【比較試乗】ルックス通りのスポーティな走りで魅せるクーペSUV。ベストセラー・ポルシェの実力はいかに?「ポルシェ・マカンT vs BMW X4M」

2013年にデビューし、2019年にマイナーチェンジが行なわれたマカンは、ポルシェのラインナップでベストセラーを誇るモデルだ。そのうちマカンTは、2022年に導入されたスポーティ版。同じミドルサイズの高性能クーペSUVであるX4Mと比較を試みた。

軽量スポーツカーのような走りを披露するマカンT

2022年に追加されたマカンTは、標準モデルのマカンをスポーティに仕立てたモデルだ。
718ケイマンや911にも設定されている「T(Touringの頭文字)」の文字が与えられたマカンは、スポーティなデザインのドアミラーや、レタリング入りのサイドブレード、ブラックの左右2本出しテールパイプ、ダークチタンカラーの20インチホイールなどが奢られ、スタイリッシュさとスポーティネスに溢れている。

搭載される2L直4ターボユニットは、最高出力265ps、最大トルク400Nmを発生。ブラックレザーを基調に、中央部に縞模様が施されたシートはスポーティな印象だ。ラゲッジスペースは標準状態で458L、最大で1503Lの容量を誇る。5ツインスポークの20インチ・マカンSホイールには、ピレリPゼロが組み合わされる。

だがマカンとの最大の違いは、スポーツクロノパッケージと、PASM(ポルシェアクティブサスペンションマネジメント)が備わり、車高が15mm低められている点。走りの面も強化されている。
そんなマカンTの比較対象は、BMW X4Mコンペティション。X4の最強バージョンである。
いくらポルシェのSUVとはいえ、265ps/400Nmを発揮する2L直4ターボを積むマカンTと、510ps/650Nmを絞り出す3L直6ツインターボを搭載したX4Mを比較するのは、さすがにフェアではないのでは、とも思ったが、実際に試乗してみると、ポルシェとBMWのSUV作りの違いを感じることができた。
マカンTは、結論から言えば、やはり「紛う方なきポルシェのSUV」である。車高が15mm(試乗車はアダプティブエアサスペンション装着車だったので10mm)低められ、スポーツクロノパッケージやPASMを装備しているだけに、相当にハードな乗り味を想像していたが、実際は拍子抜けするほどシャシーはしなやかで、むしろ乗り心地の良さに驚かされた。
ハンドリングも軽快そのものだ。ステアリングを切り込むと、まさに意のままにノーズが切れ込み、狙ったラインにピタッとキマる。ステアリングフィールも極めて雑味がなく、それでいて適度な手応えがあり、インフォメーションが豊富なので、非常に安心感が高い。
まるでライトウエイトスポーツカーのような走りは、4気筒エンジンによるノーズの軽さと、PASMの緻密な制御が寄与していることは間違いない。加減速時の前後のピッチングと、コーナリング時の左右のローリングがシームレスに連続し、とてもクルマの挙動が掴みやすいのである。
とはいえマカンというモデル自体に、このような走りを可能にするだけのポテンシャルがあるからこそ、実現できた走りであるとも言える。まさにスポーツカーメーカーであるポルシェのSUVであると、今回改めて納得させられた。

最高出力510ps、最大トルク650Nmを発生する3L直6ツインターボユニットが搭載されるX4M。試乗車にはグレーにオレンジのアクセントが施されたレザーシートを採用(オプション)。ラゲッジスペースは通常時525Lで、後席を畳めば1430Lまで拡大可能だ。タイヤはミシュラン・パイロットスポーツ4Sが装着。

一方X4Mは、マカンTとは対照的に、強力なエンジントルクに物を言わせて、圧倒的な加速力では知らせるモンスターマシン。もちろんボディやシャシーも、強力なパワートレインの性能を引き出すだけの性能を与えられているので、とにかく剛性感が凄まじく、スパルタンな走りが楽しめる。
だがそこには軽快感やしなやかさはほとんど感じられない。どこまでもパワフルで固く、非常にマッチョな印象に終止する。ただし有無を言わさぬ速さはピカイチだ。
好みの問題もあるので、どちらがハイパフォーマンスSUVとして正解かは言えない。アスリートに例えるなら、マカンTは俊敏なドリブルを得意とするサッカーのサイドハーフで、X4Mは強靭なフィジカルとスピードを兼ね備えた、突進力溢れるラグビーのナンバーエイトといったところだ。
ただ、日常的に付き合うなら、「走る、曲がる、止まる」が極めて高次元で調和しているマカンTをオススメしたい。とにかく運転していて気持ちが良いのだ。

【SPECIFICATION】PORSCHE MACAN T
■車両本体価格(税込)=8,540,000円

■全長×全幅×全高=4726×1927×1606mm
■ホイールベース=2807mm
■車両重量=1865kg
■エンジン種類=直4DOHC16V+ターボ■排気量=1984cc
■最高出力=265ps(195kW)/5000-6500rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1800-4500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション形式=前:5リンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:265/45R20、後:295/40R20

問い合わせ先=ポルシェジャパン TEL0120-846-911
【SPECIFICATION】BMW X4M COMPETITION
■車両本体価格(税込)=14,000,000円
■全長×全幅×全高=4760×1925×1620mm
■ホイールベース=2865mm
■車両重量=2020kg
■エンジン種類=直6DOHC24V+ツインターボ
■排気量=2992cc
■最高出力=510ps(375kW)/6250rpm
■最大トルク=650Nm(66.3kg-m)/2750-5450rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット、後:5リンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤサイズ=前:255/40R21、後:265/40R21

問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437

リポート=竹花寿実 フォト=望月浩彦 ルボラン2023年12月号より転載

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