シェビーⅡがベースのポニーカー
1964年に登場したフォード・マスタングが開拓した新しいジャンル、スペシャリティカー。本格的なスポーツカーではないが、その雰囲気をまとった2ドア・クーペ、しかもベースにはコンパクトサイズのファミリーカーを用いた手頃なサイズ――そうした特徴から、やがてそれらのスペシャリティカーは「ポニーカー」という言葉でくくられるようになっていった。
【画像20枚】美しくフィニッシュされた貴重なキットの作例を細部まで確認!
1967年型をもってこのポニーカー市場へと遅れて参入を果たしたのが、GMのシボレー・カマロ、そしてその兄弟車であるポンティアック・ファイアーバードであった。これにより、マスタングに若干先んじて登場していたプリマス・バラクーダと合わせ、ビッグ・スリーのポニーカーが出揃ったことになったのである。
カマロのスタイリングはマスタングよりも抑揚の強い造形となっており、スポーツカー的な雰囲気をもっと強調したものであった。とともに、当時の典型的なGMラインであり、ビュイック・リビエラなどとの共通性も感じられる。ベースとなったのはシボレーのコンパクトカーであるシェビーⅡで、ドライブトレインの多くをそこから利用し、オプション・パーツも豊富に用意されるなど、その成り立ちもマスタングによく似ていた。
ボディは2ドア・クーペとコンバーチブルの2種類。ホイールベースは108インチ(2743mm)、レイアウトはもちろんFRで、サスペンションは前ウィッシュボーン/後ろ半楕円リーフとなる。エンジンは標準で用意されるものに直6とV8の2種類があり、前者は排気量230-cid(3.8L)で最高出力140hp、後者は327-cid(5.4L)で210hp。
オプションで設定されていたのは直6 1種にV8が2種で、まず直6は250-cid(4.1L)、155hp。V8は275hp仕様の327-cidと、350-cid(5.7L、295hp)のふたつである。当初カタログに掲載されていたのはここまでだが、シーズン途中で396-cid(6.5L)が追加されており、こちらには325hpと370hpの2仕様があった。
また、同様にシーズン途中で追加されたエンジンにV8 302-cid(5L)が存在する。これは途中で加わったZ/28というパッケージ専用のもので、最高出力は290hpとされていた。このZ/28はTrans-Amレース出場を視野に入れたモデルで、302という排気量も、グループⅡプロダクションカーというカテゴリーのレギュレーション(305-cid以下)に合わせたものであった。
一方、フラグシップモデル的なモデルとしては、デビュー当初から用意されていたSSというパッケージがあった。1961年型のフルサイズ・シボレー以来使われているこの名は、「スーパー・スポーツ」の頭文字をとったもの。前述の350や396はこのSS用のユニットである。これに対し、RS(ラリースポーツ)は外観中心のオプションパッケージで、コンシールド・タイプのヘッドライトが最大の特徴であった。このRSは、SSやZ/28といったパフォーマンスパッケージと併せてのチョイスも可能となっていた。
当時モノならではのシャープなボディ、ただし細部は要調整
初代カマロは1969年型までとなるが、その最初の年式である1967年型の1/25スケール・プラモデルは、AMT製のものが2種類存在している。ひとつは実車デビュー当時にリリースされた所謂アニュアルキット、もうひとつは、1980年代に新たに金型が起こされたキットである。前者がRSパッケージをチョイスしたSS350を再現していたのに対し、後者は標準のエクステリア(露出した丸2灯ライト・グリル)を持つZ/28のモデル化であった。
ここでお見せしているのは、RS/SS350であるアニュアルキットを丁寧に仕上げた作品で、自動車模型専門誌「モデルカーズ」の158号(2009年)に掲載されたものだ。以下、作例の作者・畔蒜氏による解説をお読みいただこう。
「1967年に初登場したシボレー・カマロ。飽きの来ない適度なボリューム感が魅力的である。ライバルのマスタングが、かしこまった硬いイメージとすれば、こちらはよりカジュアルだろうか。個人的には、ヘッドランプカバーのない丸目2灯のベーシックモデルが好みだったりする。作例のキットは1967年に最初に出されたSS350ハードトップ(6627)。AMTからは同時期にSSコンバーチブルがインディ・ペースカーとして出ている(6867)。
ボディはリアエンドの一部を除いてほぼ1ピースでモールドされ、微妙なコークボトルラインをリアルに再現している。全体のプロポーションは申し分ないだろう。特に金型の継ぎ目が集中するリアガーニッシュの部分は再現が難しいらしく、満足のいくディテールのキットは少ないが、その点ではまずまずの出来である。
ただ、別パーツとなっているテールランプのハウジングが少々オーバーサイズで、それを受けるボディの開口部も大きすぎる。作例では、別パーツのテールランプハウジングはメッキをはがして、塗装前にボディと充分フィッティングを行ってから接着。メッキ部の再現は塗装後、メタルックを使用した。
例によってストック以外カスタムやドラッグ仕様にするためのオプションパーツが色々と付属する。そのためかフロントホイールの取り付けが曖昧で、肝心のストック仕様での位置決めが難しい。ここは、プラパーツのフロントシャフトの代わりに洋白棒を使用、ホイールベースを調整してからシャフトをシャシーに固定。エンジンの収まるシャフトの中央部分を取り除いた。
車高に関してはリアはキットのまま、フロントが沈むので1mmほど上げてある。なお、フロントにはこのクルマの『売り』であるディスクブレーキがちゃんと付いている。タイヤは1970年代のAMT製品にオプションとして入っていた『BLUE STREAK』を使用しているが、本来キットにセットされているのは、赤いピンストの入ったもっと細身のものだ。そちらの方がSSパッケージとしては正解だが、すこしカスタムしてみた。したがってインナーホイールは深いものに替えてある。
ボディカラーはMOUNTAIN GREEN POLY(カラーコードHH)を再現。純正のカラーチップを参考に、クレオスのC8シルバーをベースにアクセルSのグリーン、メジャムイエロー、微量のブラックで調合した。
これくらい淡いメタリックカラーを調色する場合は、(ソリッドの)ベースカラーにメタリックを加えると膨大な量になる可能性があるから、シルバーをベースに色味を加えるとよいだろう。そしてシルバーは粒子の細かいクレオスのC8(注:旧版、現在であればプリビアスシルバー)が最適だ。
淡いといっても、あくまでシャープな色調を目指しているので、ホワイトは加えないようにしている。ホワイトが混ざると濁った色調になって、いわゆるオパールカラーのような、ぼやけたメタリックになるようだ。
また以前にも触れたかもしれないが、ボディを塗る前(サーフェーサー仕上げの後)、メタリックの下地も軽くホワイトを吹くようにしている。はっきりした根拠はないが、ホワイトの塗膜があることで、しっとりと落ち着いたメタリックになるようだ。1960年代のアメリカ車のボディカラーには適していて、特に淡い色調のメタリックには効果的だと思う」
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