フォルクスワーゲン(VW)が2019年から発売を開始したID.3を筆頭とするID.シリーズは、世界市場で見ると昨年はID.4が19万台で11位、ID.3は14万台で15位とテスラやBYDに大きく水を空けられている。当時600億ユーロ、およそ9兆円を超える大投資を行なったVWとしては満足のいかない現状である。特にVWにとって重要な市場である中国では、2008年以来15年以上に渡ったナンバーワンの座を昨年BYDに明け渡してしまった。
サイズは全長は5mに及ぶラージSUV級となるものの、スタイリッシュな佇まい。リチウムイオンバッテリーとガラスルーフに組み込まれたソーラーパネルからエネルギーを引き出す。
北京モーターションで行なわれた記者会見では、VWチャイナのCEOブランシュテッタ—氏が改めて「この国で、この国のためのクルマ作り」を宣言、ID.CODEと名付けたコンセプトモデルを持ち込んだ。これまでのID.シフリーズとは明らかに異なるデザインランゲージを持つID.CODEは、新たな始まりの象徴であり、成功の鍵となることを意図している。
インテリアには地球環境に優しい再生可能な素材が採用され、上質な音響、照明、空調システムも備わることで、まるでプライベートジェットのような快適な空間が演出されている。
新しいチーフデザイナーのアンドレアス・ミント氏を中心とするデザインチームは、SUVにシューティングブレークのテイストを注入したデザインで、中国マーケットの嗜好をこれまで以上に取り入れている。VWの開発担当重役マルクス・シェーファー氏によれば、このクルマは中国向けのプラットフォームCMP(チャイナ・メイン・プラットフォーム)がベースになっており、新たな投資先である小鵬汽車(シャオペン)が開発したE/Eアーキテクチャーを搭載。レベル4の自動運転を可能にしている。そのおかげで、フロントシートは180度回転して、リアパッセンジャーと会話を楽しむこともできる。
さらに「3Dアイズ」と呼ばれる967個のLEDから成るフロントライトエレメントやサイドウインドーに組み込まれたディスプレイなど、コミュニケーション機能を持つ機能も搭載されている。
ドライバーが近づくとシステムがアクティブになり、視覚と音響による歓迎プログラムがスタートする。レベル4の自動運転モードでは、前席は180度回転させることが可能。
VWは南京から西へおよそ160kmの場所にある合肥市(ハーフェイ)にドイツ国外では最大の研究開発センターVCTC(フォルクスワーゲン・チャイナ・テクノロジー・センター)でID.CODEのデザインテイストを持った新しいシリーズID.UXの開発を行ない、2027年までに5台の新しいBEVを市場に送り込む計画である。つまり本社開発生産を含めると2030年までには合計で16台のニューモデルが登場することになる。