今年5月28日、新型ポルシェ911(タイプ992-II)が世界初公開された。注目は、911初のハイブリッドモデルが導入されたこと。7月初頭、スペイン・マラガで開催された国際試乗会で新型「カレラ」と「GTS」モデルの実力を試してきた。
新型911カレラは内燃エンジンのまま
このブルーの新型を見て、何かがなくなっていることに気づいたのなら、かなりの911通。答えは前期型ではエアインテークの上部に配されていたLEDドライビングライトがなくなったこと。その機能は新しくなったマトリクスLEDヘッドライトに吸収されている。エアインテーク内に横桟が2本走る、すっきりしたのが新しい「カレラ」の顔だ。
スタンダードなカレラはハイブリッドではなく、内燃エンジンモデルである。3L水平対向6気筒ツインターボエンジンには改良が加えられ、出力は9psアップの394ps、最大トルクは450Nmと変更なし。スペックだけを見るとほとんど変わりがないようにも思える。
試乗の出発地点であるホテルで最初に割当られたのはカレラカブリオレだった。インテリアのデザインは前期型とほぼ変わらない。シートに腰掛けると、前期型ではメーターパネルの中央に残されていたアナログメーターがなくなりフルデジタルメーターになっている。前期型では伝統の5連メーターの表示にすると左右の端にあるメーターがステアリングにけられる欠点があったが、それが解消された。また911ではスマートキーが標準になった前期型でもキーのかわりにノブをひねってエンジンを始動する伝統的な儀式が踏襲されてきたが、一般的なスタート/ストップボタン式になった。ハイブリッド化とともにデジタルへの転換期を迎えたようだ。
911としては初のスタートボタンは押すと、あたり前だが瞬時にエンジンが目覚める。動き出してすぐに、アクセルペダルの操作に対してエンジンのツキがいいと感じた。上り坂をゆっくりと、いまにも止まりそうな速度で進む日常的なシーンでもPDKがギクシャクすることもない。実はこの試乗会に参加するにあたって事前に前期型のカレラカブリオレに試乗したこともあり、その違いをはっきりと体感できた。マラガ郊外の山岳路でも軽快に走る。ウインドーディフレクターがいい仕事をしていて、後ろから風の巻き込みもほとんどない。
ポルシェのスポーツカーの試乗会には、サーキット走行が不可欠。ナビゲーションの目的地は会員制サーキットとして名高いアスカリレースリゾート。全長約5・5kmの本格コースだ。 ここではカレラクーペを試す。スポーツプラスモードに入れてアクセルを全開。
レッドゾーンの7500rpmまで淀みなくきっちり吹け上がる。絶対的な速さではもちろんGTSに敵わないものの、軽快さ、楽しさでは勝るとも劣らない。ちなみに空車重量(DIN)は、今回の試乗車では最軽量の1520kgだった。試乗後、開発者に9psアップというのはブースト圧を高めたのかと尋ねると、前期型のGTSのタービンを使っていると教えてくれた。また冷却系ではインタークーラーを同じくターボ用に変更しているという。さすがはポルシェ、手抜き仕事はしない。
GTSのハイライトは911初のハイブリッド
一方、新しい「GTS」顔は、フロントバンパーの左右に5本ずつ配された縦長のフラップが特徴だ。高速巡航時など必要なパワーが最小限の場合は、フラップを閉めて空気抵抗を最適化し燃費を稼ぐ。サーキット走行など冷却効果を高める必要があるシーンではフラップを開きラジエーターに空気を送り込むなど自動で作動する。
そしてGTSのハイライトは、911初のハイブリッドであること。電動走行はしないいわゆるマイルドハイブリッドだ。心臓部となるエンジンは前期型では3Lだったが、新開発の3.6Lになっている。まずは公道で「タルガ4GTS」に試乗した。アクセルペダルをゆっくりと踏みこむと低速域からスルスルと滑らかに加速する。さり気なく、でもしっかりとモーターのアシストがきいているようだ。中央のメーターをよくみると回生時にはグリーンの、アシスト時にはブルーのバーの表示が伸びる仕組みになっている。基本的に日常走行ではアイドルから3000rpmくらいまではアシストするも、それ以上は内燃エンジンにまかせてアシストをやめて回生に重点を置くようだ。したがってメーター内のグリーンとブルーの表示が頻繁に動く。もちろんスポーツプラスモードで全開走行を続けるようなシーンでは、最大のアシストをしてくれる。4000rpmを超えたあたりから野太いエキゾーストノートが聞こえてくる。さらに右足に力を込めると7000rpmあたりまで淀みなく吹け上がる。ハイブリッドとも、ターボとも言われなければわからないかもしれない。それくらいシームレスでスムーズだ。
サーキットでは、クーペボディの「カレラGTS」と4WDの「カレラ4GTS」を比較する。GTSには、車高を10mm下げたスポーツサスペンションと可変ダンパーシステム(PASM)、そしてこの新型から四輪操舵のリアアクスルステアが標準装備に。さらにオプションのポルシェダイナミックシャシーコントロール(PDCC)も装備していた。
電動化の恩恵はアクセルレスポンスにあらわれており、サーキットではより一層ペダル操作に瞬時に反応してくれる。回頭性は極めて高く、わずかにステアリングを切り込むだけで向きが変わる。PDCCをオンにしておけばロールも少なく、何事もないようにコーナーを曲がっていく。2WDと4WDとの挙動の違いはわずか。4WDだからアンダーステアが強いといったこともなく、ニュートラルに旋回し、立ち上がりの際にはフロントタイヤに力強い駆動力を感じる。
ポルシェの本社広報によると、ハイブリッド化に関して顧客やファンから懸念する声が多くあがっていたという。
しかし、どうやら心配の必要はなさそうだ。ハイブリッドだと知らなければ、パワフルな自然吸気エンジンだと思うくらいの出来栄えだった。
Q.ポルシェ911新型911の実力は本当にスゴい?
A.最新こそ最良に例外ナシです。
Q.デザイン上の一番の見どころはどこですか?
A.ヘッドライトとグリルがリデザインされました。
Q.t-ハイブリッドについて教えてください!
A.「t」はターボの意味で、フロントにバッテリーを搭載します。
Q.新型911のトランスミッションは?
A.現時点では、8速PDKのみです。
【SPECIFICATION】ポルシェ 911カレラ
■車両本体価格(税込)=16,940,000円
■全長×全幅×全高=4542×1852×ーmm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=1520kg
■エンジン形式/種類=ー/水平対向6DOHC24V+ツインターボ
■内径×行程=91.0×76.4mm
■総排気量=2981cc
■最高出力=394ps(290kW)/7500rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)
■燃料タンク容量=90L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
【SPECIFICATION】ポルシェ 911カレラGTS
■車両本体価格(税込)=22,540,000円
■全長×全幅×全高=4553×1852×ーmm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=1670kg
■エンジン形式/種類=ー/水平対向6DOHC24V+ツインターボ+モーター
■内径×行程=97.0×81.0mm
■総排気量=3591cc
■最高出力=485ps(357kW)/7500rpm
■最大トルク=570Nm(58.1kg-m)
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=65ps(41kW)
■モーター最大トルク=150Nm(15.3kg-m)
■燃料タンク容量=84L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
問い合わせ先=ポルシェジャパン TEL0120-846-911