R8の後継モデルとして2020年末にデビューを果たした、ハイパフォーマンスBEVのe-tron GT。コロナ禍に登場したこともあって、まだ発売からそれほど時間が経っていない印象であったが、気がつけば量産開始から間もなく4年。アウディのハイパフォーマンスモデルの開発・生産を担当するアウディ スポーツ社内では、改良バージョンの開発が着々と進められていた。
e-tron GTは、アウディがポルシェと共同開発したパフォーマンスBEV専用となるJ1プラットフォームを採用したモデルで、基本的なメカニズムは、ポルシェ・タイカンと共通する。タイカンもつい先日フェイスリフトを受けたが、開発はあくまでも別々に行なわれた。
パナメーラやタイカンと同様、ドアを開けた瞬間に車高が5〜6cm上がることで乗降性を高める機能を搭載。この新世代エアサスがもたらす走りは非常にスポーティかつ快適だ。
今回は幸運にも、アウディ スポーツの開発・生産拠点であるベリンガー・へーフェ工場周辺で、改良バージョンのプロトタイプに同乗試乗することができた。
この夏に発表予定ということから、詳細なスペックを教えてもらうことは叶わなかったが、改良バージョンは大幅に進化すると断言していい。リチウムイオンバッテリーは、サイズはそのままに容量が増し、充放電効率も向上。前後の電気モーターも、パワー、トルクともにアップしている。ADASについても、車速制御などをより緻密に制御できるように進化させたという。
今回は見せてもらえなかったが、上下がフラットのステアリング形状となった点を除き、インテリアは素材や細部の使い勝手などがアップデートした程度の変化だという。
最大の変化は足回りだ。新型パナメーラや新型タイカンに搭載された、ポルシェ・アクティブライド・サスペンションと同様の、可変ダンパーとエアサスペンションを組み合わせた姿勢制御システムを採用したのだ。
その走りは驚くべきフラットライドで、コンフォートモードでは路面の凹凸を見事に吸収し、荒れた路面でも快適そのもの。ダイナミックモードでは加減即時やコーナリング時に車体を積極的に傾けることでピッチングやローリングを抑えるという、パナメーラやタイカンと同様の制御を行なう。
エクステリアは小変更のみで、Cd値はほぼ従来どおり。ステアリングのギア比がクイックになり、後輪操舵の制御も改善され、スタビリティも高められている。
ただし、アウディはポルシェとは異なり、アジリティやハンドリングの正確性を高めながら、コンフォート性能をより重視したチューニングを施し、「GT」の名により相応しい走りを実現した。
今年後半の発売までの数カ月で、どこまで進化させてくるのか、とても楽しみだ。