セドリックの歴史はタクシーの歴史
当連載では登場頻度の高いセドリック/グロリアだが、今回は430型系セドリックの営業車のカタログを御覧いただこう。セドリックとしては五代目となる430型系は、1979年6月に発売されたモデルである。
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430のボディ形式は従来の4ドア・セダンと4ドア・ハードトップをそのまま引き継いでいたが、2ドア・ハードトップは消滅した。これは、追って登場した新規車種レパードにその地位を譲ったというかたちにもなっている。これ以外にはバンも存在し、先代では消えていたワゴン仕様も復活した。ボディスタイルは、それまでの丸みの強い複雑な形から、直線基調のクリーンなものへと一気に変化。ハードトップ、セダンともに、オペラウィンドウを持つ6ライト・スタイルが採用されている。
ボディサイズは基本的に先代・330型系と同様で、ホイールベースも同一。サスペンションはリアがリーフリジッドから5リンクに変更、フロントはダブルウィッシュボーンを継承しつつテンションロッドを追加している。エンジンのラインナップは先代同様に直6 OHCのL型が基本で、3ナンバー用にはL28E(2.8L)、5ナンバー用にはL20E(2L)を主力とし、廉価モデル用にL20S(2L、シングルキャブ)も設定。このほかSD20とSD22の直4ディーゼル、そして営業車用にLPG仕様が2種類用意されていた(詳細は後述)。
430型系で特筆すべきは、国産市販車初のターボエンジン搭載車がラインナップされたことである。これはモデルチェンジから4ヶ月後の1979年10月に追加されたもので、前述のL型2Lにターボチャージャーを装着したL20ETを搭載。日産では高性能よりむしろ省エネ・高効率をアピールしていた。またこのとき同時に、L型6気筒をベースにした新開発の2.8Lディーゼルエンジン、LD28搭載車も追加された。
1981年4月にはマイナーチェンジを実施、エンジンやオートマチックトランスミッションに変更を加えるとともに、前後グリルやバンパーのデザインも一新されたが、最廉価モデルのスタンダードだけは前期のままの外観とされた。その後もグレードの追加などを行ったのち、1983年6月に新型のY30型系へとモデルチェンジされた。
細かなニーズに対応したワイドバリエーション、全7モデルの営業車シリーズ
さて、ここでご覧いただくカタログは、前期型セドリック営業車のカタログである。営業車とは、タクシーやハイヤーに使用されるモデルのことで、グレードとしてはセダンのスタンダード、デラックス、カスタムデラックスが該当する。サイズは300×252mm(縦×横)、ページは表紙を含めて全12ページ。発行年月については、「このカタログの内容は昭和54年11月現在のものです。」とあることから、1979年11月と考えてよいだろう。
掲載されているのは前述の3グレードであるが、搭載エンジン別に見ると5種類あり、「営業車」とひと口で言ってもなかなかのワイドバリエーションである。まず、ガソリンの直6 OHC 2LであるL20(最高出力115ps)があり、これはカスタムデラックス(ハイヤー仕様)のみの設定。そのLPG仕様であるL20P(95ps)搭載車はカスタムデラックスとデラックスがそれぞれタクシー/ハイヤー仕様の2種類で、合計4種類となる。
直4 OHC 2LのLPG仕様であるZ20P(90ps)搭載車は、カスタムデラックス(タクシー/ハイヤー仕様)とスタンダード(タクシー仕様)の3種類。さらにディーゼル車が2種類、どちらも直4 OHVだが2LのSD20(60ps)と2.2LのSD22(65ps)があって、いずれもタクシー仕様スタンダードのみの設定。以上、7つのモデルがこのカタログで紹介されている。なお、トランスミッションはコラム4速を基本に、3速オートマチックのニッサンマチック(コラム)が、6気筒車にのみ設定されていた。
以前に330型系セドリック営業車のカタログをご紹介した際にも述べたが、この頃のセドリック(およびグロリア)と言えば懐かしく思い出されるのは、テレビの刑事ドラマでの活躍である。くどくなるのでそれについてまた述べるのは避けるが、そうした観点からも、この営業車カタログに興味を惹かれる方は少なくないだろう。細部までじっくりとお楽しみいただければ幸いだ。
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