ポルシェの4ドアサルーンであるパナメーラが8年ぶりに3世代目へとフルモデルモデルチェンジ。内燃エンジン車に電動化技術を巧みに取り入れながら、より速く、よりラグジャリーに進化している。
乗り心地は日常域でもスポーツでも秀逸
車名の由来は1950年代にメキシコで行なわれた公道レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」という。誕生から約15年の歴史をもつパナメーラは、ポルシェのラインナップにおいては、4ドアで大人4人が快適にすごせる空間を有したグランドツーリングカーというポジションにある。8年ぶりにフルモデルチェンジを果たした新型に、温暖な気候に恵まれたスペイン南部、アンダルシア州のセビリアで試乗することができた。
出発地点である市内のホテルには、ベースモデルのパナメーラが用意されていた。プラットフォームは、先代の「MSB」の改良版である「MSBw」という。新型のボディは全長5052mm、全幅1937mmと先代とほぼ変わらない。911や718のように高くなったフェンダーの峰など、全体的にシャープさが強調されていて大きさを感じさせない。ナンバープレートホルダーの上には、新たにエアインレットが追加されている。
鋭い目つきのマトリックスLEDヘッドライト内に長方形に配置された4つのLEDモジュールが印象的だ。パナメーラ伝統のスポーティなサイドビューをかたちづくる“フライライン”は、もちろん継承されている。
インテリアはタイカンにはじまった最新のデザイントレンドに則ったもの。ちなみにワゴン版であるスポーツツーリスモはこの3世代目では設定されないようだ。
パナメーラと4輪駆動のパナメーラ4に共通のエンジンは、2.9LのV6ターボ。ブーストアップなどの改良により、先代比で23ps/50Nmアップの最高出力353ps、最大トルク500Nmを発揮。トランスミッションは8速PDKを組み合わせる。
さっそくセビリア市街地を走らせると、シフトチェンジの速さ&滑らかさに驚かされる。トルコンATと言われれば信じてしまうほど。のちに開発者に確認したところ、911と同じものを使っていると教えてくれた。
制限速度120km/ hの高速区間では抜群の直進安定性をもってひた走る。新型パナメーラは、ポルシェアクティブサスペンションマネージメントを備える2チャンバー、2バルブ技術のエアサスペンションを標準装備する。これはダンパーの伸長段階と圧縮段階とを別々に制御するもので、コンフォートとスポーツとの振り幅を拡大するものだが、段差や継ぎ目を乗り越えた際のショックを大幅に吸収し、フラットにひた走る。そしてワインディング区間での、操舵に対する動きの正確さには、さすがと唸らされる。帰路の高速区間でパナメーラ4を試したが、ベースモデルと同じ印象を受けた。同行者からはパワーが少し物足りないという声も聞かれたが、必要にして十分だと思った。ちなみに車両重量は4のほうが35kg重い。
PHEVモデルにはアクティブサスを設定
午後のセッションでは、郊外にあるモンテブランコサーキットにて、プラグインハイブリッドモデルの「ターボEハイブリッド」を試す。全長約4.4km、ホームストレートは約1km、18のコーナーからなる本格コースだ。ポルシェはいまカイエンなどでもハイブリッドモデルを頂点に据えるが、このパナメーラでもトップモデルと位置づける。総出力は680ps、トルクは930Nmを発揮。バッテリー容量は25.9kWhで、今回は市街地で試めせなかったが、EV航続距離は(WLTP複合値)76〜91kmとなっている。ちなみにポルシェはこの新型パナメーラより、ターボモデルのクレストをゴールドからメタリックグレーに変更する。その名はTurbonite(ターボナイト)。接尾語の[ite]は石の意味だ。
サーキットでは、その速さはもちろんだが、Eハイブリッドモデルにオプション設定される「ポルシェアクティブライドサスペンション(PARS)」の体験に重点が置かれた。これは新開発のアクティブショックアブソーバーに、前後アクスルのそれぞれに配置された電動式の油圧ポンプを接続したもので、ボディの動きに応じてダンパー内に瞬時に正確な流量を発生させることが可能となっている。これにシングルチャンバー式のエアサスペンションを組み合わせる。この油圧ポンプは400Vシステムによって駆動するため、Eハイブリッドモデルにのみ設定される。
まず乗降性を高めるためこのシステムを使って車高を上下させる。ドアを開けると、瞬時に車高が5.5cm跳ね上がる。閉めればスンと下がる。あまりにも速く動くので驚いた。もちろん不要ならキャンセルすることも可能だ。ハイブリッドモードを選んで走行すると、PARSが起動する。このダンパーは走行状況や路面に応じて1秒間に最大13回の調整を行なうという。これにより加速時のフロントリフトやブレーキング時のノーズダイブをなくし、そしてコーナリング時には内輪側を沈みこませ、外輪側を持ち上げるアクティブチルトコントロールまでを駆使して常にボディを水平に保つ。
サーキットでのスピードレンジでこれを試すとあまりの姿勢変化のなさに違和感を覚える。もちろんそこはポルシェも心得ていて、サーキット走行後に、50km/hで波板の上を走りぬけたり、パイロンスラロームなどを試させてくれた。こちらは運転していても、外からクルマの挙動をみていても、これまで未体験のフラットさだった。
この複雑なサスペンションシステムの開発意図を開発者にたずねてみたところ、「これまで以上にもっと乗り心地を良くしたかった。そのためにはスタビライザーをなくして、4輪を独立して制御する必要があった。新型パナメーラは、ラグジャリースポーツカーなのですから」と教えてくれた。
【SPECIFICATION】ポルシェ・パナメーラ
■車両本体価格(税込)=14,240,000円
■全長×全幅×全高=5052×1937×1423mm
■ホイールベース=2950mm
■トレッド=前:1680、後:1651mm
■車両重量=1885kg
■エンジン形式/種類=─/V6DOHC 24V+ツインターボ
■内径×行程=84.5×86.0mm
■圧縮比=10.5
■総排気量=2894cc
■最高出力=353ps(260kW)/5400-6700rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1900-4800rpm
■燃料タンク容量=75L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速PDK
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前265/45ZR19、後:295/40ZR19
【SPECIFICATION】ポルシェ・パナメーラ4
■車両本体価格(税込)=14,790,000円
■全長×全幅×全高=5052×1937×1423mm
■ホイールベース=2950mm
■トレッド=前:1680、後:1651mm
■車両重量=1920kg
■エンジン形式/種類=─/V6DOHC 24V+ツインターボ
■内径×行程=84.5×86.0mm
■圧縮比=10.5
■総排気量=2894cc
■最高出力=353ps(260kW)/5400-6700rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1900-4800rpm
■燃料タンク容量=75L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速PDK
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前265/45ZR19、後:295/40ZR19
【SPECIFICATION】ポルシェ パナメーラ・ターボEハイブリッド
■車両本体価格(税込)=—
■全長×全幅×全高=5054×1937×1421mm
■ホイールベース=2950mm
■トレッド=前:1666、後:1639mm
■車両重量=2360kg
■エンジン形式/種類=─/V8DOHC 32V+ツインターボ+モーター
■内径×行程=86.0×86.0mm
■圧縮比=9.7
■総排気量=3996cc
■最高出力=519ps(382kW)/6000rpm
■最大トルク=770Nm(78.5kg-m)/2330-4000rpm
■モーター最高出力=190ps(140kW)/3200rpm
■モーター最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/700-2971rpm
■燃料タンク容量=80L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速PDK
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:275/40ZR20、後:315/35ZR20
問い合わせ先=ポルシェジャパン 0120-846-911