【国内試乗】駆けぬける歓びを味わいつつ、生活を共にするスポーティセダンとして理想的なモデル「BMW 3シリーズ」

2019年に登場したG20現行型3シリーズは、2022年にビッグマイナーチェンジを敢行。その際に表立って走りの変更は伝えられていないが、日々ブラッシュアップが図られているのは確かなようで、すでに熟成の域に達しているモデルといえる。そんな3シリーズの魅力を石井昌道氏が語る。

初代から受け継がれたスポーティセダン

言わずと知れたスポーティセダンのベンチマークである3シリーズ。1975年の初代モデルから、コンパクトなDセグメントのFR(FRベースの4WD)という基本は変えずに現在に至っているが、スポーティさと快適な乗り心地のバランスという点では歴代モデルで少し揺らぎがある。ある世代は思いっきりスポーティでその分乗り心地は硬めだったり、その逆もあったりしたのだが、先代モデルでの反省を含めて変更するだけではなく、ライバルの動向によっても影響を受けているように思う。

M340iは0→100km/h加速4.4秒をマークする生粋のスプリンター。アダプティブ M サスペンションによる俊敏かつダイレクトなフィールが、刺激的な走りへと誘う。

先代のF30型は3シリーズらしいスポーティさがありながら、乗り心地も快適でじつにバランスのいいモデルだったが、そのモデルサイクルのなかで長年のライバルだったメルセデス・ベンツCクラスがアジリティ(俊敏性)を謳って3シリーズに近づいてきた。さらに、ジャガーXEとアルファ・ロメオ・ジュリアといった新規車種は3シリーズ以上のスポーティを標榜。だから現行のG20型は、スポーティさに磨きをかけた。

秀逸だったF30型を超えるためにとられた手段は、まずボディに見られる。従来はボンネットとフェンダーにだけ用いられていたアルミニウムをシャシーの構造体の一部にも採用。ホワイトボディでは約20kgの軽量化が図られ、重心は10mm低くなった。フロントサスペンションの取り付け部は5シリーズ以上と同様、新たにアルミダイキャストを採用してフロント周りの剛性は1.5倍にもなった。

いまや最新のBMWにお馴染みとなったカーブドディスプレイ。12.3インチのメーターパネルと14.9インチのコントロールディスプレイを一体化させ、優れた視認性と高い操作性を実現。室内は大柄な男性でも前後席ともに十分な広さを確保する。

すでに登場から5年が経ったG20型だが、改めて乗ってみても剛性感は凄まじい。ボディはいかにも堅牢な雰囲気があり、ステアリングを操作するとガシッと頼もしい手応えがある。ほんのわずかにステアリングを動かした微舵域でもタイヤの表面がジワリと変形し始めるのがわかるほどに正確無比なステアリングインフォメーションがある。

これだけカッチリしていると高速直進時などに、ちょっとした操作でも進路を乱してしまいそうだと心配になるが、まったく逆でステアリングに軽く手を添えているだけでも矢のように直進していく。微細な乱れの修正もこのうえなくやりやすく、ロングドライブでも疲れが少ない。F30 とG20を比較してもっとも大きな違いを感じるのがステアリング周りの剛性感とそれがもたらすフィーリングであり、剛性向上と同じく1.5倍はいいクルマになったと感じられる。

BMW M340i xDrive

ハイライトはなんと言ってもコーナリングだ。微舵から反応が良くてインフォメーションが豊かなのは前述の通りで、そこから切り増していったときのビルドアップでも濃厚な接地感があり、フロントタイヤが路面をがっしりと捉えてヨーモーメントを発生していくのがわかる。
スポーティだからといってサスペンションはガチガチに硬いわけではなく、初期のストロークは意外なほどスッと沈み込むので、タイヤに荷重がかかっていくのがわかりやすい。ストロークしていくごとにググッと粘りが増して安定した姿勢を保ちながらコーナリングしていく。ただ運動性能が高いだけではなく、わかりやすさを大切にしているから類い希な一体感があり、ドライバーに自信を持たせてくれるのも3シリーズのハンドリングの特徴と言えるだろう。

