2023年11月に発表された三代目となる新型MINIカントリーマンは、従来の呼称であるクロスオーバーから革新的なデザインと機能を備え生まれ変わった。今回はICEのJCWとBEVのSEの国際試乗会が開催されたので、その第一報をお伝えしよう。
クロスオーバー改めカントリーマンに
ミニにあってデカいじゃないかと巷ではツッコまれつつ、ファミリーカー的なニーズも汲み上げながら一族の中でも確たる存在感を示してきたのがミニ・クロスオーバーだ。
その三代目となる新型では、BMWに商標が譲渡されたことによって、晴れて日本でクロスオーバー改めカントリーマンの国際名称が用いられるようになった。新しいミニ・カントリーマンのデザインは、初代から二代目への変遷を踏襲し、より角々しさが際立てられた形状になったようにみえる。
加えて寸法的にも前型からの拡大しろは全長で130mm、全幅で25mmと、車格がひとつ上がったかのようでもある。このサイズアップの理由は先代と同様、BMWのX1やX2とアーキテクチャーを共有しているからだ。新型のそれは従来のUKL2プラットフォームをベースに、多様な電動パワートレインにも対応したFAARプラットフォームを用いており、先代より20mm伸びた2690mmのホイールベースは3モデルで共通となっている。
インフォテインメントのディスプレイ環境はBMWと異なり、ミニは9.45インチの円形OLEDをセンターに配して、速度などの走行情報も含めて一括表示する仕組みだ。が、搭載ソフトウェアはX2と同じOS9に準拠したものとなっており、その表示グラフィックや作動音など随所にミニならではのポップな演出が加えられている。サードパーティのアプリを追加することによるエンタメや便利機能のアドオンなど、今後は様々な発展性も考えられるが、そこにミニらしさも加われば、ユーザーとの新たな愛玩的接点が築けるのかもしれない。
日本仕様のグレード構成と搭載するパワートレインは、ベースとなるCがB38系1.5L3気筒ガソリンターボ、DがB47系2L4気筒ディーゼルターボ、SがB48系2L4気筒ガソリンターボ、このSのハイチューン版となるジョン・クーパー・ワークスの4つとなる。トランスミッションは全グレードで7速DCTを採用。Sとジョン・クーパー・ワークスのドライブトレインは、100:0〜50:50の駆動配分を多板クラッチによってオンデマンド制御する四駆=ALL4となる。
これら内燃機バリエーションに加えて、カントリーマンには初のBEVモデルも用意される。グレードは1モーター前輪駆動のEと2モーター四駆のSEで、搭載するバッテリーの容量は共に66.45kWh。欧州WLTPモードでの航続距離は、Eが462km、SEが433kmと発表されている。
同じプラットフォームでBEVと内燃機を併存させながら、その内燃機の側でもモジュラー化を推し進め、3気筒と4気筒の作り分けのみならず、ガソリンとディーゼルでの部品共用も40%台にまで高める……など、BMWの戦略は小型車のカテゴリーにおいてもクレバーだ。ドイツのプレミアム御三家にあって原価の高いBEV販売台数はトップでありながら、利益率を10%前後に保ち続けられているのは、こういった技術展開の合理性の高さが理由に挙げられるだろう。
ファミリーカーとしても十分通用する居住性
今回試乗したのは、双方のパワートレインにおいてのトップモデルとなるジョン・クーパー・ワークスとSEだった。車格の拡大は単にデザインに食われただけではなく、車室空間の拡大にも充分に機能している。荷室容量は460Lが確保され、さらにリアシートをスライドさせることで拡張することも可能だ。そのリアシートも足元周りや肩周りなど広々としており、背もたれにはリクライニング機能をもたせるなど、ファミリーカーとしても十分通用する居住性を有している。BEVのSEは床下にバッテリーを搭載する関係で後席床面が持ち上がるため、着座時に腿が上がり気味になるが、伸ばされたレッグスペースを活かしてやや足を伸ばし気味にすれば快適に座れそうだ。
メーター類をタッチパネルに一本化して物理スイッチを整理、さらにシフトをトグル型に変更しバイワイヤー化するなど、操作系の電子化を進めた結果、インテリアはすっきりとした印象になった。ダッシュボードやドアパネルには目の粗いファブリックが貼り込まれ、デジタルガジェットのような風合いをみせている。また、フロアから生えるシフトレバーを廃したことで、センターコンソール回りに収納スペースが増えているのも特徴のひとつだ。
ジョン・クーパー・ワークスのアウトプットは316ps/400Nm。0→100km/h加速は5.4秒、最高速は250km/hとなる。ホットハッチとしてみても一線級の速さを持つが、低速域のマナーもとても洗練されていた。変速マネジメントも繋がりの粗さや変速タイミングの違和感などもなく、停まる寸前からの再加速といったDCTが苦手な場面でも滑らかに応答してくれる。前型からの乗り換えでもここに不満を覚えことはないだろう。
そして大きく進化したのが乗り心地面だ。微小入力域でもダンパーはしっかり減衰し、細かなショックも綺麗に丸めて乗員に不快さを抱かせない。マンホールの段差や橋脚のジョイントなどでも突き上げはほぼ感じられないほど穏やかな一方で、大入力にもしなやかに脚が追従していく。
同じ20インチタイヤをオプションで用意、それを装着した試乗車のSEは、BEVならではの低重心や高剛性をもって、ジョン・クーパー・ワークスよりもさらに乗り心地が上回るかと思いきや、そこに大きな差異は感じられない。一方でハンドリングは自重を活かした据わりの良さが美点のSEに対して、軽快なれどグリップ感をしっかり保ちながらステイブルにも振る舞うジョン・クーパー・ワークスと性格が綺麗に分かれている。
BEVのSEは内燃機なら5L級という494Nmの最大トルクを活かして、アクセルを踏み込みさえすれば意図した速度に瞬時に達する一方で、発進や極低速域での速度管理にもアクセルワークを気遣うこともないという、全域に渡るパワートレインの洗練度が大きな魅力だ。そしてiX1の経験があてはまるとすれば、実用電費も優れているだろう。
それでも行動の自在性は内燃機のようにはいかないが、iX1やiX2よりも安く、日本車のライバルをも凌駕しそうな価格設定も含めて、ライフスタイルがそこに合致するなら検討に値する魅力的なBEVに仕上がっていると思う。
ジョン・クーパー・ワークスはともあれ乗り味の洗練ぶりが際立っていた。最も刺激的なグレードがこれほどの動的質感となれば、S以下のグレードのマイルドなグレードの、デイリーカーとしての仕上がりも楽しみになってくる。
【SPECIFICATION】ミニ ジョン・クーパー・ワークス・カントリーマン・オール4
■車両本体価格(税込)=6,670,000円
■全長×全幅×全高=4445×1845×1645mm
■ホイールベース mm 2690 2640
■車両重量=1680kg
■エンジン形式/種類=B48A20H/直4DOHC16V+ターボ
■総排気量=1998cc
■最高出力=316ps(233kW)/5750rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/2000-4500rpm
■燃料タンク容量=54L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/40R20
【SPECIFICATION】ミニ カントリーマンSEオール4
■車両本体価格(税込)=6,620,000円
■全長×全幅×全高=4445×1845×1640mm
■ホイールベース=2640mm
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=前:305ps(225kW)、後:305ps(225kW)
■モーター最大トルク=前:494Nm(50.4kg-m)、後:494Nm(50.4kg-m)
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18
問い合わせ先=BMWジャパン 0120-3298-14