【国内試乗】新型のBEVモデルが出た今、ICEを選ぶ意味とは? 今でも積極的に選ぶ価値のあるクルマ「ポルシェ・マカン」

ポルシェ・マカンといえば今年1月に完全電動モデルとしての新型が発表されたばかり。しかしながら現行のICEモデルもしばらくは併売されるという。ここではかつてマカンに乗っていた島下泰久が、その魅力を語る。

新型の電動モデルが発表されてはいるが……

今、太鼓判を押せる1台をと言われて、すぐに思い浮かんだのがポルシェ・マカンだった。マカンと言えば、すでにBEVとなった新型が発表されているが、市場によっては現行モデルも当面、販売が継続されるということは、多くの方がご存知の通りだ。私がここで推すのは、まさに内燃エンジンを積む現行型マカンである。

SUVではあるが、低くクーペのように構えたルーフラインや、ホイールベース比でワイドなトレッドなどポルシェ“らしさ”を随所に感じるデザイン。テールランプがボディ左右を貫く一文字テールも、現在のポルシェを象徴するアイコンだ。

マカンのデビューは2013年10月。東京とロサンゼルスの太平洋をまたいだふたつのモーターショーで同時に発表された。つまり、もう発表されてから早10年が経過したことになる。当時、私もすぐに購入して乗っていたマカンを今また“推し”とするのは、2024年の今、見ても乗っても「やっぱりこれじゃなきゃ」と思わせる魅力が溢れていて、自分自身とても気になっているからだ。

試乗車のマカンTは2Lの直4ターボエンジンを搭載。最高出力265ps、最大トルクは400Nmを発揮する。このほかに2.9L・V6エンジンを搭載するマカンS、GTSも存在する。

まず外観がイイ。幾度かのリファインを受けたデザインはややオーバーデコレーション気味ではあるが、特徴的なヘッドライト、クーペのようなルーフラインや引き締まったキャビンなどによって、その姿はいかにもポルシェだ。正直、最新世代よりも“らしい”と感じる人、少なくないのでは? と思う。

センターコンソールはフラットにまとめられているが、ボタンを押したときのクリック感もあり、操作性は良好。シートは前後ともに適度なクッション感があり、長時間でも疲れにくい。試乗車はオプションのガラスルーフを装備していた。

個人的にはサイズ、パッケージングも気に入っている。もはや兄貴分のカイエン、そしてそのライバル達はどれも全長5m、全幅2m級となり、都市部では扱いやすいとは言えなくなってきている。
マカンだって今回の試乗車であるマカンTの場合で全長4726mm×全幅1927mm×全高1606mmだから、決して小さいわけではない……はずなのだが、いざ走らせてみると取り回しは断然ラクで、街中でも持て余すことはない。ざっくり言えばカイエンより全長が20cmほど短く、幅が5cm狭いだけなのだが、その差は想像以上に効いている。公共駐車場でもドアが余裕で開いて、乗り降りに難渋しないのも嬉しい。

ポルシェ・マカンT

自分も乗っているくせに勝手な言い分だが、最近、都市部に巨大なSUVが溢れる様にはやや食傷気味だ。それもあって、このサイズ感含めたマカンの存在が、改めてスマートに見えてきているのだ。
もちろん、そこに心地よい走りが伴っていなければ、太鼓判は押せない。その点でも裏切ることがないのがマカンである。

ポルシェ・マカンT

改めて感心させられるのが、全身に漲る凝縮感とでも言うべき感覚だ。運転席に座ってドアを閉めたところから、それは始まる。ドアがガッチリと質量感をもって閉じ、外界と隔絶される感じは、まさしくポルシェらしい。

ポルシェ・マカンT

コラム剛性の高さを実感させるステアリングフィールはじめ、適度な重みで統一された操作系のタッチも心地よい。簡単に言えば、良いモノ感が半端ない。試乗車はオプションのエアサスペンションを装着していたこともあり、乗り心地も上質そのもの。当たりは柔らかいけれど動きにはコシがあって、路面が荒れていても揺さぶられたりすることはない。

