【COLUMN 02】国内外で最新モデルを試乗するル・ボラン誌執筆陣に聞く! 「現代の高級車とは何か?」

全ての画像を見る

現代、さまざまな解釈がなされるようになった高級車。ここでは、国内外において日々、最新モデル試乗や取材を行なっている8人のモータージャーナリストに、「現代の高級車とは何か?」という問いを投げかけた。

◆「ランドローバー・レンジローバー」


「エンジン時代の最後の伴侶……そんな選択肢も粋だと思う」大谷達也氏
「現代の高級車」という問い掛けに「BEV」と答えるのは簡単だけれど、電動化が進むいまだからこそ、内燃機関の感触を大切にしたいという思いがことさら強まる(同じように考える執筆者は意外と多かったりして……)。で、最近つくづく感じるのがストレート6の心地よさ。精巧なメカニズムが滑らかに回っている様は、内燃機関の極致といって構わない。ここまで話を絞ってくると、新型レンジローバーに辿り着くのは簡単。圧倒的に近未来感が漂う内外装、乗り心地とハンドリングのバランスを一気に引き上げたシャシーの仕上がりも素晴らしい。新型レンジローバーとともに、エンジン時代の最後を美しく締め括るなんて、かなり粋だと思う。

「このクルマは贅沢な時間の作り方を知っている」島下泰久氏
内外装が立派なら高級車というわけではなく、ある種の威厳や心豊かにする何かが、そう呼ばれるのには必要。しかも「現代の」とつくのなら、今この時代に相応しい価値も求められる。ピンと来たのがランドローバー・レンジローバー。内外装の設えに文句はないし、デザインについても然り。美しいのはもちろん、これが理解できるかとこちらのセンスを問うてくる辺りが気位の高さを感じさせる。そして走りである。快適かつ力強いのは当然として、良いのはクルマの方から飛ばせとけしかけてきたりしないことだ。時間の流れ方を誰にも左右されないことこそ、実はもっとも贅沢な時間の使い方。レンジローバーは、それをよくわかっている。

「リダクショニズムの極致こそ新型のレンジローバーの魅力」竹花寿実氏
私が個人的に考える高級なモノに求められる要素は、「新しさと普遍性が感じられるデザイン」「クラフトマンシップ」、そして「上質な感触」。家具や趣味のAV機器、楽器などは、これらと価格のバランスで選んでいるつもりだが、クルマではさらに「先進的なテクノロジー」や「優れた快適性」が必要だと考える。このような条件に合致するモデルはいくつかあるが、現時点では新型レンジローバーが群を抜いているという印象。リダクショニズムの極みとも言える、日本刀のような美しさを感じさせるデザインや、極めて上質で精緻に仕立てられたインテリア、先進性、圧倒的に優れた快適性は、現代の高級車の筆頭に挙げられるだけの完成度だと思う。

◆「アウディ・A1」

「アウディ・A1」

「ひと目惚れして買ったのはこの小さな高級車だけ」生方 聡氏
「プレミアムコンパクトってこういうことか」と、ひと目見た瞬間に恋に落ち、後先考えずに3ドアモデルをオーダーしたのが初代アウディA1でした。フォルクスワーゲン・ポロと同じプラットフォームを使っていながら、どこから見ても美しく、張りのあるボディ。一方、室内も、精緻な作りのインスツルメントパネルや、統一した操作感を持つスイッチ類、当時としては最新のインフォテインメントシステムなど、コンパクトカーに対する期待を大きく上回る仕上がりに、驚きと感動を覚えたほどです。その後、何台かアウディを所有しましたが、上質さにひと目惚して買ったのは、この小さな高級車だけ。十二分に高級を感じられるクルマです。

◆「メルセデス・ベンツ EQS」

「メルセデス・ベンツ・EQS」

「プロポーションからして新しく、車内にも新しい価値を提案」渡辺敏史氏
今、いわゆる高級車の定義は、かつてなく多様化しつつあるときではないかと思います。SUVやミニバンでもそれを名乗る様式なき時代であることもさておき、一番の変容はパワートレインの多様化です。とりわけ、高級車と電動化……というかEV化との相性は高いコストを転嫁できるという吸収能力も含めて抜群ですから、この先EVの高級車は間違いなく増えていくことになるでしょう。そういう視点でみれば、もっともイマ的な高級車といえばやっぱりEQSになるのかもしれません。好みはあれどプロポーションからして新しく、車内にも新しい価値を提案しています。何よりその先攻ぶりからは、次世代もアタマ取ったるの意気込みがぷんぷん伝わってきますし。

◆「BMW i7」

「BMW/i7」

「電動化に成功した旗艦モデルはさらに高次元な高級車に」石井昌道氏
古くから高級車のエンジンに求められたのは静かで振動が少なく、低回転から豊かなトルクを発生して余裕ある加速を見せるというものだった。大排気量化やマルチシリンダー化などで対応してきたが、その特性は電気モーターそのものだ。だから高級車ほど早くBEV化が進み、ユーザーもそれを歓迎するだろう。いま日本で販売されているBEVの高級車はメルセデス・ベンツEQSにBMW i7、iXといったところだが、その静粛性の高さや洗練された乗り味は、エンジン車では実現不可能なレベル。EQSのMBUXハイパースクリーンのような未来感、ガジェット的要素も現代の高級車に求められる。コネクテッド等でのおもてなしは必要不可欠だろう。

◆「パガーニ・ユートピア」

「パガーニ・ユートピア」

「頑なに伝統を守り抜き工芸品のような存在」西川 淳氏
高級車も随分と身近な存在になって、ロールス・ロイスを街中で見てもさほど驚かなくなった。そんな今、真の高級車とは? と問われたなら工業製品としての進化に関係なく、つまりはパワートレインや最新テクノロジーといった数々の機能性に左右されることなく、頑なに伝統を守り抜く姿勢を持った工芸品のような存在のことを指すと私なら答える。場合によっては最新テクノロジーの採用を拒否してでも、顧客からの信頼と期待に応え、価格に見合うかそれ以上の価値を提供するクルマだ。たとえばパガーニの最新作ユートピアはどうだろう。V12、マニュアルギアボックス、アナログメーター、素材はチタンにアルミ、レザー、カーボン。走る宝石である。

◆「BMW 3シリーズ」「メルセデス・ベンツ Eクラス・オールテレイン」

「BMW・3シリーズ」

「『機能が高級』であることも現代の高級車の条件」清水和夫氏
高級とはなんだろうか? 私の場合は一台のクルマと長く付き合うので、私的な高級とはまず第一に「機能が高級」であること。走る曲がる止まるという基本性能だけでなく、高級な機能のわかりやすさ、つまりヒューマン・マシン・インタラクション(HMI)も重要な要素となる。キャビンの居心地、長距離移動の快適性と安心感、落ち着きのあるデザインもチェックポイントだ。走りの機能では街中の使い勝手、視界性能、あらゆる路面を走破できるタフネスさも見逃せない。ということで、私のニーズに応えることができるクルマはあまり多くないかもしれないが、メルセデス・ベンツEクラス・オールテレイン、BMW3シリーズ・ツーリングなどを推薦したい。

フォト=岡村昌宏 photo : M.Okamura (CROSSOVER)

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!