フォルクスワーゲンのID.4はSUVのスタイルを持つものの、RWDしか設定がないBEVだ。今回、そのID.4を雪上で試乗する機会を得た。緻密な制御が可能なことで、滑りやすい路面でもトラクション性能が高いBEVだが、果たして走りはどうだったか?
低重心なのは雪上走行でも有利であることを確認
一般的に、後輪駆動車は雪道が不得意とされている。では電気自動車であればどうなのか? そんな疑問を感じていたところ、フォルクスワーゲンからID.4の雪上試乗を試す機会が与えられた。ID.4は後輪駆動だが、以前ワークショップでテストコースを走行した際に、圧雪路面を想定した登坂路を、いともたやすく発進し登り切ってみせてくれた。それゆえ、リアルの雪上でも同様の走破性を披露してくれるのか興味深かったのである。
今シーズンは雪の少ない地域が多いが、降雪情報が出たタイミングで車両を借り出し、1泊2日で一路北軽井沢へ。出発した日は路面に積雪は少なかったものの、翌日はご覧の通り数センチほど積もりコンディションは良好だった。
2022年に発売されたID.4は、2023年モデルで上級グレード「Pro」の航続距離が561kmから613kmへと大幅に伸びたのがトピックだ。今回タイヤはミシュランのスタッドレスX-ICE SNOW SUVが装着されており、サイズは標準と同じフロント235/50R20、リア255/45R20であった。
タイヤは標準装着と同サイズの、ミシュランのスタッドレス「X-ICE SNOW SUV」が装着されていた。
まずは気になる発進性能だが、平坦な道であれば多少ラフにアクセルを踏み込んでも、ホイールスピンをすることなく加速することが可能だ。しかし上り坂では、後輪が滑ってしまい。逆に後退してしまうこともあった。これはタイヤのグリップ性能にも依存するから、さすがに制御だけではカバーしきれない部分であるのだろう。減速時には、シフトを「B」モードにすることで、回生ブレーキが作動し、いわゆるワンペダル走行が可能。タイヤをロックすることなくスムーズに減速することができた。
充電は往路が関越道の三芳PAと上信越道の横川SA、復路は関越道の上里SAで実施。いずれの急速充電器も出力は90kWであったが、実際のところは40〜50kW程度しか出ておらず、航続距離をそれほど伸ばすことはできなかった。
一方コーナーでは、途中タイトな登りのワインディング路を走行した際でも、常識的なスピード域であればグリップを失うことなく、安定した姿勢でクリアしていく。緩いコーナーで若干速度を上げてみたが、舵の効きも良く気持ちいい走りが楽しめた。
車両返却前にアウディのディーラーでも充電を試みたが、パワーXの急速充電器だったため充電カードが使用できず、充電するのを諦めることに。
このコーナリング性能に関しては、ロングホイールベースに加え、バッテリーを床下に配置することによる低重心と、前後重量配分のバランスの良さが効果を発揮しているのだろう。想像していた以上にID.4で雪上走行を楽しむことができた。