新型コロナウイルスの影響は否めないが中国市場は復活の兆し。欧州も6-7月は回復傾向に
2008年のリーマンショック、2010年からしばらく続いた欧州経済危機(欧州金融危機)など、ここ20年の間に欧州の自動車メーカーはいくつかの経済危機を乗り越えてきた。今回の新型コロナウイルス蔓延(COVID-19)も欧州主要都市のロックダウン(都市封鎖)や各国間の往来制限など、移動の自由を制限しなければならないという点で、自動車産業に大きな影響をおよぼした。
メーカーはクルマを生産できず、ユーザーはクルマを買えないという前代未聞の状況が3カ月以上続いたわけだが、その影響は欧州メーカー各社の上半期(1-6月)の決算業績にも色濃く反映されている。業績の数字は別表の通りだが、最大手のフォルクスワーゲン・グループ(VW)は売上高は23.2%減ながら、営業利益は15億ユーロに迫る赤字、純利益は10億ユーロ(約1200億円)を超える赤字となっている。
売上高に関してはフランス勢の落ち込みが大きく、これは販売台数の減少と比例している。ドイツ勢も2ケタ減ながら、販売台数の減少に対して売上減を10%程度に抑えたBMWグループは健闘していると見ていいだろう。営業利益およびEBIT(利払い・税引き前利益)は6社のうち4社が赤字となり、なんとか黒字を確保したBMWとPSAグループも70-80%の大幅減となっている。
純利益もBMWとPSAは大幅減ながら黒字を確保。BMWは4-6月の3カ月決算では赤字ながら、それ以前の利益や金融部門の好調により上半期の赤字化を回避した形だ。PSAは6月にやや販売台数が回復し、中東やユーラシア(ロシア含む)での販売が横ばいを保ったことで利益を確保できたようだ。一方でルノーは純利益の赤字額が72億9000万ユーロ(約9000億円)と半期としては過去最大の損失となる。ルノーは2019年通期(1-12月)も1億ユーロの赤字となっており、アライアンスを組む日産の業績悪化の影響が小さくないとはいえ、何らかの手を打つ必要がありそうだ。
厳しい数字が並んだ上半期の業績だが、一方で欧州ではロックダウン解除以降の6月には需要が回復しつつあり、その傾向は7月も続いている。日本円にして100億円を超える赤字を計上したボルボ・カーズだが、6月には販売も回復軌道に乗り、7月は早くも欧州で前年同期比12.5%増、中国で14.0%増、グローバルで14.2%増と2ケタ増へと回復している。ドイツ国内の新車販売台数も2019年のレベルにはまだ届かないものの、6月、7月と急回復しており、7月は前年同期比5.4%減まで戻している(5月は49.5%減、6月は32.3%減)。
こんな状況とはいえ各社とも電動化や自動運転技術への投資増は避けられず、下半期(7-12月)でどこまで業績回復を図れるか見通しにくいが、巨大マーケットの中国市場は2020年4月に前年同期比プラスに転じて以降、5月、6月と2カ月連続の2ケタ増で需要が回復しており、これは欧州メーカーにとって強い追い風となる。まずは10-11月に公表される第3四半期決算でどこまで赤字を圧縮できるかがポイントとなるが、各社がどんな回復策を打ち出してくるのか興味深いところ。そこに注目するとともに朗報を待つとしよう。