アメリカでデリバリーが開始されたテスラ・サイバートラックのステアリングを握る機会を得た。路上では異質な存在として異彩を放っていたが、サイバートラックがピックアップトラックの未来の代表となるかもしれない。
リアルピックアップか? 己を誇示するマシンか?
日本でも2月半ばに実車が公開されたテスラ・サイバートラック。本国アメリカでは、昨年11月から一般オーナーへのデリバリーがスタートしたが、なかなか試乗する機会には恵まれてこなかった。しかしこの度、手に入れた方のご厚意により、短時間ではあったがテストドライブ用にお借りすることができ、試乗リポートをお届けすることが叶った。
すでに映像や写真では見たことはあったが、全長5682mm、全幅2200mm、全高1790mmのボディサイズは、日本では大きいと感じるかも知れない。しかし、アメリカのフルサイズピックアップとは同等の大きさであり、本国では特別大きいという認識は持たれていない。しかし、ドライバーの位置をトップにして平面パネルを何枚も張り合わせたようなデザインは非常にユニークで、圧倒的な存在感を放っている。気になったのはステンレスパネルの鋭角的な合わせ目で、不用意に指先でタッチをすると怪我をする恐れがあり注意が必要である。
キャビン内は予想通りのクオリティ(!?)で、1000万円を超える価格のクルマとは思えない。しかしアメリカをはじめ各国の市場では「テスラだから!」と受け入れられているのは不思議な現象である。
車内空間はダブルキャブのピックアップと同等の広さを提供している。すなわち日本でのミドルセダン並みの広さで大人4人でも十分快適なドライブが可能となる。
またピックアップの重要ポイントでもある荷台部分は使いやすく、全く問題はない。頑丈な作りの電動トノカバーはしっかりと積み荷を保護してくれ、セキュリティ面でも安心である。
試乗車は2基のモーターを搭載するデュアルモーター仕様のAWDで、最高出力600kW、1000Nm(推定値)のトルクを発揮する。ダイナミクス性能は0→100km/h加速は4.3秒をマークし、最高速度は180km/hでリミッター制御される。
自重は3トン近くあり、さらに5メートルを軽く超える全長にも関わらず動きは軽やかで、四輪操舵機構により意外と取り回しは良く、街中はもちろん狭い充電ステーションでも上手くアプローチできた。しかし問題は長く伸びたAピラーの根元によって、私のように身長170cmを下る小柄なドライバーにとっては、斜め前方の視界が大きく妨げられることがあった。一方で広々としたハイウェイでは長いホイールベース、そしてエアサスのお陰もあり快適なクルージングが楽しめた。
もっともサイバートラックのオーナーのほとんどは繁華街の大通りを流すに違いない。と言うのも、このサイバートラックのアピアランスはアメリカで見かけるピックアップトラックとは一線を画しており、スーパースポーツに負けない存在感を放っているからだ。
それゆえに、現在アメリカ中西部で2.7L・V6エンジンを搭載するフォードF150を所有して、やがては電動化を考えている私にとって大きな疑問が湧いてきたのである。果たしてイーロン・マスクはこのサイバートラックでアメリカの巨大ピックアップ市場を本気で変えようとしているのだろうか。あるいは世界中の金持ちたちの所有欲を掻き立てるためにこのサイバートラックを送り出したのだろうか、という点である。もし前者であればこんな奇抜なデザインは不要で、テスラの他の乗用車モデルのようにコンベンショナルで使い易いデザインでも良かったのではないだろうか?
【SPECIFICATION】テスラ サイバートラック(AWD)
■全長×全幅×全高=5682.9×2200.7×1790.8mm
■ホイールベース=3807mm
■トレッド=前:1772、後:1772mm
■車両重量=2995kg
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=805ps(600kW)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=71.4kWh
■一充電航続可能距離=547km
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:285/65R20
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