そしてペースを上げていけば、背の高さを完全に忘れさせる、意のままに操れるフットワークに感嘆させられる。その味わいは基本的にグレード問わず共通なのだが、特に試乗車のマカンTはこの部分が際立っていた。

走りの話になると思わず熱くなってしまう

そのシャシーはPASMが標準となり、車高も低くされている。さらに、フルタイム4WDシステムのPTMは駆動力配分がリア寄りに。そして、これもオプションの電子制御LSDとブレーキ制御によりトルクベクタリングを行なう「PTV Plus」が組み合わされることで、マカンを至高のコーナリングマシンへと仕立てているのである。

ラゲッジルーム容量は通常時で488L。リアシートは40:20:40の分割可倒式で、全て倒せば1503Lまで拡大する。

無論、それは電子制御頼りというわけではなく、4気筒モデルならではのフロントの軽さ、ホイールベースに対してワイドなトレッドといった素性の良さが、まずあっての話なのだ。その常にノーズが内側を向いた旋回姿勢の良さには、気持ちが昂らずにはいられない。

タイヤサイズは前265/45R20、後295/40R20で、ピレリPゼロを装着。

最高出力265ps/最大トルク400Nmというスペックに驚きはないが、実際の力感も申し分ない。全域に力がギッシリ詰まっていて、どこから踏んでも即座に応えてくれるから、リズムに乗って走っていけるのだ。もっとも、これが例えば2.9L・V6ツインターボを搭載するGTSになれば、また違った歓びを享受できることも疑いようがないのだけれど。

ポルシェ・マカンT

このように走りの話になると、思わずこんな風に熱くなってしまうのがマカンというクルマである。その根幹にあるのは圧倒的なまでのボディ剛性の高さだ。プラットフォームはアウディQ5などと同じ「MLB」を使うマカンだが、実は共通部分はそれほど多くなく、特にボディに関しては完全に別物として仕立てられている。結局は、それが今に至るまでその走りや快適性を色褪せないものとしている重要なキモなのだ。

ポルシェ・マカンT

新型マカン、きっと良いクルマに違いない。けれど内燃エンジンのマカンは、BEVじゃ不便だからと仕方なく選ぶようなクルマではないだろう。デザイン、存在感、走り、クオリティで、今なお積極的に選びたくなる存在だと、今回の試乗を通して改めて確信した。
そんなわけで私も今、10年ぶりのマカンを真剣に考えている。ただし、中古車で。かつて感動したマカンターボ・パフォーマンス、もしくはGTSかターボでエアサスペンション、ACC、PTVPlusを備えた個体を探しているのだが、この条件に合致する物件は一向に出てこない。

ポルシェ・マカンT

今回乗ったマカンTの好印象ぶりに、それならいっそ新車で……とも思ったが、新型が出た以上、基本的にいつまでも手に入るクルマ、というわけではないだろうから、その場合は早めに決断した方が良いだろう。いや、これは自分にだけでなく、皆さんにお伝えしているつもりである。

島下泰久「すべてにおいて“良いモノ感”が半端ない」

【島下泰久の推しポイント】圧倒的なまでのボディ剛性

島下泰久/マカンのスポーティな走り、上質な乗り味の根幹が圧倒的なまでのボディ剛性だ。当時はその後10年現役を続けるとは想像していなかっただろうが、結果的にそれが可能となったのは、この車体のおかげだろう。

【SPECIFICATION】ポルシェ・マカンT
■車両本体価格(税込)=9,250,000円
■全長×全幅×全高=4726×1927×1606mm
■ホイールベース=2807mm
■トレッド=前:1645、後:1655mm
■車両重量=1865kg
■エンジン形式/種類=─/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行程=82.5×92.8mm
■圧縮比=9.6
■総排気量=1984cc
■最高出力=265ps(195kW)/5000-6500rpm
■最大トルク=400Nm(40.9kg-m)/1800-4500rpm
■燃料タンク容量=65L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ダブルウイッシュボーン/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:265/45R20、後:295/40R20
問い合わせ先=ポルシェジャパン 0120-846-911

フォト=郡 大二郎 ルボラン2024年6月号より転載

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