バンパー配置の2分割グリルがスタイリングのカギ
アオシマ製プラモデルのナイト2000から、そのベースとなった1982年型ポンティアック・ファイアーバード・トランザムを制作してみようという連載の、第2回である。
【画像35枚】これを見ればトランザム戻しはバッチリ!の工程紹介を確認
今回お伝えする作業は、トランザムとナイト2000の最大の相違点であるフロント周りの改修だ。その作業の様子と工作の詳細については、画像とそこに添えたキャプションをご参照いただくとして、ここでは実車ファイアーバードおよびトランザムについて振り返ってみることとしよう。ポンティアック・ファイアーバードの初代モデルが登場したのは1967年2月のこと。シボレー・カマロの兄弟車であったが、カマロより若干遅れてのデビューとなっている。
今はもう消滅してしまったポンティアックであるが、当時はGMの中で最もスポーティなブランドであっただけに、ファイアーバードはコルベット的なピュア・スポーツカーとして構想されたという。企画の内容は紆余曲折を経て、ファイアーバードはフォード・マスタングの対抗車種、所謂ポニーカーとして送り出されることとなった。ポニーカーとはマスタングのような成り立ちの車種――コンパクトなボディサイズ、シャシーもしばしばコンパクトカーのものを利用しつつも、スポーティなルックスを持つ2+2クーペ――を指す。
ファイアーバードはすでに触れた通りシボレー・カマロの兄弟車で、プラットフォーム、外板の一部もカマロと共有するが、ボディ前後は独自のデザインを採用。シンプルなカマロに対し、ファイアーバードはフルサイズモデル(2+2やグランプリなど)と同じモチーフ、すなわちバンパーと一体の2分割グリルやスリット状テールレンズなどを盛り込んで、ポンティアックらしさを演出していた。ボディはクーペとコンバーチブルの2種類を用意している。
エンジンは直6とV8の2種類があり、スタンダード・モデルは直6を搭載する。これはシボレーのOHVをベースにヘッド周りを変更してOHCとしたもので、経済性ではなく性能を重視した6気筒という、アメリカでは珍しい方向性のエンジンだった。トランザムという名のモデルがシリーズにハンドリング・パッケージとして加わるのは、初代最後の年式となる1969年型でのことである。
三代目へと続くスタイルを徐々に確立した二代目ファイアーバード
ファイアーバードは登場3年後の1970年2月にフルモデルチェンジを実施した。アメリカ車のニューモデルは前年9月に発表されるのが通例であるが、初代同様に半年ほどずれ込んでの発表となったのである(兄弟車カマロも同様)。このため同年型は1970 1/2と呼ばれる。ボディ形式は、初代にあったコンバーチブルは消えてクーペのみ、ノッチバックからファストバック・スタイルへと改められた。先代同様に二分割のフロントグリルと、細長いテールレンズを持つリアスタイルが、カマロとの外観上の差異である。
グレード構成はベースとなる素のファイアーバードがあり、さらにエスプリ、フォーミュラ、トランザムとラインナップされ、計4モデル。カマロには2種類のフロントマスクがあったが、ファイアーバードではそのようなことはなく、フロントマスクのデザインなどは4つのモデルで共通である。エンジンは初代同様に直6とV8が用意された。
この二代目ファイアーバードは10年以上も生産されただけに、スタイリングの変化も大きい。まず、1974年型では5マイル・バンパーを装着しノーズをスラント化。翌1975年型ではリアウィンドウが拡大され側面に回り込む形となった。1977年型ではヘッドライトが2分割グリルの中に組み込まれるとともに角型4灯化。またこのとき、6気筒エンジンがV6に変更されている。1979年型で最後のスタイル変更を行い、グリルはバンパーへ移動しヘッドライトは角型4灯がそれぞれ独立した形となった。
そしてファイアーバードは1982年型でフルモデルチェンジを行い、三代目へと移行することとなる。スタイリングは先代のそれを1980年代らしくさらに洗練させたもので、バンパーグリルなどは1979-1981年型のそれを継承していたが、最大の特徴はリトラクタブルライトを装着していたことであった。ナイト2000がベースとした(つまり、今回の作例で制作しようとしている)ファイアーバード・トランザムは、三代目の最初の年式である1982年型であるが、この三代目ファイアーバードの詳細については次回以降に触れることとしよう。
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