いまやSUVでも珍しい、そのアイコニックな外観が根強い支持を集めているラングラー。しかし生粋のマニアならご存じの通り、このモデルの出で立ちは決して“飾り”の類ではない。現代的にアップデートされつつ、そこには伝統の銘柄らしい機能が惜しみなく投入されているのだ。
進化しつつも守られるオフローダーのセオリー
ジープを知らない人には、最新のラングラーJLと先代のJKを判別するのは随分難しいことのようだ。確かに頑なにそのカタチと機能を継承し続けた結果、誰が見てもジープだというDNAが不朽のアイコンとなっているのは事実。JLではグリルとフードのなす角度のスムーズ化やウインドシールドの後傾化、さらにはフロントバンパーとグリル下、およびフェンダーとの隙間を詰めるなど、カタチの一貫性を守りつつも空力の勘所はよく詰められている。
ラングラーは、そのカタチを守りつつも中身はちゃんと進化を続けてきたから生き残ってきたのだ。たとえばエンジンフード、ウインドシールドフレーム、フェンダー、ドア外板はアルミだし、これまたアルミ製テールゲートのインナーはマグネシウム合金。依然採用し続けるラダーフレームだって高度なテーラードブランクで、強度・剛性が最適化されている。昔ながらの構造と見えて、実は最新仕様というあたり泣かせる。ボディサイズは2ドアも4ドアもJKよりも幾分大きくなっているが、重量はJLの方が軽く仕上がっているのは言うまでもない。
アンダーボディも空力を意識したカバーアップも見られるが、そこはジープ、きちんとガード類はスキッドプレートとして作られている。ハードコア仕様のルビコンに至ってはお飾りではないスキッドレイルすら備わる。
サスペンションは、前後とも5リンク式コイル/リジッド。形式としてはコイルリジッド式ジープの先鞭を付けたTJ以来のものだが、JK、JLと世代を追うごとにビーフアップ。つまりブラケット、ブッシング、コントロールアームが頑強なものへと進化した。これは、市場ニーズから標準装着タイヤが大径化されてきたことに対する操縦安定性対策でもある。
前後リジッドのアクスルだが、これもアップデートされている。呼称こそデーナ30(前)と35(後)、ルビコンだと前後デーナ44と昔ながらで変わらないが、各所に設計や部材の変更がありアクスルの強度・剛性がアップしている。とりわけ、サスとつながるブラケットまわりにひと目でわかる強靱化が計られた。またリング&ピニオンも新設計の小径で高強度なものとされ、軽量化や慣性低減、さらには最低地上高アップに役立っている。なお、アフターマーケットのデフはサイズ互換性の問題があるので乗り換え組は要注意。
パワートレインでは8速ATが優れもの。これはクライスラー内製だが基本的にZFの8HPと同じもの。ジープ用のものはクラッチ容量が強化されていたり、オイルパンがオフロード向きな鉄製とされてサバイバビリティが高められている。機能的には誰もが知るとおり、人手では到底真似できぬシフトスピードとワイドなステップ比による余裕の駆動力を誇る。
2速トランスファーはルビコン用がローレンジ4.0対1という市販車で最もローギアードなもの。また日本仕様では標準のセレックトラック・トランファーボックスはアップグレードされ、いわゆるフルタイムモードが用意された。これは昔のオープンデフ内蔵方式でなく、電制クラッチでフロントドライブを断続するもの。この方式のメリットは2WDと4WDを自動で切り替えるお任せ運転、またドライなオンロードでもそのまま使えること。もちろん、従来通りのパートタイム4WDモードも残され使い分けることができる。
さらに前述のフロントアクスルに設けられたセンターディスコネクト装置と相まって、2WD走行時の回転部分を減らし(プロペラシャフトやリング&ピニオンが切り離せる)走行抵抗を低減。つまりより2WDのメリットを活用しつつ、フルタイム並みの安定性と使い勝手を両立しているのだ。
日本仕様のエンジンは、3.6L自然吸気のV6ペンタスターと2L直4ターボのハリケーン。直4ターボは、いまどきのニューカマーらしく大トルクとダウンスピーディングが特徴で実用性能が高い。オフロードでは自然吸気V6の各ギアでの伸びの良さが威力を発揮。とはいえ、優秀な8速ATを使う限りトルク特性の差は問題ではないので、新世代の2Lを拒む理由はない。ところで、ハリケーンという呼び名は初期のCJに搭載されていたものにちなんだもの。由緒あるペットネームをもらっているだけで、なんだか良いエンジンかなと思うから不思議だ。
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FCAジャパン 0120-712-812
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