BMW M340i xDrive

これだけスポーティに振れば、快適な乗り心地とトレードオフになるのは致し方がなく、G20型も最初に日本導入された330iMスポーツはやや硬めに感じられたが、いまではすべてのモデルが、引き締まってはいるけれど嫌な硬さはないという、スポーティセダンの理想的な乗り味に落ち着いている。318iや320iなどエントリーグレードでも3シリーズらしさを味わえるのが嬉しいのだ。

BMWらしいエンジンの味付け

パワートレインも、パフォーマンスの高さだけではなく、ドライバーが期待した通りの反応をみせる優れたドライバビリティでライバルに対して優位に立つ。その要因は実用域での充実したトルクにある。エントリーグレードである318iの直列4気筒2Lターボは、1300rpmというディーゼル以上に低い回転数で最大トルクを発生。発進から頼もしいのはもちろんのこと、低回転域を多用する中・高速の巡航でも走りやすい。その一方で高回転域までシュンッと勢いよく回っていくのはさすがBMWだ。

3L直6ターボエンジンは最高出力387ps/最大トルク500Nmを発生。スムーズかつダイレクトなレスポンスとスポーティなエンジンサウンドが魅力だ。

スムーズで素早い回転上昇の快感はディーゼルでも味わえる。低回転から図太いトルクを発生しながら5000rpmまでストレスなく回り切るのは圧巻。さらに、シーケンシャルターボの採用でレスポンスも素晴らしく、ディーゼルでもここまでスポーティに出来るのかと呆れるほどだ。BMWの直列4気筒2Lターボは、ガソリンはディーゼルの美点を、ディーゼルはガソリンの美点を兼ね備えていると言っていい。

8速ATのシフトレバーはセレクタースイッチとなり、これを機にパドルシフトが全車に標準装備。

M340i xDriveが搭載するのはBMWの代名詞でもある直列6気筒。最高出力387ps、最大トルク500Nmものパフォーマンスは公道では過剰だから必要ないとも思えるが、それでも始動したときの重低音の効いたサウンドを耳にした瞬間から虜になってしまう。さらに、回転上昇感がドラマティックで、アクセルを踏み込むと3000rpm、4000rpmとタコメーターの針が跳ね上がっていくごとに勢いを増し、トップエンドまで突き進む。速さそのものよりもそのフィーリングに酔いしれてアクセルを踏む右足をとめられなくなるのだ。

M340iには19インチMライトアロイホイール、大径Mスポーツブレーキ等が装着される。

2023年のビッグマイナーチェンジでは、カーブドディスプレイが採用されたインテリアおよびオペレーションシステムに変化があったが、基本的な魅力に変わりはない。走りに重きを置きつつも、きちんと使える後席やラゲッジルームといったパッケージ、先進的な運転支援システムやデジタライズなども充実。生活を共にするスポーティセダンとして理想的なのだ。

ダブルバー採用のBMW伝統のキドニーグリル、フロントエプロンのワイド化によりパワフルなデザインが印象的な3シリーズ。リアデザインにおいては、リアコンビネーションライトをより細く水平なラインとし、テールパイプ径を90mmまたは100mmとすることで、パワフルな印象を与えている。

【石井昌道の推しポイント】正確無比なハンドリング

石井昌道/驚くほどステアリング周りの剛性感が高く、それゆえに正確無比なハンドリングを味わえる。ステアリングを切り始めた瞬間からタイヤと路面のコンタクト状況がクリアに伝わってきてドライバーに一体感をもたらすのだ。

【SPECIFICATION】BMW M340i xDrive
■車両本体価格(税込)=10,860,000円
■全長×全幅×全高=4725×1825×1440mm
■ホイールベース=2850mm
■トレッド=前:1580、後:1570mm
■車両重量=1730kg
■エンジン形式/種類=B58B30B/直6DOHC24V+ターボ
■総排気量=2997cc
■最高出力=387ps(285kW)/5800rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1800-5000rpm
■燃料タンク容量=59L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=10.6km/L
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:225/40R19、後:255/35R19

問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437

フォト=郡 大二郎 ルボラン2024年6月号より転載

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石井 昌道
AUTHOR
2024/05/15 11:30

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