【海外試乗】Gターンという飛び道具をもってBEVのGクラス降臨!「メルセデス・ベンツ Gクラス」

新型Gクラスの国際試乗会がフランス・モンペリエにて開催された。今回の目玉は何と言ってもGクラス初のBEVモデルの登場だが、なにやらとんでもない飛び道具が備わっているのは既報の通り。果たしてその実力はいかがなものか? 走りの性能も進化しているというICEモデルと併せて、第一報をお届けする。

内燃機モデルは電動化され初のBEVモデルも登場

以前概要をお伝えしたメルセデス・ベンツ新型Gクラスの仕様をあらためて簡単におさらいすると、内燃機モデルが3仕様、BEVが1仕様。内燃機モデルは3Lの直列6気筒ターボ+ISGのG500、3L直列6気筒ディーゼルターボ+ISGのG450d、そして4LのV型8気筒ツインターボ+ISGのAMG G63。従来型と比較して、内燃機のパワートレインに関するもっとも大きな変更点は、すべてのユニットがISG仕様のマイルドハイブリッドに置き換えられたことと、V8はAMGのみとなったことだ。つまり、メルセデスのラインナップの中で唯一、電動化ユニットを搭載していなかったGクラスも、ここにきてようやく現在の標準的レベルに追い付いたとも言える。

Gクラスは2018年の改良時に、内容的には立派なフルモデルチェンジだったにもかかわらず“W463”という開発コードを変更しなかった。しかし今回はいわゆるマイナーチェンジの範疇でありながら、ついに“W465”に改変された。

そして1979年のデビュー以来初となるBEV仕様はG580 with EQテクノロジーという車名となり、各車輪にひとつずつモーターを配置して、116kWhのバッテリーで駆動する。

各車輪のひとつずつモーターを配置することで、個別に制御できるのがG580の最大の特徴。Gターンの他にもGステアリングという機能があり、これはUターン時などで最小回転半径を小さくする。

エクステリアの変更点は最小限に留まっていて、そのほとんどが空力向上のための施策である。フロントウインドー上部にあらたに設置されたリップスポイラーとAピラーに被さるスポイラーの形状変更は、すべてのGクラスで共通。ボンネットの形状も変更されたのはG580のみで、内燃機仕様は以前と変わらない。いっぽうで、内燃機仕様はフロントグリルが立体形状となった。また、G580はリアフェンダー前方にインレットが設けられ、ここから採り入れた空気がエアカーテンの役割を果たして後輪をカバーする。これらの効果により、従来型では0.53だったCd値がG580では0.44に、内燃機仕様では0.46にそれぞれ向上している。

内燃機仕様ではデフロックのボタンが並ぶ位置に、G580ではGターンとGステアリングのスイッチが備わる。

インテリアも基本的には従来型のそれを踏襲する。しかしよく見ると、センターにあるエアコンやハザードスイッチなどのパネルの形状は他のメルセデスに似た仕様にあらためられ、ダイヤル式コントローラーはパッド式となった。また、センターの液晶パネルもようやくタッチ式となり、音声認識機能も備わっている。さらに、センターコンソール奥にはいわゆる“おくだけ充電”のスペースが作られ、その手前のカップホルダーには保温機能が備わった。それ以外のシート、ダッシュボード、ドアトリム、コンソールボックスなどは基本的に従来型と同じである。

Gターンはアスファルトやコンクリート路面での使用が推奨されていない。

G63はオフロードの走破性が飛躍的に向上

最初にキーを渡されたのはG450d。ISG仕様となったことでモーターによるパワーアップ分が上乗せされて従来のG400dよりも+20ps/+200Nmの367ps/750Nmと公表されている。自分が日々共に暮らしている350dと比べて、劇的に早くなった印象はないけれど、アクセルペダルを踏んでからほんのわずかの間があった後にエンジンが反応する“タメ”みたいなものは、モーターのおかげで完全に消滅した。レスポンスがよくなった分、新型のほうが発進や追い越しなどあらゆる場面で扱いやすくなっている。そして当然のことながら燃費も向上しており、ざっくり20%近くはよくなったと思われる。

バッテリーを完全防水化したおかげで、G580の渡河水深は内燃機仕様の750mmから850mmに増えている。最低地上高もデフがない分、内燃機仕様よりも高くなった。

そもそもこの6気筒ディーゼルは、メルセデス史上でも上位にランクインするほど優れたユニットで、振動は少なくパワーデリバリーも良好で、何よりスムーズかつトロットロの回転フィールがすこぶる気持ちがいい。ISG仕様になってもこの部分に大きな違いはないから、ドライバビリティはレスポンスの向上以外、総じてポジティブな印象のままである。

BEV化により、G580はGターンなどのギミックばかりに注目が集まってしまうが、渡河水深や最低地上高やオフロード走破性は、内燃機よりもむしろ上回っている部分さえある。「BEVになってGクラスは柔くなった」と言われないようにするための、開発チームのプライドが窺える。

「G450dとG500のサスペンションは、ISG仕様にして重量が重くなったことに配慮して最低限の調整はしましたが、基本的はまったく同じです。アダプティブダンピングシステム(電子制御式ダンパー)は今回から全車に標準装備としました。従来型ではほとんどのお客様がオプションで選ばれていたので」とのこと。その言葉通り、優れた乗り心地と正確なハンドリングは健在だった。総じてG450dは、各種機能がアップデートされてより使い勝手がよくなり、パワートレインのレスポンスも燃費も向上、でも評価の高い部分についてはそっくりそのまま残っているという、正常進化のお手本のようだった。これはG500にもまったく同じことが言える。直6になっても出力/トルクともに向上しているから不満はまったく感じられなかった。

