小さめボディに強力V8搭載の暴れん坊
オールズモビルは、GMがかつて擁していたブランドのひとつである。GM内の格付けとしては、キャデラックとビュイックに次ぐ中級のブランドである一方、先進技術を売りにするという一面もあった。第二次大戦後、1948年型でキャデラックとともにいちはやく戦後型をデビューさせ、翌年にはさらに新開発のV8エンジンを搭載したのも、その表れのひとつと言えるだろう。
1948年型でのオールズモビルのラインナップには、上級の98と中級の70、そしてその下の60という3シリーズがあったが、モデルチェンジを行ったのは98のみである。98の新たなボディ”フューチュラミック・スタイル”は、フロントフェンダーを完全にボディに統合した点が新しかったが、リアフェンダーは未だ胴体から張り出した形であった。ちなみにオールズのモデル名における下一桁は気筒数を示しており、8気筒車は98、78、68。6気筒車は76、66とネーミングされていた。
翌1949年型で中級・下級モデルもフューチュラミック・スタイルへ移行し、88と76の2シリーズに整理、オールズ全体では98と併せて3本柱となる。98のボディはホイールベース125インチ、ビュイックなどと共通のプラットフォームであるのに対し、88/76はホイールベース119.5インチ、シボレーなどとの共有プラットフォームであった。この違いを反映し、ふたつのボディはサイズが異なるだけでなく、サイドパネルのボリューム感などにも差があり、イメージ的には似通っていながらも、別々のボディであることは明らかなスタイリングとなっている。
この年のニュースは前述の通り、新たな8気筒エンジンのデビューである。従来のそれが直列8気筒のSV(サイドバルブ)であったのに対し、新エンジンはV型8気筒のOHVへと一気に進化。当時としては革新的なこのエンジンを、オールズモビルはRocket(ロケット)と銘打って大々的に喧伝した。ショートストローク、高圧縮などの特徴により、303-cidの排気量から135hpを発揮。またこのエンジンはさらにボアを拡大できる余裕を持たせた設計となっており、1960年代までさらなる発展を遂げていくこととなるのである。
ロケットV8は98だけでなく、88にも搭載された。98よりも小さなボディである88は、その車体の軽量さとV8のハイパワーが相俟ってポテンシャルを最大に発揮、ストックカーレースでも活躍したのである。マッスルカーの定義――インターミディエイトにフルサイズ用の強力エンジンを載せたモデル――に従えば、この88をマッスルカーの起源であると見ることもできるようだ(インターミディエイトと言えるほど88は小さくないが)。
1950年型のオールズモビルにはさほど大きな変化はなかったが、98はホイールベースを122インチへとわずかに縮小、ボディもリデザインされ、リアフェンダーの膨らみもほとんどボディと一体化した。その下に88と76の2シリーズがあるという構成も変わりなく、こちらの外観における変化は、メッキトリムなど細部の形状変更にとどまっている。ただし、発売当初は左右分割式であったフロントウィンドウが、シーズン途中から1枚ガラスへと改められたのは特筆すべき点であった(98は最初から1枚ガラス)。
ボディ形式については88に限定して述べておくと、4ドア・セダンは1タイプのみだが、2ドア・セダンには2タイプあり、ノッチバックのセダンに対しファストバックのセダンをクラブセダンと称した。この他2ドアには、クラブクーペ(ノッチバックセダンのリアウィンドウを前進させた、グリーンハウスの小さいボディ)とホリデイクーペ(ハードトップのこと。前年98で先行導入)、そしてコンバーチブルが存在。さらにステーションワゴン(4ドア)も用意されていた。
ホワイトウォールは要塗装、エンジンの配線にも注意!
1950年型オールズモビル88は、同年のNASCARで19戦中10勝を挙げるという快挙を達成。またこの戦果はイメージアップにもつながり、この年の88は、エントリーモデルである76よりもよく売れたという。そうした人気の反映として、名曲『ロケット”88″』(ジャッキー・ブレンストン)が1951年春にリリースされるまでに至っている。この歌は、「世界初のロックンロール」と言われるほど、音楽史的に重要な曲でもあった。60年以上も経って、レベルから1/25スケールのプラモデルが発売されたのも不思議はないのである。
ここでお見せしている作品は、このレベル製プラモデルを完成させた作例だ。このキットは、ストック以外にレース仕様として組めるようになっており、デカールは1950-1951年シーズンのNASCARのものと、1950年のパンアメリカン・ロードレース(カレラ・パナメリカーン)のものの2種類がセットされていた。キットの発売は2012年のことだが、作例は自動車模型専門誌「モデルカーズ」の202号(2013年)に掲載されたものである。以下、そのときの作者・周東氏による解説をお読みいただこう。
「ボディはこの頃の車が持つ柔らかい感じの曲面がよく表現されていてとても良い。パーティングラインも少なく、紙ヤスリで整えるだけでOKだ。車の前後にある“OLDSMOBILE”のロゴは、残念ながらデカール表現となっている。特に手を入れるところはないが、パネルラインのスジボリを少し深くしてあげると良いだろう。ボンネットのチリも軽く調整するくらいで済むので、下処理は簡単に行える。ウィンドウパーツは接着しろが少ないので、取り付けには十分な注意が必要だ。
インテリアはシートの合いも良く、表現もメリハリの利いたもので好感が持てる。注意点としては、フロアパンがボディへセットしづらいので、リアホイールハウジングの部分を削って入れやすくしてあげる必要があることぐらいだろう。なお、説明書ではシャシーフレームをフロアパンに接着してからボディへセットするようになっているが、フロアパンを先にボディへセットした方がやりやすくなる。
シャシーは足周りなどはよくできている。ただし、細いパーツもいくつかあり、これらは破損しやすいので注意が必要だ。トレッド等は作例では手は加えていない。タイヤはホイール側にリブのあるもので、きわめてセットしづらい。無理に入れようとすると破損するので、注意が必要だ。これの対処法としては、ヘアドライヤーで熱を加え、柔らかくなったらセットする、という方法がある。
ホワイトウォールはデカールも用意されているが、作例ではタミヤのアクリル塗料のホワイト(X2)を半ツヤにしたものをスプレーしている。ホイールリングはゲートの処理をするとき破損しやすいので、注意が必要だ。センターに貼り付けるデカールは軟化剤を使用しないと密着しないので注意のこと。
エンジンはとても良い出来だ。モールドもメリハリも良く、仕上がりは実感のあるものとなる。組立も問題ない。作例では、追加工作としてプラグコードを付けてみたが、これが少々厄介な作業だった。コードがロッカーカバーにモールドされているプレートの下を通っているのだ。作例ではこの作業でドリルを2本折ってしまった」