マクラーレン史上初のハイパフォーマンス・ハイブリッド・コンバーチブルとして登場したアルトゥーラスパイダーに試乗する機会を得た。ひとたびルーフを開ければ、これまでにはないドライバーエクスペリエンスを体感できるという。早速そのパフォーマンスをお届しよう。
パワーとパフォーマンスをさらにアップデート
アルトゥーラはマクラーレンオートモーティブの歴史においてマイルストーンとなるクルマだ。アルティメイトモデルのP1を祖に、量産モデル向けにPHEVパワートレインを実用化しただけではなく、カーボンタブや車内通信環境など、クルマを構成する根本から全く新しい設計となっている。今後はこのアーキテクチャーがマクラーレンの次世代モデルの核となっていくことは想像に難くない。
そのアルトゥーラが登場2年目にして、ソフトウェアアップデートを受け、パフォーマンスがさらに高められた。と、そのタイミングで登場したのがオープンモデルのスパイダーだ。ルーフの開閉はボタンひとつで要する時間は約11秒。50km/hまでであれば走行中の操作も可能だ。格納されるルーフパネルはオプションで調光式ガラスを選択することもできる。
パワートレインは120度バンクを持つ3LV6ツインターボを軸に、95psのモーターを組み合わせるもので、シート背後に搭載された7.4kWhのバッテリーで、130km/hまでのBEV走行が可能となっている。航続距離は今回のアップデートで33kmと約1割伸ばされた。また、エンジンの側もマネジメント変更によってパワーが20ps上乗せされ、システム最高出力は700psの大台に到達。クーペに対して約60kgの重量増となるが、0→100km/h加速は3秒、最高速は330km/hと動力性能に違いはない。この辺りがモーターのトルクで加速アシストするクルマの妙でもある。
シャシーのコアとなるのは新たな生産施設で作られるMCLAアーキテクチャーだ。従来のモノセル/モノケージに対して新たな設計と生産方式を取り入れると共に軽量化も果たしている。モーターやバッテリー、インバーターなど電動化にまつわる重量増は130kgになるが、細かな軽量化の積み重ねによる相殺側も大きく、結果的に同じシステム構成のライバルに対して80kg以上軽く仕上げられているというのが美点のひとつだ。
加えて挙げられるアルトゥーラスパイダーの美点は、視界の良さやインターフェースの繊細さといったマクラーレンの哲学がしっかり浸透していることだ。特に視界に関しては応力を受けないクオーターピラーをスケルトン仕上げとすることで、バットレスに遮られがちな斜め後方の視界をしっかりと確保している。前方視界もクリーンで車両感覚が掴みやすいのも彼らのクルマづくりのこだわりだ。
アップデートされたパワーユニットは、もともと唖然とするほど速かったがゆえに力感の差はさほど感じない。が、吹け上がりやエキゾーストサウンドに軽やかさが加わった、そんな印象だった。低中速域でのモーターとエンジンとの駆動連携についても段付き感などはほぼ感じられず、スムーズさが増している。
が、それ以上に大きな進化を感じたのがダンパー制御の変更で追従速度が大幅に高まったサスペンションだ。エンジニアが敢えて選んだであろう、バンピーでタイトなワインディングでも路面をしっかり捉えて推進力へと繋げていく、その高いロードホールディング能力は凝ったサスシステムを持つ750Sにも劣らない。操舵や制動で伝わる情報も解像度が高く、おかげで持てる大パワーを安心して使うことが出来る。このしなやかなフットワークこそ、アルトゥーラシリーズの一番の魅力だ……と、個人的にはそう思った。
Q.クーペとの違いはどんなところですか?
A.およそ11秒でオープンになります。
【SPECIFICATION】マクラーレン アルトゥーラ・スパイダー
■車両本体価格(税込)=36,500,000円
■全長×全幅×全高=4539×1913×1193mm
■ホイールベース=2640mm
■トレッド=前:1650、後:1613mm
■車両重量=1457kg
■エンジン形式/種類=ー/V6DOHC24V+ツインターボ
■総排気量=2993cc
■最高出力=605ps(445kW)/7500rpm
■最大トルク=585Nm(59.6kg-m)/2250-7000rpm
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=95ps(70kW)
■モーター最大トルク=225Nm(22.9kg-m)
■バッテリー容量=7.4kWh
■燃料タンク容量=65L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:235/35ZR19、後:295/35ZR20
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