦でマッハ1.06を記録し、初めて音速の壁を破ったロケット実験機「ベルX-1」を彷彿とさせるもので、Xのシグネチャー「X-periment」が前後ライトに用いられている。
ドライバーは、ル・マン24時間レースに出場するLMP1レーシングマシンのように斜め上方に開くドアを開け、70mmほどのシルに一旦腰掛けて足からコックピットに収まる。一見タイトだが、身長2mまでのドライバーに対応しているという。
コックピットに収まったドライバーは、目の前にあるモータースポーツディスプレイで、車両の各種情報が取得できる。ペダルと助手席フットレストは150mm可動するので、最適な着座位置を得ることは難しくない。
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