ホンダの軽商用バンである「N-VAN」にフル電動モデルである「e:」が追加された。発売は今年の10月10日となっているがその市販プロトタイプにひと足先に試乗できたのでその第一印象をお届けしよう。
電動化が軽商用車の最適解となるか?
ホンダが2018年に発売した軽商用バンであるN‐VANにも、この度BEVモデルである「e:」が追加された。ピラーレス構造と運転席以外がフルフラットになる独自のシート構造で、本来の商用にとどまらず、ホビーユースでも人気を集めていた本車だが、電動化で何が進化したのだろうか。
ラインナップは4人乗り仕様の「FUN(写真)」と「L4」、更に1人乗り仕様の「G」とタンデム2人乗り仕様の「L2」の4種類を展開。なおGとL2は法人向けリース専用の予定だ。
一番の変化は走行性能だ。重量物であるバッテリーを床下に積むBEVは、エンジン車に比べ低重心化による安定感を生むが、背が高く、幅の狭い軽商用車において、それは最も顕著に感じられた。今回の試乗はホンダ社内の一般道を模したテストコースにて行なわれたが、コーナリングや段差を超えた時のダンピングなど、全てが1クラス上の質感を備えていた。さらにモーターらしいパワフルな加速も健在で、高速道路の合流など軽では若干気を遣う場面でも心配はいらないだろう。気になる航続距離も、このクラスとしては長めの245km(WLTC)を確保しているのも嬉しいところだ。
充電は200Vの普通充電と急速充電(CHAdeMO)に対応し、どちらの給電口もフロントパネル部に設けられている。別売りの外部給電器を使用すれば、出先でもAC100V電源を使用できる。
しかしながら、このクルマが本領を発揮するのは、やはり本業の商用分野であろう。世間的には航続距離と充電時間がネックといわれているBEVだが、商用車、特に配達など行なう小型トラックや軽バンの分野では、相性がいいとされている。毎日決まった時間に、決まったエリアを走り、イレギュラーが少ないので、走行距離の変動が少なく、バッテリーのマネジメントがしやすいからだ。
「移動給電コンテナ」をコンセプトにデザインされたという、直線基調のシンプルなインテリア。ホンダの軽自動車としては初となるボタン式バイワイヤシフトを採用。シート生地にはジャージ素材を使用している。
それを見越してか、このN‐VAN e:は一般的な4座モデルにとどまらず、運転席のみの1座、そして運転席とその後部座席のみを備えたタンデム2座モデルが用意される。これらのモデルはひとまずのところ商用リース限定のモデルとなるが、ビジネスにホビーに幅広く使えるN‐VAN e:は、BEVの可能性をさらに広げてくれそうだ。
N-VANの大きな特徴である運転席以外をフルフラットにできる仕様も健在。フロア高は540mmとエンジン車モデル比で+15mmにとどまり、室内空間への影響はほぼないと言っていい。
【Specification】HONDA N-VAN e: FUN
■車両本体価格(税込) ¥2,919,400
■全長×全幅×全高=3395×1475×1960mm
■ホイールベース=2520mm
■トレッド=前:1310、後:1315mm
■車両重量=1140kg
■モーター形式/種類=MCF7/交流同期電動機
■モーター最高出力=64ps(47kW)
■モーター最大トルク=162Nm(16.5kg-m)
■バッテリー容量=29.6kWh
■一充電走行距離(WLTC)=245km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:トーションバー/コイル
■ブレーキ=前:ディスク、後:ドラム
■タイヤ=前後:140/80R13
問い合わせ先=本田技研工業 TEL0120-112-010