AMGのG63の見所は、パワートレインよりもサスペンションにある。新型には、すでにSLなどにも採用されているAMGアクティブライドコントロールサスペンションがオプションで選べるようになった。これは標準装備のAMGライドコントロールサスペンションの4本のダンパーを回路で繋ぎ、状況に応じてオイルを融通しながら各ダンパーの減衰力を最適化する仕組み。そもそもオンロードで“速く快適に走る”ために開発されたサスペンションだったので、資料にある「オフロードの走破性が飛躍的に向上しました」の文言がイマイチ腑に落ちなかったのだけれど、テストドライバーによる同乗走行で目からウロコがボロボロ落ちた。

ラリーのグラベルのような不正路を、G63はとんでもない速さで疾走する。4輪の接地性が異常に高いので、しっかりとトラクションがかかり続けるからだ。その昔、ラリーの競技車両に同乗したことがあるけれど、その時よりも速いのではないかと思うくらいのずば抜けたパフォーマンスだった。参考までに、出力/トルクは従来型よりも+20ps/+200Nmの585ps/850Nmとなった。オンロードでの印象は従来型と比較して、乗り心地はちょっとよくなった程度。動力性能はモーターのアシストによりレスポンスがさらに向上した。

新型Gクラスは全車でピラーに被さる黒いスポイラーが形状が刷新されるなど空力が改良され、内燃機仕様ではCd値が従来の0.53から0.46に。

Gクラスの持ち味に一切の妥協は見られない

そしてG580である。実はもっとも驚いたのはオフロードでの振る舞いだった。G63と同じようなグラベルを、G63に勝るとも劣らない速さで駆け抜けたのである。機械式のデフがない代わりに、電子制御でデフやデフロックと似たような状態を作り出すのだけれど、電気だからそれらが一瞬でできるわけで、速度を上げていってもきちんとついてくるのである。BEVになって、さすがにオフロードの走破性は内燃機並みとまではいかないだろうという想像は見事に裏切られた。むしろ、各車輪にモーターを配置したからこそのメリットを最大限利用して、紛れもない本物のオフローダーとして成立させている。

G580はさらにリアフェンダーにエアカーテン用のスリットを設けるなどして0.44まで向上した。

4個のモーターだからこそ出来る芸当が“Gターン”だ。クルマを停車して、これまではデフロックのスイッチがあったところにあるGターンのボタンを押し、右回転をしたいなら右のパドルを引く。そしてブレーキをリリースすれば580はその場で回転を始める。この時、ステアリングは中立の位置から動かしてはいけない。パドルを引いたままだと2回転して自動的に止まるが、戻せば任意の場所で止めることも可能。1回転に有する時間は約4秒である。これよりも速いと乗員が耐えられないし、遅いと回転軸中心がずれていってしまうとのことだった。

インテリアの風景は基本的に従来型を踏襲するものの、パッド式コントローラーやタッチ式液晶パネルなどはようやく他のメルセデスと同等に追い付いた。

いっぽうで、オンロードではさすがに3085kgの重量を感じさせられるものの、587ps/1164Nmものパワーがあるので加速性能に鈍さは感じられない。車内は無音にもできるが、エンジン音に似たサウンドを車内外のスピーカーから出すこともできる。BEVによく使われる近未来的な音よりもあえてエンジン音に似た音のほうがGクラスには合うということで、その判断は間違っていないと思った。Gクラスには“ヒュイーン”とかは似合わない。ちなみにドライブモードをスポーツにすると、ちょっとG63に似たサウンドに変わったりもする。

液晶のグラフィックの一部は新しくなっている。シートやトリム類は従来型から変わらない。

客観的かつ冷静に見れば、Gターンなんかいつどこで使うのか? など突っ込みどころが満載なのも事実である。しかしこのギミックには、580のステアリングを握ったすべての人が1度はやってみたいと思わせる“ワクワク”があるし、Gクラスの持ち味であるオフロード走破性に一切の妥協は見られない。変えてはいけないところと変えてもいいところを、Gクラスの開発チームは誰よりも分かっているのである。

ラダーフレームの隙間にバッテリーを詰め込んだせいで、12Vバッテリーがラゲッジスペース内へ動き、G580の容量は内燃機仕様の640Lから555Lへと小さくなった。

【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツ G450d
■全長×全幅×全高=4825×1931×2042
■ホイールベース=2890mm
■トレッド=前:1638、後:1638mm
■車両重量=2555kg
■エンジン形式/種類=直6DOHC24V+ターボ
■総排気量=2989cc
■最高出力=367ps(270kW)/4000rpm
■最大トルク=750Nm(76.5kg-m)/1350-2800rpm
■燃料タンク容量=100L(軽油)
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:リジッドアクスル/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:265/60R18

【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツ G580 with EQ Technology
■全長×全幅×全高=4624×1931×1986mm
■ホイールベース=2890mm
■トレッド=前:1638、後:1637mm
■車両重量=3085kg
■モーター形式/種類=交流同期電動機
■モーター最高出力=587ps(432kW)
■モーター最大トルク=1164Nm(118.7kg-m)
■バッテリー容量=116kWh
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:リジッドドディオンアクスル/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:265/60R18、後:265/60R18

問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

 

フォト=メルセデス・ベンツAG ルボラン2024年7月号より転載

■関連記事

2024/06/08 17:30

関連記事

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業電話ラッシュをなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

関連中古車物件情報

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!